ネット通販事業者のディーケイシーの神谷祐介・EC事業部プロジェクトマネージャは愕然とした。転職してまず目についたのが、受注管理や出荷指示を手作業で行っている姿だったからだ。このままでは、右肩上がりで増える売り上げにいずれ対応できなくなり、手作業によるミスのリスクも一段と高まる。神谷マネージャは経営層を懸命に説得して、ネット通販の受注や出荷指示をシステム化する方策を模索し、たどりついたのがネット通販システム専門ベンダー、SAVAWAYだった。
【今回の事例内容】
<導入企業> ディーケイシー総合家電を扱うネット通販会社。直近では「楽天」「Yahoo!」「DeNAショッピング」「Amazon」などの大型ショッピングモールを中心に店舗展開を行っている。
<決断した人> 神谷祐介・EC事業部プロジェクトマネージャ(左)とSAVAWAYの道又嗣巳・営業部リーダー<課題>市販の表計算ソフトで受注管理や出荷指示を行っていたため、手間がかかるのに加え、手作業によるミスが発生する恐れがあった。
<対策>SAVAWAYの受注管理と在庫管理システムを採用
<効果>受注・出荷指示、在庫管理の主要部分を自動化。手作業によるミスの可能性を大幅に軽減した。
<今回の事例から学ぶポイント>ネット通販システム専業のITベンダーに発注したことで、ベンダーからさまざまな知見やノウハウを得ることができた。
専門的な知見やノウハウを重視
神谷マネージャの前職はネット通販サービス大手だったが、規模は小さいながらも業績を勢いよく伸ばしているディーケイシーに感銘を受けて転職を決めた。だが、実際に来てみるとシステム面では、お世辞にも充実しているとはいえなかった。受注管理や倉庫への出荷指示は、市販の表計算ソフトを使っていたからだ。売り上げが増え、ネット店舗の数も増える状況下で手作業を継続していたのでは、ミスのリスクも高まる。
「経営陣を筆頭に、商売の才覚を研ぎ澄ました精鋭ばかり集まっているのが当社の強み」(神谷マネージャ)としながらも、一方で、経営層は「業務で使うITは投資額の割にリターンが読みにくい」とみている節があった。そこで神谷マネージャは経営層や社内を説得し、システム化へ向けて動き始めた。
当初はパッケージソフトを活用する方式と、手組みでシステムを構築する方式の両方を検討し、SIerに見積もり依頼をかけたこともあった。しかし、ネット通販に疎いSIerでは、要件定義に時間がかかるし、本当に使えるシステムができるかどうかの保証がない。「こちらから要求するまで“指示待ち”の状態になっては困る」と、SIerへの発注は早々に見切り、ネット通販の専門システムベンダーを探すようになった。ネット通販専門でパッケージソフトやサービスを開発しているベンダーなら、いろいろ専門的なアドバイスを受けられるはずだと判断したからだ。
SAVAWAYに出会ったのは偶然だった。ネットで検索して見つけたのがきっかけで、訪問して話を聞くとネット通販の実情を熟知していて、とりわけ自社で通販サイトをもたず、楽天やYahoo!など、複数の大手通販ショッピングモールに出店する形態をとっているディーケイシーとの相性がいいことがわかった。最終的には、ディーケイシーとSAVAWAYの「双方の経営トップの経営方針が合致した」(神谷マネージャ)ことが決め手になって、SAVAWAYの受注管理システム「easyECS」と在庫管理システム「ストックギア」の採用を決めた。
「納得がいく成果を出せた」
システム化してよかった点は、受注や出荷指示のミスのリスクが格段に減ったことと、これまで表計算ソフトで管理していた担当者の残業が減ったこと。この二点については「当初、IT化に慎重だった経営層に向けて納得がいく成果を出せた」(神谷マネージャ)と胸をなで下ろす。システムは2010年夏頃にSAVAWAYに発注。主に受注管理システムと倉庫会社のシステムとのつなぎ込みの部分のカスタマイズ開発に約3か月ほど費やしたことから、本稼働は2010年秋となった。
本稼働直後から目に見える成果を出せたことはよかったが、不都合な部分もあった。それはユーザーから「届け日指定」があるにもかかわらず、商品によって希望日に合わせた配送がうまくできないケースが出てきたことだ。
例えば、ディーケイシーの主な商材である家電のうち、とくに冷蔵庫やクーラーなどの大型家電は、「届け日指定」の数日前には倉庫会社に出荷指示をしなければ間に合わない。しかし、システム上は、普通の中小家電と同じ扱いにしかならないので、「大型家電は手作業で修正」することになった。また、離島などの遠隔地も同様だった。こうした不都合は、2012年に行った手直しによって、「大型家電と遠隔地対応を行い、システムによる自動化ができるようにした」(SAVAWAYの道又嗣巳・営業部リーダー)ことで解消した。
ネット通販は、今、様変わりしている。世界最大手のAmazonが自社の物流インフラを活用して、テナントが扱う商品の在庫から配送まですべて代行する「フルフィルメントサービス」が注目を集め、国内ネット通販事業者にも追随の動きがみられる。将来は、ディーケイシーが出店する各社のフルフィルメントサービスが出揃えば、出店者が自ら倉庫会社と個別に契約する必要はなくなる可能性もある。情報システムも、こうしたネット通販業界の変貌に柔軟に対応する先見性とノウハウが求められているといえそうだ。(安藤章司)