東洋ビジネスエンジニアリング(B-EN-G、石田壽典社長)は、日本国内でトップシェアを誇る生産管理システム「MCFrame(エムシーフレーム)」と海外拠点向けERP(統合基幹業務システム)パッケージ「A.S.I.A.(エイジア)」を、ここ数年で中国やASEAN地域を中心に世界22か国・地域の600社以上に納入した。そこで、最近同社が強化しているタイの拠点を訪れて、同社の販売パートナーやユーザー企業を取材した。東南アジアに先行して進出し、成功を収めつつある同社の動きを教材として、連載で海外展開のスキルを浮き彫りにしていく。(取材・文/谷畑良胤)
タイ・中国の海外拠点での導入が増加
日本の製造業が、中国やASEANを中心に海外に生産拠点を設けるケースが増えている。中国やタイ、インドネシアのほか、今後はカンボジアやベトナムなど、ASEAN諸国へ生産工場を置く企業は確実に増える。こうした生産拠点の分散化を受け、B-EN-Gも海外販売体制の構築に向けて、現地の販売パートナーやユーザー会開催などの顧客向け支援プログラムを整備している。羽田雅一取締役プロダクト事業本部長に、来年度(2014年3月期)の海外展開について聞くと──。
B-EN-Gが海外で主に展開する製品は、生産管理・販売管理・原価管理システムを構築する「MCFrame」と、多言語・多通貨・多基準に対応し、各国の制度への親和性が高い海外拠点向けのコンパクトなグローバルERP「A.S.I.A.」の2製品だ。両製品のユーザーのほとんどが日系の製造業だという。とくに東南アジアでの業態としては、自動車部品、電子・電気部品が最も多く、製造装置・産業機械、食品、化学・薬品などがそれに続く。
今年度は、「チャイナ+1」として、リスクヘッジを検討する企業が増えた。羽田取締役は、「タイやインドネシアなどへ生産拠点を分散する傾向が強まった。昨年は、米国拠点での導入案件も多かった」と、導入企業の半数が海外拠点になっていると説明する。「リーマン・ショックを経て、急速に海外生産拠点が増えている」と指摘した。
海外拠点とパートナーでユーザー支援
海外拠点での導入が増えるのと軌を一にして、B-EN-Gも海外の現地法人を設立している。現在、製品導入が急速に増えている中国・上海とタイ・バンコク、シンガポールに現地法人を構えている。現地販売は85%が間接販売なので、現地をよく知る日系販売パートナーとの代理店契約を増やしている。例えば、現在、両製品の導入で最も勢いのあるタイでは、マテリアル・オートメーション・タイランド(MAT)や「A.S.I.A. GP」の販売でインテック システムズ バンコクなどが精力的に活動している。またインドネシアでは、ピーティ・インドヌサ・コンピュータ・システム(ICS)、米国でもITベンダーのキャルソフト(CalSoft)が日系製造業の生産管理などで実績を上げている。B-EN-Gは、ビジネスパートナーに「MCFrame」のソースコードを開示し、追加カスタマイズのニーズにすばやく応える体制を整えている。
最近、タイではユーザー会を開催し、最新技術情報や専任のシステム担当者が少ないなかでの効率的なシステム運用方法や今後の課題について意見交換が行われた。日本のユーザー会はシステムに関する話題に限らず、広く企業間の情報交換の場にもなっている。今後はタイでも継続的に、日本人とタイ人向けにそれぞれのセッションを設け、多面的なコミュニケーションの場としてのユーザー会を開催していく予定だ。
最近ではクラウドコンピューティングで利用できる環境へのニーズが高まり、「A.S.I.A.」は、昨年12月からIIJグローバルソリューションズと連携し、高品質クラウドサービス「IIJ GIO」基盤上での提供を開始している。羽田取締役は「今後は、工程管理における不良品の迅速な排除などの機能のために、工程管理などの部分でスマートデバイスとクラウドを連携させたソリューションの展開も検討中だ」と、ユーザー企業の利用に応じて提供環境を充実させる方針を語る。

タイの工業団地の一つ「ナワナコン」は、洪水の復旧が進んで活気を取り戻しつつある(2012年5月撮影)