ここ2、3年でタレントマネジメントシステムに注目が集まるようになってきた。外資系ITベンダーは買収を繰り返しながら勢力を拡大し、日本市場に進出。一方で、日本国内のITベンダーもタレントマネジメントシステムの開発強化に乗り出しており、競争が激化しそうな気配だ。今後の方向性を占ううえで、無視できないのが米国の最新動向である。
雇用形態の多様化やグローバル化の進展などに伴い、タレントマネジメントに注目が集まるようになった。多くの先進的な日本企業が、国内外のITベンダーが開発・販売するタレントマネジメントシステムを導入している。
需要の拡大を受けてとくに伸び盛りなのが、米国に本社を置くサクセスファクターズジャパンだ。2009年に日本市場に参入し、ユーザー企業は外資系企業140社、日本企業は60社に達する。実績では劣るものの、国内勢も販売が好調だ。サイエンティアは80社以上の納入実績をもつ。専業以外では、ワークスアプリケーションズやスーパーストリーム、富士通マーケティングといった有力ERP(統合基幹業務システム)ベンダーも、人事管理システムにタレントマネジメント機能を付加して販売に乗り出している。
調査会社のガートナー ジャパンが毎年発表しているテクノロジのハイプ・サイクル(新技術の社会への適用度)によれば、今年、タレントマネジメントはモバイル・コンピューティングと並んで「過度な期待」のピーク時に位置する。製品コンセプトの異なる国内外のタレントマネジメントシステムが入り乱れ、やや混沌とした状況だ。そこで、今後の日本市場の方向性を考えるうえで、先進市場の米国に注目したい。タレントマネジメントという概念が欧米から入ってきて、市場を席巻しているからである。
米国に本社を置く外資勢には、企業買収を通じたタレントマネジメントシステムのスイート化を目指す傾向が顕著にみられる。サクセスファクターズは、企業パフォーマンス管理にはじまって、学習管理やキャリア開発などに手を伸ばしてきた。最近では、給与管理機能の実装を発表した。これまで、タレントマネジメント専業ベンダーの場合、人事・給与システムとの連携を模索する方針がみられただけに、珍しい動きだ。独SAPの傘下に入ったサクセスファクターズは、共同提案も進行中という。
こうしたなかで、現在、米国市場で議題に上るのは、統合スイート(単一製品)かベスト・オブ・ブリード(複数製品の最適な組み合わせ)かというテーマだ。統合スイートで15のデータベースを統合してしまう事例があれば、自社開発に加えて、オラクル、サクセスファクターズ、シルクロードテクノロジーなどのシステムを組み合わせて導入する事例もある。
今年10月、米国シカゴで開催された人事関連の大規模カンファレンス「HR Technology」に参加したインフォテクノスコンサルティングの大島由起子セールス・マーケティング事業部長は、「米国では、5年前にすでにタレントマネジメントに関する議論が企業内でなされており、新しいものではない。米国では振り返りの時期にさしかかっている」と話す。
タレントマネジメントをどのように位置づけてシステムを導入し、運用するのか──。日本では、超大手のグローバル企業でも試行錯誤している状況だ。統合スイートの導入が始まったのは最近のこと。事例の蓄積が進み、米国のようなテーマにぶつかる可能性は十分にある。ITベンダーにとって、特定のITベンダーの製品を売り込むという段階を経て、ニーズや状況に応じて海外産や国産の製品を組み合わせて提供する機会が増えるかもしれない。(信澤健太)