2013年、スマートフォンやタブレット端末などスマートデバイスの法人需要が高まるという見方が有力だ。すでにスマートデバイスを業務で有効活用している企業も現れている。ITベンダー各社は、どのような導入提案で案件を獲得することができるだろうか。今回の特集では、スマートデバイスの価値を高める製品・サービスを紹介するとともに、その製品・サービスを組み合わせることでユーザー企業に与えるメリットを探っていく。(取材・文/佐相彰彦)
【市場動向】
市場は確実に拡大する
ニーズへの対応がカギ
スマートデバイスが、個人と法人の両方の市場で拡大するのは間違いない。調査会社によれば、スマートデバイスのなかで、とくにタブレット端末の法人需要が急速に伸びる可能性があるという。さまざまな業種で導入が進みそうだ。とはいえ、何もしないで拡大することはない。ベンダーは、オフィスや店舗などユーザー企業に提案する際に、導入目的を明確に把握することがビジネス拡大につながる。ニーズへの対応がカギを握るということだ。
●2018年に1500万台の市場規模に
ノートPC兼用端末も期待 調査会社のシード・プランニングは、国内タブレット端末販売台数を発表した。2012年の販売台数として、タブレット端末が520万台、指タッチ式で操作できてキーボードも搭載したハイブリッド端末が50万台、合わせて570万台に達すると見込んでいる。11年が300万台程度だったのに比べると、2倍弱の市場規模に拡大したことになる。
アップルが10年にタブレット端末として他社に先駆けてiPadを国内市場に投入し、当初は個人を中心に利用が活発化した。その後、アップル以外のメーカーもタブレット端末に本腰を入れ始め、徐々にビジネス用途でも使われるようになった。シード・プランニングによれば、ユーザー企業は飲食・流通、教育、公共・文化、医療・医薬、金融・保険、ホテル・商業施設、住宅・不動産など、多岐に渡っているという。
シード・プランニングは、18年までの販売台数を予測している。それによれば、18年はタブレット端末が1200万台、ハイブリッド端末が300万台、合わせて1500万台まで拡大することが見込まれるという。12年と比較すると、3倍以上の規模拡大ということになり、ビジネスチャンスがさらに拡大するというわけだ。
なお、世界市場でも伸びることが予想されており、12年がタブレット端末で1億1000万台、ハイブリッド端末で500万台、合わせて1億1500万台の見込み、18年がタブレット端末で3億8000万台、ハイブリッド端末で9000万台、合わせて4億7000万台と予測。12年と比較して4倍以上の規模に拡大するとの予測があることからも、ベンダーにとっては海外を視野に入れてタブレット端末をベースとしたビジネスを手がけることもポイントになるといえそうだ。
●端末を生かした導入目的へ
販促やデータ閲覧にニーズ スマートデバイスの導入目的は、業界によってさまざまだが、利用ケースとして一般的に考えられているのが「グループウェアや社内SNS、社内ポータルなどを使った社内情報の収集・共有」と「メールの閲覧」だ。調査会社の矢野経済研究所が法人を対象にスマートフォンとタブレット端末の導入目的についてアンケートをとったところ、「メールを除いた社内情報の閲覧」がスマートフォンで全体の69.3%、タブレット端末で59.0%だった。「メールの閲覧」は、スマートフォンで78.5%、タブレット端末で58.1%に達している。これまでノートパソコンを使って閲覧していたものを、スマートデバイスで代用しているケースが多いようだ。ノートパソコンは、安定した姿勢でなければ使えないのに対して、スマートフォンやタブレット端末は歩きながらでも使うことができる。自分宛に届いたメールを含めて、情報の収集を移動中に行えば効率化につながり、ノートパソコンと比べてスマートデバイスのほうが使いやすいということになる。
また、とくにタブレット端末の導入目的として高い比率を示したのは、「販売カタログや販促用デモなど販売活動」(49.4%)、「WordやExcelなどのオフィス文書閲覧」(45.6%)。端末自体を販促用として使うのはタブレット端末ならではの用途といえそうだ。
このように、ユーザー企業のスマートデバイスに対する導入意識は高まっており、ニーズに応じた提案を強化することがベンダーにとって案件を獲得することにつながる。次項では、スマートデバイス以外のハードと組み合わせて提案しているケースや、スマートデバイスの管理から活用へと領域を広げた提案、販促物や社内情報の収集としてデジタルサイネージと組みわせた提案などを紹介する。
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