滝村享嗣さんは、ホスティングやハウジングなどのデータセンター(DC)サービスを提供するリンクで、大型案件を担当するトップ営業パーソンだ。持ち前の明るさを生かし、サービス商材というよりも、自分自身を“差異化ポイント”として、提案活動に注力している。今は部長に昇格した滝村さんだが、新人時代の失敗エピソードも語ってくれた。(構成/ゼンフ ミシャ 写真/大星直輝)
[語る人]
●profile..........滝村 享嗣(たきむら みちつぐ)
1999年、IT関連の上場企業に入社。その後、ネットエンズ(現エヌシーアイ)やコネクトワンで、ソリューション営業を担当。そのほか、経営や財務、マーケティングなど幅広い業務に携わる。2011年にリンクに入社し、営業部長として大型の案件を扱う。チームマネジメントにも尽力している。
●会社概要.......... 「at+link」ブランドでホスティングサービスやハウジングサービスを展開する。1987年設立。従業員数は69人。東京・赤坂に本社を構える。
●役職..........at+link事業部
営業部
部長
●営業実績.......... 2012年7月、月々のサービス収入が1000万円を超える大口案件を受注。営業現場でも社内でも大活躍だ。
●仕事.......... 2012年6月から、DCサービスを提供するat+link事業部の営業部を率いる。部下の営業訪問に同行したり、スキルアップを目指す社内勉強会を開いたりするほか、自らも営業現場に出て、新規顧客の開拓に取り組んでいる。毎週水曜日の朝は講師を務め、客先のニーズをより細かく把握するために、部員に自分の営業ノウハウをレクチャーする。
豆知識で会話を弾ませる
私はお客様や社内のメンバーに、常に明るい気持ちで接することを心がけている。自分がつらくても、周りに沈んだ気持ちが移らないよう、笑顔でいるように努めている。先日、よく一緒に飲みにいっていた親しい親戚の人が亡くなった。とても悲しかったけれども、会社や客先では、いつもの笑顔を見せた。私は持ち前の明るさを大切にしている。DCサービス事業者は各社の製品が似通っているので、商材だけでは差異化が図りにくい。だから、私はモノではなく、ヒトを前面に押し出している。「滝村とつき合って楽しい」といわれる存在であることを意識しながらお客様を訪問する。
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小学生の頃から、本や雑誌を読むのが大好きだ。パソコンやクルマ、科学など、新しい知識を吸収するのに貪欲で、読書が楽しくてならない。ビジネスでは競合になるのであまり大きな声ではいえないが、書店に行かなくても本や雑誌が手に入るので、私は頻繁にアマゾンで買い物をしている。読書は趣味であると同時に、営業現場でも生かす。最近、「女子大生ナナミ」というキャラクターが説く『宅建受験小説』を思いつきで選んで読んだ。そして、その本で覚えた宅建関連の豆知識をお客様に話したら、会話が盛り上がって、「おもしろいことを知っているね」と喜んでいただいた。
私は半年ほど前に部長に昇格し、その1か月後に、月々1000万円以上のサービス料金をいただく大口案件を獲ってきた。「明るさ」と「おもしろい情報の提供」に加え、徹底的に準備をしてお客様のビジネスを深く知ることを営業の秘訣と捉えている。「営業は準備が8割」とよくいわれるが、まさしくその通りだと思う。今は営業のベテランで準備の重要さを肝に銘じているが、新人のときは準備不足で先輩に叱られることが何回もあった。名刺を切らしたり、説明資料を持っていくのを忘れたり。自分がそういう新人だったからこそ、部長になった現在は、部下には心の底から「準備の大切さ」を教えている。
IT業界に入って営業畑を歩んできたのは、「どうしても就職してほしい」と、母親が半泣きで説得したことがきっかけとなった。私はもともと、ウェブ制作のフリーランスとしてお金を稼ごうと思っていたが、学校の教師を務めている母は、公務員らしく、サラリーマンになることを勧めた。これまでのキャリアを通じて、営業職が肌に合っていると感じてきたので、母に説得してもらったことに感謝している。