[創智天地]
五つの役割に分かれる開発区 総面積倍増に向けた拡張が進む
およそ10年前にできた創智天地は、商業・ビジネス・教育の観点からみて好立地にある。五つのエリアに分かれており、それぞれのエリアが特徴をもっている。大手外資系ITベンダーは多数進出しており、日系ITベンダーでは、唯一、日立ソリューションズの中国法人の上海支社が入居している。

50万km2の面積を誇る創智天地 創智天地は、中国政府と香港の不動産関連のデベロッパーが、約100億元を投資して構築した開発区だ。楊浦区のなかでも、商業・ビジネス・技術教育の中心地である五角場の近辺に位置している。復旦大学や同済大学など、五つの大学に囲まれており、地下鉄が通っているので、ビジネス、生活、交通の便がいい。近く、北部に100万m2の面積をもつショッピングモールが建設される予定で、商業都市としての発展が期待されている。
創智天地は、50万m2の面積をもち、「創智天地広場」「創智坊」「知識商務センター」「高科技園区」「江湾体育場」の五つのエリアに大別することができる。
16万m2の敷地の「創智天地広場」には9か所のオフィスビルが建設され、国際的に有名な銀行や、EMC、オラクル、IBMなどの外資系大手IT企業が多数入居している。中小企業向けのエリアである「創智坊」には、ソフトウェア開発などを手がけるベンチャー企業を中心として約500社が入居している。このなかにクラウド関連の企業が集中しているビル「云計算創新基地」もある。21万m2の面積をもつ「高科技園区」では、ナイキや中航国際などが、中国での本拠地を構えている。現在、「創智天地」の総面積は、50万m2の面積だが、拡張されていて、最終的には100万m2となる予定だ。

EMCやオラクル、IBMなど、大手外資系ITベンダーが多数入居
ビジネス、生活、交通の便がいい<進出した唯一の日系IT企業> ●政府のサポートが充実 
日立解決方案(中国)
有限公司上海分公司
朱磊
総経理 日立ソリューションズの中国法人の上海支社である日立解決方案(中国)有限公司上海分公司は、2011年11月に「創智天地」に拠点を構えた。日立解決方案(中国)有限公司の本社は北京で、上海分公司とは若干、事業内容に違いがある。
日立解決方案(中国)有限公司上海分公司では、従来のサーバー、ストレージなどのシステム構築と、マイクロソフトの「Dynamics」、IPS(位置測定)ソリューションの販売を主な事業としている。北京の本社が、GISソリューションを主力事業として、政府相手の案件を主に手がけているのに対して、上海では商業向けの製品を手がけている。上海が中国随一の商業圏であるのと同時に、日系企業の進出度合いも他の中国の地域と比べて高いために、こうした違いが生まれた。
そんな日立解決方案(中国)有限公司上海分公司だが、朱磊総経理は、「上海での拠点を設けると決めてから、実際に『創智天地』を選択するまでには半年間くらいの時間がかかっている。たくさんの開発区を見て回った」と説明する。日立解決方案(中国)有限公司が、上海での拠点設立にあたって重要視していたのは、交通の便と、周辺環境、サポートの充実度だ。「交通に関しては、上海市に数多くある地下鉄のなかでも、混雑が少ないことで知られている10号線が通っており、快適だと判断した。周辺環境では、緑や水が豊富で、ショッピングモールもできていることから、生活しやすい環境であることに好感をもった。サポートという観点では、日系企業でも政府のサポートを受けやすいということを高く評価した」(朱総経理)という。
●マッチングイベントが豊富 多くの日系IT企業が海外進出した際に重要視することは、日系企業同士が交流をしやすい環境であるかどうかである。しかし、ここで日立解決方案(中国)有限公司は、日系企業同士の交流よりも、楊浦区の政府やローカル企業とのつながりを重要視した。その理由は、地場の市場を開拓するためだ。朱総経理は、「創智天地では、政府を通して、ローカル企業とつながりをもつことができる。日系企業だと、現地企業とのコネクションを見つけることが一つの課題となるが、ここでは、政府からの紹介をきっかけとして、案件を獲得しやすい」という。実際、「創智天地」では、IT企業とユーザー企業を結ぶためのマッチングイベントを開催したり、見込み顧客を紹介したりしてくれる。日系ITベンダーにとって、大きな課題となっている現地顧客の開拓を支援してくれることのメリットは大きい。日立解決方案(中国)有限公司上海分公司では、現在、20%となっている中国現地企業からの売り上げが、13年度は40%までに上昇する見込みだ。
朱総経理は、「16年度までには、売り上げを現在の1.2億円から1.6億円までに拡大したい。そのために30人の人員確保も予定している」と意欲をみせている。
[復旦軟件園]
ベンチャー企業が集うソフトパーク 企業同士をつなぐ情報サイトを運営
「復旦軟件園」は、2013年末に完成する予定のソフトウェアパークだ。すでに多くのベンチャーIT企業が入居の意向を示している。その背景にあるのは、やはり政府の手厚い支援だ。起業するための手ほどきだけでなく、実際の案件の獲得までを視野に入れた支援を受けることができることが、IT起業にとっての魅力となっている。

復旦軟件園
楊秋萍
総経理 「復旦軟件園」は、三つのビルで構成される。ビルには企業の入居スペースのほかに、研究・開発用施設、金融センター、マンションを整備する予定だ。また、入居企業がいつでも自社の商材をPRできるように、イベントや交流会を開催するためのホールを設ける。
現在、ビルは建設中だが、すでに200社の企業の入居が確定している。次世代モバイル、クラウド、インターネット、データ活用ソリューションなどを手がける中小のIT企業が大部分を占め、そのほかは金融機関、アニメ・ゲーム制作会社が入る予定だ。日系企業の入居は、まだ1社も決まっていない。
「復旦軟件園」の特徴について、楊秋萍総経理は、「企業と企業とをつなぐための情報を提供するウェブサイト『兆聯天下』を運営していることだ」と説明する。「兆聯天下」では、起業するための登記の仕方や、資金の調達方法だけでなく、金融・流通・製造など、各業界の企業が出したシステム構築の依頼などの情報をリアルタイムに掲載し、ウェブ上で入居企業が問い合わせしたり、やり取りしたりすることができるようにしている。また、入居企業が、税制優遇などに関する情報をウェブサイト上で閲覧して、手続き方法や詳細の条件などがわからない場合には、「復旦軟件園」に問い合わせれば、詳細に教えてくれる。楊総経理は、「企業は、会社を設立する作業に時間を取られてはいけない。事業を成功させることに集中すべきだ。スタートアップ企業にとって課題となっているのは、自社を運営するために必要な情報を入手することが難しいということだ。そして、仮に情報を手に入れたとしても、それをうまく活用する術を身につけることはさらに難しい。『復旦軟件園』は、その部分を支援することができる。実際、私は約20年間、技術産業に従事して、園区を12年間経営してきた経験があるので、業界内での影響力が大きい。企業が必要としている情報を的確にアドバイスできる」とアピールする。
<進出企業の声> ●起業しやすい環境を整備 
上海索羅游信息技術
有限公司
周斌 首席執行官 上海索羅游信息技術有限公司は、2011年10月設立のゲーム制作会社だ。周斌首席執行官は、復旦軟件園を活用するメリットについて、「補助金などの物理的な支援は他の開発区と変わらないが、復旦軟件園では、自社にとって適切な情報を提供してくれることが何よりもありがたい」と説明する。
周首席執行官は、日本で社会人としての経験を積み、中国に帰国して上海索羅游信息技術有限公司を起業した人物だ。「はじめは、上海でビジネスをした経験がないなかで、どこに起業の登記をしたらいいのかということもわからなかった」と当時を語る。中国では、情報の入手方法が確立されていないので、政府に提出する書類を、いつまでに、どこに、どうやって提出したらいいのかということがわからないケースが多い。たとえそれがわかったとしても、担当部署や取り次いだ人によって、受理されるまでの時間が異なるといった事情がある。しかし、「『復旦軟件園』に依頼したところ、自分でやったら3か月かかる登記を、1週間で終えることができた。弁護士を雇ったとしたら、多額の費用がかかるが、ここでは無料で教えてくれて助かった」という。やり方を教えてくれるだけでなく、復旦軟件園が実際の担当者を紹介してくれるので、信用度が増し、手続きを速やかに終えることができるわけだ。
●一対一での交渉の場を提供 
北京営智優化科技
有限公司上海分公司
倪驊総経理 フランスのソフト開発企業ENGINESTの子会社、北京営智優化科技有限公司上海分公司は、華東地域の営業拠点として、『復旦軟件園』を選択した。同社は、NCLという独自開発のソフトウェア開発言語を活用して、顧客の要望に合わせたシステムを開発を手がけている。
倪驊総経理は、「登記や、イベントの開催だけでなく、実際の案件を紹介してくれることが一番の魅力」と話す。実際、北京営智優化科技有限公司上海分公司では、「復旦軟件園」の紹介がきっかけとなって、現地のERPベンダーと戦略的な提携を結んでいる。「イベントを開催するだけでなく、IT企業とユーザー企業との一対一のマッチングの場を設けてくれるので、案件を獲得しやすい」と効用を語る。