パリミキなどのメガネ小売り専門店を中心に、「メガネのスペシャリスト」として事業を展開している三城グループ。店舗数は国内900超で、全国をカバーしている巨大チェーンだ。各店舗では、接客ツールとしてiPadを導入しており、基本的には来店客に自由に使ってもらっているが、四国では試行的にデジタルカタログやサイネージアプリの運用も開始している。こうした業務向けのアプリは、ジェナの法人向けスマートデバイスアプリ開発プラットフォーム「seap」を活用して内製し、価格変動などの情報をスピーディに反映させている。
ユーザー企業:三城ホールディングス
メガネ専門店を展開する三城グループの持ち株会社。国内の事業会社は、メガネ小売り事業を手がける三城、金鳳堂、メガネフレーム製造のクリエイトスリーなど4社。
サービス提供会社:ジェナ
サービス名:スマートデバイスアプリ開発プラットフォーム「seap」

「seap」で作成した三城グループのアプリ【課題】アプリ開発のスピードが現場に追いつかない
三城グループの小売店舗は、メガネという商品を扱う特性上、顧客の滞在時間が長く、この「待ち時間」をどう快適に過ごしてもらうかが、接客における課題だった。そこで、2010年3月、多根弘師社長の鶴の一声でiPadを全店舗に導入した。
三城ホールディングスの河村和典・Digital Device Solutions チーフエバンジェリストは、「日常業務におけるデータ入力デバイス、接客の支援ツール、そしてお客様に使ってもらうエンタテイメントツールにもしたいという発想だった。ただし、最終的に全店舗、全従業員に配布して自由に使ってもらうという方針だったが、具体的な使い方を規定しないままに導入が決まったので、最初は失敗もあった」と振り返る。
この動きに面食らったのが、情報システム部門だ。当時はMDMソリューションがほとんどなく、とにかく各端末のセキュリティを厳しく設定することに力を注いだ。例えば、パスワードを5回間違えると初期化されるように設定し、最初の2か月で約200台が初期化される状況になってしまったという。
また、インハウスアプリを内製してインストールしていたが、とくにデジタルカタログやサイネージ系のアプリは、業務の現場のスピードに初期開発やデータ更新のスピードがついていけないという課題が深刻化していた。同一の商品でも店舗ごとに価格が違ったり、頻繁に価格改定が行われるからだ。
結果として、各店舗の従業員はiPadに触らなくなってしまい、最初の構想は頓挫しかけた。

ジェナの手塚康夫社長(左)と三城ホールディングスの河村和典・Digital Device Solutions チーフエバンジェリスト【決断と成果】テンプレートに素材を載せるだけでアプリが完成
iPadの活用促進を担当し、危機感を覚えていた河村氏は経営幹部にかけ合って組織横断の特命チームを結成した。そして、iPadに自由に触り、その魅力を発信する「社内エバンジェリスト」を募り、彼らとともに、まずはiPadを使ってみる雰囲気を醸成していった。その結果、ボトムアップでiPadの活用提案をする気運が盛り上がり、情報システム部門も、当初想定していたようなセキュリティ上の問題が起こらないことを確認すると、自由な活用を肯定するようになった。
一方で、アプリ開発のスピードに関する課題は残されていたが、そんななかで河村氏が注目したのが、2012年10月にサービスインしたジェナのスマートデバイスアプリ開発プラットフォーム「seap」だった。あらかじめアプリのテンプレートが用意されており、短期間でアプリを作成し、データもリアルタイムで更新できる。河村氏は「テンプレートを選択すれば、あとは画像やテキストなどの素材を用意するだけでアプリをつくることができる」と評価。即座に導入を決めた。
三城グループは、現在店舗用1000台、個人向け1000台とiPadの導入台数が多いが、「seap」の利用料金はユーザー数無制限で月額固定(ストレージ容量2GBまでは10万円)なので、「コスト面でも非常に魅力的」(河村氏)だという。
ジェナの手塚康夫社長は、三城グループについて、「seapユーザーのなかでも非常に先進的。現場のニーズを踏まえて、ユーザードリブンでiPad活用を促進する体制を構築されている」と評価する。
現在、「seap」で作成したアプリは四国限定で運用しているが、従業員・来店客からの反応は良好。従来のカタログアプリより見やすいとの声も上がっている。(本多和幸)
3つのpoint
テンプレートで短期間にアプリを作成
リアルタイムにデータを更新
ユーザー数無制限の月額固定料金