市場調査やプロモーション(販売促進)を手がけるドゥ・ハウスは、クララオンラインのデータセンター(DC)とアジアビジネス支援を組み合わせたサービスを採用した。ドゥ・ハウスはIT活用に積極的だったこともあり、2000年代まで自社オフィス内でサーバーを運用していた。だが、ITシステムの規模が大きくなるにつれて社内電算室での運用は限界に至った。外部DC事業者のインフラ活用を段階的に進めることになったが、その際の重要な選定基準は、「グローバル対応の有無」だった。
【今回の事例内容】
<導入企業> ドゥ・ハウス市場調査とプロモーション(商品の販売促進)を柱とし、およそ550万人の生活者をネットワーク化。メーカーの商品開発や商品育成を支援している
<決断した人> 社内システムを担当する水津謙一郎サブマネジャ(写真左)、海外事業のシステムを担当する松本智宏マネジャ(写真中央)と並木啓剛マネジャ(写真右)。市場調査やプロモーションのいずれの主力事業もITシステムなしには成り立たない
<課題>社内の電算室で情報システムを運用するのは事業継続や災害復旧の観点から課題が多い。また、海外展開にも対応しきれない
<対策>アジア市場に強いクララオンラインと組むことで事業継続性を高め、海外進出の足がかりも手にする
<効果>ITサービスと海外でのビジネス支援を得て、まずは台湾での事業立ち上げを実現した
<今回の事例から学ぶポイント>ユーザーはITサービスだけを必要としているのではない。より本質的にはビジネスの成功を求めている
“台湾活用型ビジネス”を提案
ドゥ・ハウスは社内電算室で運用していたシステムをDCへ移設するとともに、本業の市場調査やプロモーションの海外への展開をほぼ並行して進めていた。このためDC事業者の選定では「グローバル対応が必須」(ドゥ・ハウスの松本智宏・モラタメシステム部マネジャ)となり、複数の事業者に相談を持ちかける。このうちの一社がクララオンラインだった。とはいえ、これまで国内中心で成長してきたために海外での経験に乏しく、情報システムをグローバル対応させる目標を立てたものの、「実際、何をどうすればいいのか、正直、わからない状態」(並木啓剛・システム企画部マネジャ)だった。
クララオンラインは、ソリューションビジネスグループの石原浩之氏によれば、(1)主にアジア市場へ進出を加速していること(2)この過程でいくつもの失敗を経験してきたこと(3)これら苦い経験をもとに、ユーザー企業には「DCサービスのメニューの一環としてアジアビジネス支援」を行っていることをドゥ・ハウスに説明したそうだ。

写真左からクララオンラインの福本英希氏、石原浩之氏、山田ゆかり氏 ドゥ・ハウスがイメージする海外進出先が華人圏やASEANなどのアジア成長市場であることを把握していたクララオンラインは、さらに一歩踏み込んで「台湾活用型ビジネス」を提案。日本の商慣習や価値観と親和性が高く、対日感情も比較的良好なことから、「とくに中国や香港などの東アジア市場、シンガポールやマレーシアをはじめとするASEANの華人経済圏への進出に向けたファーストステップとして最適」(ビジネス推進グループの山田ゆかり氏)という理由があったからだ。
ビジネス支援を得て立ち上げ
将来のアジア市場への進出を見越してクララオンラインとの関係を深めていた矢先の2011年3月、東日本大震災が発生した。直接の損害こそなかったが、ドゥ・ハウス電算室のサーバーがひっくり返ったり、余震のたびにビルのエレベータの安全装置が働いて、ときには社員が一時的に閉じ込められたりした。「これでは情報システムの保全が心許ない」(ドゥ・ハウスの水津謙一郎・システム企画部サブマネジャ)と痛感して、最後まで電算室に残っていた人事給与やワークフローなどの社内向け業務システムもクララオンラインから借りているパソコンへの統合を決断。先行していた業務システムと統合するかたちで移行し、事業継続力を高めた。

台湾版「モラタメ」の公式HPと公式Facebookの画面イメージ ドゥ・ハウスは、クララオンラインと密接に連携をとりながら、台湾活用方式による海外進出を果たした。まず投入したのはプロモーション事業の「モラタメ」だ。お菓子や飲料、石けん、シャンプー、調味料などの消費財を中心としたもので、サンプルをモニター(生活者)に渡し、実際に使ってもらって、その感想をブログやソーシャルメディアに書き込んでもらうというもの。台湾の生活者をネットワーク化する基幹システムはクララオンラインのITインフラを活用したわけだが、これに加えて「モラタメ」ウェブサイトのデザインや中国語への翻訳、認知度を高めるための広告の打ち方など、細かいところまでクララオンラインの支援を得た。
クララオンラインは、「ユーザーが必要とする市場動向の調査や、地元協力会社とのビジネスマッチングなどを日頃から常に意識して、準備することを重視している」(サービス運用グループの福本英希氏)と、単なる「ITプラットフォーム」ではなく、あくまでもユーザーのビジネスを成功に導くための「ビジネスプラットフォーム」としてサービスを設計している。こうした支援もあって「モラタメ」は、台湾でおよそ3万人の生活者ネットワークを構築し、常時20~30アイテムのプロモーションを展開。台湾でのノウハウをもとに、他のアジア市場への展開を視野に入れるまで成長している。(安藤章司)