ホスティングサービスを提供するリンクでは、社員の30%が喫煙者だそうだ。同社はホームページでタバコを吸う社員の比率を公開している。at+link事業部で営業部長を務める滝村享嗣さんもスモーカーだ。社内や客先の喫煙ブースでタバコを吸いながら気軽に会話する「タバコミュニケーション」で客先の情報を吸収し、ソリューション型の提案に生かしている。(構成/ゼンフ ミシャ 写真/大星直輝)
ソリューション提案を心がける
私はタバコが大好きだ。お客様の喫煙ブースに入って一服すると、そこにいる方々とすぐに親しくなることができる。喫煙者同士の何気ない会話を通じて親近感が生まれ、お客様の業務内容や課題についてのいろいろな情報が耳に入ってくる。さらに、提案の相手となるIT担当だけではなく、その企業のあらゆる部署のメンバーと知り合うことができる。お客様の全体像をつかみ、次の提案につなげるチャンスがつかめるわけだ。からだによくないというのは気になるけれども、営業ツールとしてとても有効なので、私はタバコをやめるつもりはない。
営業現場での活動と社内のマネジメントの仕事を両立させるのはなかなか大変だ。タバコは、たまったストレスを解消するにも効果があると思っている。
厳しい仕事をこなすうえで自分を生かすことに役立っているのは、大学卒業後に初めて入社した就職先でのハードワークの経験だと考えている。その企業は、IT機器のレンタルサービスなどを提供するコテコテの販売会社で、社員は体育会系の人が多くて、朝早くから深夜まで働くのがあたりまえのような社風だった。負けず嫌いの私は「頑張ってやってみせる」と必死になって、ほとんど休むことなく懸命に働いた。2回ほど過労で倒れたこともあったが、タフになったことは間違いない。これは実に貴重な経験だと思う。
負けず嫌いと言ったが、私は目的を決めると達成するまではあきらめない粘り強いタイプだと自負している。
子どもの頃、父親がパソコンを与えてくれた。しかし「壊してもいいけど、勉強に使いなさい」との条件つきだった。だから、いくらねだっても、ゲームソフトは買ってもらえなかった。「こうなったら自分でゲームをつくるしかない」と考えて、プログラミングの雑誌を手に入れた。子どもでもこなすことができるプログラムを使い、イカやタコを倒していくという簡単なゲームを作成した。親には内緒で、勉強用のパソコンで自作ゲームを楽しんだのだ。
前号でも語ったように、ホスティングサービスは各社の製品が似通っていることもあって、サービスそのものを提案するだけでは相手の心に響かない。自分でゲームをつくったエピソードのように、私は現在の営業活動に関しても、あの手この手でいろいろと工夫しながらソリューション型の提案を心がけている。部下に対しても、そのことの重要性を教え込んでいる。
私は部長として「ほめて育てる」という方針で臨んでいる。定期的に部下と面談を行い、一人ひとりの動き方と事業部の方針をマッチさせることに力を入れている。部長であっても、自らが最前線の現場で活動しているからこそ、部下の力を見極め、能力を引き出すことができると信じている。
●日常使う営業ツール.......... 滝村さんが営業ツールとして活用するのは、さまざまなジャンルの本だ。客先の関連業界についての知識を身につけ、商談のときに会話を弾ませる材料として使っている。お客様に「ユニークな情報をもっている営業マン」と評価されており、読書で得た知識が成果を発揮しているそうだ。
●上司からのひと言.......... 「持ち前の明るさと前向きさによって、周囲にいい影響を与えることができる貴重な存在だ。その人間味のあるキャラクターと豊富な人脈を駆使したソリューション型の営業スタイルは、多くの若手社員のお手本となっている。マネジメント面では、個人主義ではなく、チームプレーを重視しており、部下からの信頼も厚い。彼を上司にもった若手社員からは、きっとすばらしい次世代のリーダーが生まれてくるだろう」(at+link事業部の内木場健太郎事業部長)