コンピュータソフトウェア協会(CSAJ、和田成史会長:オービックビジネスコンサルタント社長)のパッケージソフトウェア品質認証制度委員会(藤井洋一委員長:日本ナレッジ社長)は、パッケージソフトウェア品質認証制度(PSQ認証制度)の運用を開始した。パッケージソフトの品質を認証制度として見える化することで、ユーザーのソフト品質に対する理解を促す。同時に、海外での国産ソフトウェアの競争力の強化を狙っている。
「PSQ認証制度」は、ソフトウェアの品質に関する国際規格「JIS X25051:2011(ISO/IEC25051:2006)」をもとに制度化し、第三者の視点をもとに公正性を確保する情報処理推進機構(IPA)の「ソフトウェア品質説明のための制度ガイドライン」に準拠している。
これまで、ソフトウェアの品質を証明するためには、ユーザー企業が求める要件に従ってソフトを検証しなければならなかったが、「PSQ認証制度」では、「食品業界の“トクホ(特定保健用食品)マーク”のような許可マークを付与することで、ユーザーにわかりやすく説明できる」(藤井委員長)という。
認証制度は、公正性を確保するために、認証機関であるCSAJのほか、日本ナレッジ、富士通コンピュータテクノロジーズ、豆蔵など6社を評価機関に立てている。申請する企業がCSAJに対象となる製品を申請し、CSAJが申請内容を確認した後、評価機関に評価を依頼。その後、評価にもとづいてCSAJの判定委員会で認証判定を行い、合格したものに対して認証書を発行する仕組みだ。
ユーザー企業は、導入しようとするソフトウェアの品質を判断しやすくなる。一方で、ソフトベンダーにとっては、ソフトウェアの本質的な品質の向上につなげるだけでなく、「国際規格に準拠した認証制度なので、海外での販売でもソフトの品質を保証できる。また、同様の認証制度を運営している海外の機関と相互承認の協定を結ぶことで、海外での競争力の強化につながる」(CSAJの前川徹専務理事:サイバー大学IT総合学部教授)という。
例えば、CSAJは、韓国情報通信技術協会(TTA)が運営している「Good Software認証制度(GS認証制度)」と相互承認協定を結びたいと考えている。韓国では、政府が「GS認証制度」を支援しており、認証を取得したソフトを政府が入札時に優先的に購入するなどの優遇措置を受けられる。前川専務理事は、「協定を結べば、韓国で認証を受けた製品と同等という扱いになるので、韓国のソフトと政府調達の条件や、トラブルが発生したときの損害保険料の料率などが同じになる可能性がある」とみている。同様の優遇を日本のソフトウェアが受けることになれば、海外での競争力は向上する。これをグローバルに広げていこうというわけだ。ただし、このことは同時に日本にも海外のソフトが入ってくることを意味する。相互承認協定は、その点をよく考慮したうえで慎重に進めなければならない。
また、「『GS認証制度』と同じように、国内でも『PSQ認証制度』について、経済産業省の支援を求めている」(前川専務理事)という。日本政府からの支援を受けることができれば、「PSQ認証制度」の取得企業は国内でも優位に立つ。
こうした相互承認や政府からの支援を得るためには、「PSQ認証制度」が一定の影響力をもつことが不可欠だ。認知度を高めて、申請企業を増やしていかなければならない。その点でいえば、今後の展開で「PSQ認証制度」を生かすも殺すも、ソフトベンダーの手にかかっているといえる。CSAJは、初年度で70製品の申請を目標としており、現時点で申請を希望している企業は14社。まだ開始したばかりということで、ソフトベンダーは検討中とするところが多い。CSAJが主催して勉強会を開催するなど、これから広く認知するための活動を実施していく方針だ。(真鍋武)