日立公共システムエンジニアリング(日立公共システム)は、データセンター(DC)料金の低価格化に悩んでいた。同社の主力商材の一つである自治体向けコンテンツ管理システム(CMS)「4Uweb/CMS」は、これまで客先設置(オンプレミス)型がメインだったが、ここ数年、DCを活用したクラウド型へ移行する需要が急増している。しかし、日立公共システムはDC事業者間の競争原理による低価格化に対応しきれない状態が続いていた。その課題の解決策を提案したのはさくらインターネットだった。
【今回の事例内容】
<導入企業> 日立公共システムエンジニアリング主力商品の一つとして自治体向けコンテンツ管理システム(CMS)「4Uweb/CMS」を開発。首都圏の自治体向けCMS市場ではトップクラスのシェアを誇る。
<決断した人> (写真左から)日立公共システムエンジニアリングの坂野幸生・部長代理、橋本繁和・統括部長、さくらインターネットの臼井宏典・シニアコンサルタント <課題>データセンター(DC)への移行需要の高まりと、DCサービス料金の急速な低価格化に自社だけでは対応しきれない状況に陥った。
<対策>さくらインターネットの「さくらの専用サーバ」を採用
<効果>「4Uweb/CMS」のDC基盤に「さくらの専用サーバ」を採用したことで価格競争力が大幅に向上した
<今回の事例から学ぶポイント>DCサービスは規模のメリットが求められる。自社だけで解決しようとせず、外部サービスも積極的に活用すべき。
「自庁型」から「DC活用型」へ
日立公共システムエンジニアリングの自治体向けCMS「4Uweb/CMS」は、自治体が運営するウェブページを管理するシステムである。全国的な人気商品で、とりわけ首都圏ではトップクラスのシェアをもつ。
だが、2011年の東日本大震災を機に、これまで主流だった「自庁型」から「DC活用型」へと大きく変化した。「自庁型」とは自らの庁舎でサーバーを運営する、いわゆる客先設置(オンプレミス)型のことだ。先の震災では多くの庁舎が被災したり、停電でウェブを通じた情報発信に支障が生じたが、何重にも防災対策を施しているDCを活用したシステムへの被害はほとんどなかった。このことが自治体を「自庁型」から「DC活用型」へと走らせた。
自治体の公式ウェブは、住民への情報発信という重要な役割を果たしているにもかかわらず、住民基本台帳システムなど基幹系システムに比べて予算の割り当てが少ない傾向がみられるうえに、ウェブを運用する汎用的なDCサービスは競争が激しく、「価格的にまったく折り合わない」(日立公共システムの橋本繁和・新事業開発本部統括部長)という状態に陥ってしまった。サーバーを客先に設置する従来型ならば、業者間による価格差はそれほど大きいものではなかったが、DCサービスは規模のメリットによる低価格化が著しいことが背景にある。
自治体は基本的に要求仕様に合致するサービスのなかから最も安いものを選ぶ傾向にあるので、「4Uweb/CMS」そのものは自治体顧客から高く評価されても、DCサービスを含めたトータルの価格で競争力を高められず、「一時期は提案すらもままならなかった」(日立公共システムの坂野幸生・WebユニバーサルデザインS.G部長代理)と、無念さに唇を噛みしめた。そこで打って出たのが、顧客の要求仕様を満たしつつ、価格競争力を大幅に高められる外部のDCサービスの活用だった。つまり、「4Uweb/CMS」を販売するためのツールとして、客先設置型のサーバーではなくDCを用いるという狙いで外部のDCサービスを導入したわけだ。
外部DC活用で価格競争力を獲得
DCサービスを導入するにあたって、「まずはネット上でくまなくDCサービスを探す」(日立公共システムの坂野部長代理)ところから始めた。「クラウド」「データセンター」などと検索をかけると、知名度の高い世界大手のAmazon Web Services(AWS)が目につく。AWSはすぐれたサービスだが、使った分だけ代金を支払う従量課金制が基本なので、単年度予算方式の自治体ユーザーは使いにくい。予算が読みにくいからだ。同様の理由でAWS型のパブリッククラウドサービスは少なくとも自治体向けの「4Uweb/CMS」を動かす基盤としては不向きだった。
紆余曲折の末に出会ったのが、物理サーバーとクラウドの使い勝手を兼ね備えた「さくらの専用サーバ」だった。さくらインターネットが運営するサービスで、オンライン申し込みから最速10分で物理サーバーを使えるだけでなく、必要に応じて無制限に台数を拡張でき、複数台による構成も可能という「限りなくクラウドの使い勝手に近い物理専用サーバー」(さくらインターネットの臼井宏典・ソリューション営業チームシニアコンサルタント)だった。価格競争力も十分にあり、物理サーバーを借りる仕組みなので、自治体の予算枠にも収まる。
ユーザーがDC活用に移行しつつある最大の動機である災害対策では、北海道のDCをメインとし、関西圏のDCをサブとして使うことで「災害時の同時被災の可能性はほぼゼロに近い」(さくらインターネットの臼井シニアコンサルタント)構造を採用している。日立公共システム側もこの点を高く評価しており、「事業継続性と価格を両立させている」(日立公共システムの坂野部長代理)ことから「4Uweb/CMS」の基盤として採用することを2012年末までに決定。価格競争力を得たことで、向こう1~2年をめどに自治体向け「4Uweb/CMS事業で10~20案件を獲得していきたい」としている。(安藤章司)