前回のこのコラムで指摘したように、スマートデバイス、とくにタブレット端末はまだ使い方が確立されているとはいえない。にもかかわらず、いきなり営業力強化を標榜して導入したり、生産性向上を掲げて導入を決めたりする企業があることにはいささか驚く。というのも、目指すべき業務像や達成したい目的、そして整備しなければならない他の事項があまり社内で議論されないままの導入が目立つからだ。
われわれのコンサルティング活動のなかでは、よく四つの導入ステップに基づく導入の必要性を説いている。ステップ1:情報共有モデル、ステップ2:負荷軽減モデル、ステップ3:ナレッジ管理モデル、ステップ4:営業力・生産性強化モデル──の四つだ。
ステップ1では、そもそも透明度が高い状態で情報が共有されていなければ、何にどれだけリソースが使われているのかがわからないので、スケジュール管理やグループウェア、単純なファイルストレージといったスマートデバイスにあらかじめ組み込まれているアプリケーションを活用する方法が中心となる。
ステップ2では、何か新しいことをしようとしても現状で手一杯の状態では、何も加えられない事態となることが多い。よって、ワークフローやチェックリストによるレポーティングなどの簡単な外部アプリケーションを活用して、これらの業務負荷を低減するための仕組みをつくることが必須となる。
ステップ3では、過去事例の共有の仕組みや教育コンテンツを閲覧するeラーニングの提供によって組織力を引き上げ、チームとしてコラボレーションするための環境を提供することが必要となる。よって、スマートデバイスでも検索・閲覧可能なデータベースの整備や教育用コンテンツの整理、コラボレーションワークスペースの導入など、自社である程度整備したうえで、アプリケーションをつくり込む必要が生じ始める。
ステップ4では、さらにリアルタイムに顧客接点で営業力や生産性を高めるために、商品やサービスの説明プレゼンや、社内の在庫引き当て、社内専門家からのリアルタイム回答、料金シミュレーション機能の導入による、その場での高度でわかりやすい説明を実現することとなる。このためには基幹システムとの連携や社内他部門と密に連携した業務モデルを構築することと一緒に取り組まなければならない。
かけ声や勢いだけで導入を決めるのではなく、現実を見据えた導入をぜひ検討してほしいものだ。