NECキャピタルソリューション(NECAP、安中正弘社長)は、企業で使うあらゆるデバイスをクラウドコンピューティングで集中管理することができる「サービスデスク」のアウトソーシング事業を拡大する。vProテクノロジーを使った既存のパソコン遠隔監視サービスなどに加え、サービスデスクをクラウド化して管理コストを抑えたリモート環境を拡充する。企業内では、スマートデバイスの利用が急速に広がり、クライアント運用・管理の煩雑さが増したうえに、さらなるコスト増大も予想される。NECAPは、こうした利用環境の変化に対応した独自のBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)型クラウドサービス市場の確立を目指す。(取材・文/谷畑良胤)
クラウド型のMDMを開始

ICTアセット事業部
荒谷茂伸
シニアディレクター NECAPは現在、主力のリース事業に加えて、「いつでも、どこでも、どのデバイスでも」をコンセプトに、最先端の技術を利用したデバイスの運用業務のBPO、管理業務プロセスのアウトソーシング、サービスデスクによる人的サポートなどを視野に入れたトータル・サービスの構築を急いでいる。
今年10月には、スマートデバイス向けのBPO型クラウドサービスの第一弾として「PIT-MDM マネージドサービス」の提供を開始した。サービスデスクについてはNECAPの子会社であるキャピテックのもので、スマートデバイスのセキュリティポリシー設定や盗難・紛失にあった際の遠隔制御などを行うサービスだ。これを使えば、顧客側が専任管理者や運用インフラが不要になる。さらに11月には、顧客のパソコン運用管理をNECAPのサービスデスクが遠隔から実施する「Remote Service Desk」を開始した。パソコン電源が切れている状態でもリモートで診断・復旧を実現できるサービスとして注目されている。
このほかにも、ウィンマジックのHDD暗号化ソフト「SecureDoc」を活用したモバイルパソコンのセキュリティBPOサービス「SecureDocマネージドサービス」や、ワンビの遠隔データ消去ツール「トラストデリート」を生かした情報漏えい対策BPOサービス「トラストデリートマネージドサービス」と一緒に利用することで、モバイルパソコンとスマートデバイスを一元的に管理できるサービスなどを拡充しようとしている。
500人規模企業の6割から受注狙う
荒谷茂伸・ICTアセット事業部シニアディレクターは、「クラウド化やスマートデバイスの利用が進み、厳格なクライアント管理業務の必要性が高まっている。端末は、社外利用だけでなく海外での活用も含めて、煩雑で高度な運用管理が求められる。ただ、これにクラウド環境や仮想化環境で使う端末が増え、これをすべて企業側がオンサイトで監視・運用・管理を実現することは難しくなる」と話す。だからこそ、デバイス向けBPO市場が拡大すると分析しているのだ。
そこでNECAPは、同社や子会社のキャピテックがもつBPO提供用のインフラを大幅に拡充するほか、リモート監視などに必要な人員を増強する。例えば、マルチテナント方式でクライアント端末を管理できる仕組みや、リモートで端末をモニタリングできるクラウド型の海外製品を導入したり、最先端のクラウド技術などを使ってサービスデスクをクラウドで共通化する。サービスデスク環境のクラウド化で同社側の管理コストを削減し、より安価な従量課金制の料金体系でサービスを提供することを目指す。
荒谷シニアディレクターは、「企業内の情報システム担当者は、高齢化が進む一方、新しい技術への対応も迫られている。こうした部分を当社がすべてアウトソーシングで対応できるようにする」と、意欲をみせる。同社は「情報システムのシェアドサービス」という位置づけで、今回のクラウド型BPOを拡充し、当面の目標として、従業員500人以上の国内企業のうち、3年以内に約6割にあたる企業から受注を獲得することを狙う。
各種調査会社のデータを総合して分析すると、企業内で使われる端末数は、2015年頃までにスマートデバイスがパソコンに取って代わるとみられる。
一方、端末を販売するITベンダーにとっては、3万円程度で買えるスマートデバイスが主流になることで、端末一台あたりの売上高が減るほか、キッティングのようなサービスを拡大するにも設備投資が重荷になってくる。NECAPは、自社のサービスと販売会社のビジネスモデルを組み合わせることで、新たな収益構造ができると判断して連携を深めている。
クライアント端末環境が複雑・煩雑になることは目にみえて明らかだ。従来は、このほとんどを企業内のオンサイトで面倒をみていたが、この部分をすべてサービス利用で賄うことができる時代がやってきそうだ。