2014年4月9日にサポートが終了する「Windows XP」からのPC環境移行の需要がピークを迎えようとしている。日本マイクロソフトとパートナー企業は、「XP」サポート終了までの1年間を「移行支援強化期間」と位置づけ、ユーザーのPC環境の移行支援に取り組んできた。昨年11月時点で、国内法人市場に約1400万台残っていた「XP」搭載PCは、今年7月には約1050万台にまで減少している(IDC Japan調べ)。「XP」ユーザーの抱える課題も明確になり、各社は移行支援策を強化したり、提案方法に工夫を加えたりしている。
今年4月以降、ITベンダー各社がサポート終了の認知度向上に努めてきたことで、Windows OSの移行を検討する企業が増えてきた。日本マイクロソフトによると、9月時点で「XP」からの移行を予定・検討している中堅・中小企業(SMB)の割合は、4月比29ポイント増の82%となった。また、樋口泰行社長は、「7~8月のSMBに対する『XP』からのアップグレードライセンスの販売数は、昨年比で76%増えた。移行の進捗は順調だ」と状況を語る。リコージャパンの窪田大介専務執行役員は、「今年度のPC販売台数は、昨年度と比べて10万台多い70万台を見込んでいたが、『XP』からの移行の需要は旺盛で、80万台を販売することができそうだ」と好調をアピールする。移行支援に取り組むITベンダーは、「9~10月にかけて需要がピークを迎える」と口を揃える。
移行の動きが顕著になるなか、「XP」ユーザーの抱える課題もはっきりとしてきた。2013年度の予算が決まっているので、移行にかかる費用を捻出できないとか、アプリケーションの改修に多大な時間がかかってサポート終了までに間に合わない、経営層に危機意識がないといったものだ。こうした課題を解決するために、ここ数か月、ベンダー各社は移行支援策を強化している。

樋口泰行 社長 日本マイクロソフトは、「Windows 7/8」搭載端末と「Office 365」のライセンスを同時に購入するSMBに対して、金利ゼロで費用の支払い開始を14年4月まで延長できる「PC購入支援キャンペーン」をはじめ、「Windows 8」と「Office 365」を合わせて購入することで、ライセンス価格を20%割引で提供する「移行促進キャンペーン」を9月に開始した。期間限定や先着500社といった制限があるので効果は一時的なものになるが、「キャンペーンを呼び水として移行をさらに促進する」(樋口社長)ことを狙う。
富士ソフトは、「Windows 7/8」端末を「XP」にダウングレードして活用している企業が自社で簡単にアップグレードできる「らくらくアップグレード for Windows」の提供を7月に開始。同社MS部の森本真里部長は、「実は、ダウングレードしている『XP』のアップグレードの仕方がわからなくて、端末そのものの買い替えを検討している企業は多い。そうした企業が、自社で安上がりに『OS』を移行できる」と説明する。日本マイクロソフトによると、法人市場に残る「XP」端末のおよそ20%はダウングレード端末なので、かなりの需要が期待できる。
また、ソフトバンクBBやTIS、富士通マーケティング(FJM)など、「XP」の一時的な延命を目的とした仮想化ソリューションを前面に押し出すSIerが増えている。FJM商品戦略本部副本部長の浅香直也執行役員は、「基本的には、延命を前提とする仮想化ソリューション『AZCLOUD』を提案するようにしている。例えば、アプリ改修に手間がかかるユーザーは、サポート終了までに中途半端な状態に改修するよりも、いったん延命して、余裕をもって万全なシステムを構築したほうがいい」と説いている。
サポート終了まで、残り約6か月。需要はピークを迎え、ベンダー各社の移行支援策も強化されているが、すべての「XP」ユーザーが移行を完了できるわけではない。樋口社長は、「サポート終了までに、法人市場の『XP』の割合を10%未満にすることが目標」としたのも、その現れだ。法人市場にはおよそ3500万台のPCが稼働しているので、10%なら350万台程度の「XP」が残ることになる。つまり、サポート終了後もOS乗り換え需要は続く。ベンダー各社には、継続して移行支援をしていく準備が求められる。(真鍋武)