レッドハット(廣川裕司社長)は、販社向けの新しい支援プログラム「ディールレジストレーションプログラム」の提供を2014年6月1日に開始した。このプログラムは、販社が新規案件を獲得することを促すもので、レッドハットが販社とのパートナーシップを深耕して売上増と市場でのシェア拡大を狙いとする施策である。販社にとって、このプログラムに参加することによって得られるメリットはどのようなものだろうか。(取材・文/佐相彰彦 写真/津島隆雄)
特別なディスカウントを提供

古舘正清
常務執行役員
パートナー・アライアンス
営業統括本部長 新プログラムの「ディールレジストレーションプログラム」は、レッドハットの製品を担ぐ販社を対象とするものだ。販社がレッドハットの製品を使って受注を獲得する際に、レッドハットに事前に伝えておけば、同社がその販社に向けて最適な支援を行う。レッドハットにとっては、販社が「取引を登録する」ことによって、どのような案件が動いているのかが把握できるだけでなく、支援策を事前に準備して販社とのパートナーシップを深めることに役立つ。
このプログラムが適用される条件は、パートナー制度のアドバンスド・ビジネス・パートナーやレディビジネス・パートナーに参加すること。今回のプログラムは、SIer向けの支援策ということになる。アドバンスド・ビジネス・パートナーやレディビジネス・パートナーが案件を獲得した場合、その登録案件に対して、レッドハットが特別なディスカウント価格で製品を提供する。また、アドバンスド・ビジネス・パートナーについては、販促支援金の利用や、目標設定によって報奨金制度が設置されるなどの特典もある。
古舘正清・常務執行役員パートナー・アライアンス営業統括本部長は、「既存のシステムをOSS(オープンソースソフトウェア)に移行することを検討しているユーザー企業に対して、販社が促しやすい環境を整えた」という。玉利裕重・SI-er&ISV営業事業部事業部長兼チャネル戦略室長は、「価格がすべてというわけではないが、あとひと押しで導入を決断しようとしているユーザー企業に対して、これまでよりもリーズナブルな額を提示できる。価格競争力があるというのが、このプログラムの魅力だ」としている。
担当者のアサインや人材育成を強化

玉利裕重
SI-er&ISV営業事業部
事業部長 兼
チャネル戦略室長 プログラムを利用するうえでのディスカウント以外のメリットは、人材に関する支援だ。アドバンスド・ビジネス・パートナーには、レッドハットから営業や技術者の担当者を出して、個別案件に対応する。レディビジネス・パートナーには、ディストリビュータ経由で人材リソースに関する支援を行っている。
また、販社とのジョイントセミナーやイベントで集客や見込み客の情報を共有するコミュニケーションツール「Zinfi」の提供によって効率的な営業活動を行うことができる環境も整えている。さらに、eラーニングも刷新し、販社の営業担当者やエンジニア、セールスエンジニアなどが必要な営業知識・最新技術情報のトレーニングを無償で受講できるようにしている。
パートナープログラムの改善によって、レッドハットでは、市場の伸び以上の売上拡大を狙っている。玉利事業部長は、「OSS市場の年平均成長率は、2012年から2017年までで10.2%と拡大が予想されている。売上成長率として、市場成長率の2倍程度は確保していく」という。この成長の波に、「販社にも乗ってもらいたい」との考えを示している。
今回のプログラムは、レッドハットの製品を使った確実な案件の獲得をコミットしなければならないというリスクがあるものの、販社にとってはメーカーとの密なパートナーシップによって、拡大する市場で新しいビジネスを手がけることができるというメリットがある。レッドハットでは、今回のプログラムに加えて今後も多くの支援策を講じていく。現段階で250社程度の販社数を、将来的に500社まで引き上げることを計画している。