「Windows XP」は2代前のクライアントOSであるにもかかわらず、多くの企業が使用している。そのOSのサポートが、いよいよ2014年4月8日に完全終了する。この措置によってセキュリティ更新プログラムが提供されなくなるので、「XP」ユーザー企業はOSの刷新を余儀なくされるとみられる。この乗り換え需要に期待を寄せるIT企業は多い。しかし、「XP」ユーザーのなかには、まだOSの刷新に意欲的でない企業もある。すべての「XP」ユーザーにOSを乗り換えてもらうためには、サポート終了に伴うリスクに見舞われる恐れがあることを啓発するとともに、OS移行のメリットをいかに伝えていくかが決め手となる。
2001年発売の「Windows XP」は、いまだに国内の企業に広く使われている。大塚商会の大塚裕司社長は、「当社で抱える法人ユーザーの約半数が、いまだにXPを使っている」と実態を語る。
「XP」のサポートが終了すると、セキュリティ更新プログラムが提供されなくなる。そのまま使い続ければ、新型ウイルスなどの脅威に対応できなくなって、ぜい弱性を抱えることになるので、サポート終了までにOSを刷新することは、ユーザーにとって必須だ。
乗り換えによって今後普及するOSについて、日本事務器の田中啓一社長は、「とくに『Windows 7』が拡大するだろう。『XP』からの移行で問題となるのは、アプリケーションの互換性だ。『7』なら、『XP』で使用してきたアプリをスムーズに移行できる」と指摘する。「Windows 8」は、発売からあまり時間がたっておらず、対応していないアプリが多い。また、「『8』の場合、パソコンOSの乗り換えではなく、プラスαの用途としてタブレットで導入する企業が多くなりそうだ」(大手メーカー幹部)との見方もあり、OSの移行は「7」が中心になるとみてよさそうだ。
また、OSの刷新に際して、シンクライアント環境を構築するという選択肢もある。調査会社のIDC Japanによると、「XP」からの乗り換えなどが影響して、2012年は20.6%だった法人向けクライアント端末での仮想化導入率が、16年には46.6%まで拡大する見込みという。「XP」のサポート終了は、サーバー市場も潤しそうだ。
しかし、乗り換え需要への期待が高まっていても、すべての「XP」ユーザーがOSの刷新に意欲的というわけではない。調査会社のノークリサーチの調べでは、「XP」を利用する年商500億円未満の中堅・中小企業(SMB)で、年商規模が小さい層ほど「パソコンのハードウェアまたはOSを刷新する予定がない」という結果が出た。このうち、年商5億円未満の62.3%が「予定はまったくない」としており、ノークリサーチはサポートが終了することを「XP」ユーザーに啓発する必要があると指摘している。すでに、シネックスインフォテックでは、「サポート終了を広く告知するために、全国の販売店に向けて啓発活動を展開している」(坂元祥浩執行役員)という。また、リコージャパンの窪田大介専務執行役員は、啓発の一環として、「OS刷新にあてられる担当者が足りなくなることを訴求していきたい」という。限られた人員では、サポート終了間際に大規模な刷新をしようとしても、リソースが足りないのでスムーズに移行できない。このことを顧客に訴求して、早い段階での刷新に誘導しようとしている。
「XP」ユーザーのなかには、セキュリティリスクを認識していても、コストなどを懸念して、刷新に消極的な企業がいるようだ。大塚商会の大塚社長が「『XP』のパソコンは150W程度の電力消費だったが、最新のモデルでは25W程度に抑えられる。この点を訴求していけば、ユーザーがコストを削減できると理解して、需要が伸びてくる」というように、こうしたユーザーに対しては、具体的な刷新のメリットを明示することが必要だ。
サポート完全終了まで、残り約1年2か月。乗り換え需要の掘り起こしには、まだ工夫の余地がありそうだ。(真鍋武)