大手ITベンダーは、中国市場の攻略に向けて多様な施策を打っている。中国国内企業、米国企業を問わず、大手がクラウドやタブレット端末、そしてサーバーといった主力のIT製品・サービス分野でさまざまな新戦略を講じ、ビッグマネーをつかもうとしている。(再編集/『週刊BCN』編集部)
マイクロソフト中国
Surfaceが好調、iPadからの置き換え促進 特定業種に強いパートナーとのエコシステムを構築
●Surface Pro 3で引き合い急増 
北京宇信易誠科技の孟東煒・副総裁兼
戦略発展部総経理 発売から1年が経った「Surface」は、中国でさまざまな業界のユーザーやSIer、ISVなどのITベンダーから高い支持を得ている。とくに、マイクロソフトが新機種「Surface Pro 3」を2014年5月20日にニューヨークで発表して以来、Surfaceを求める法人ユーザーが急増している。
例えば、金融機関。中国の銀行は、スマートデバイスを単なる情報の「閲覧デバイス」としてではなく、業務を遂行するための「閲覧+操作端末」に位置づけ始めている。中国の多くの銀行が当初導入したのは「iPad」だった。しかし、iPadでは、銀行のニーズに応えられないケースがあるという。
「中国の銀行で使用するデスクトップPCの多くは、Windowsを採用している。当然、アプリケーションソフトもマイクロソフトのプラットフォームで動いていて、Windowsが絶対的優位にある」と、金融業界向けのソリューションを手がける北京宇信易誠科技の孟東煒・副総裁兼戦略発展部総経理は語る。
「私たちが初めて手がけたスマートデバイスでの操作を前提とした銀行向けアプリケーションは、マイクロソフトとの連携によるものだった。その際、Surfaceのスタンドの底に指紋認識機や小切手読み取り機などをカスタマイズで取り付けた。これらの周辺機器は、Windowsプラットフォームを採用しているため、簡単に設置できてトラブルもなかった」という。
北京宇信易誠科技は、昨年、中国のある大手銀行にWindows 8対応のモバイル販売管理システムを開発して導入した。現在、そのシステムを利用するSurfaceは、3万8000台を超えている。
●飛躍のカギは“エコシステム” 法人向けにSurfaceを取り扱うディストリビュータは、中国では5社存在し、マイクロソフトは順次、ディストリビュータを増やそうとしている。マイクロソフト中国のSurface製品部門マネージャーの黄継佳氏は、今後の施策について「主に二つある。一つは、重要視する業界のISVやSIerと協力して、すべての業界に対してSurfaceの導入を促進していくこと。もう一つは、ユーザーのすそ野拡大だ。中小、中堅、大手といった規模に関係なく広くSurfaceを届けるインフラをつくること」と話す。
マイクロソフト中国は、Surfaceの法人市場へリソースを投下し、エコシステムの拡張と構築を加速させていく予定だ。前出の北京宇信易誠科技のような特定の業種に強いパートナーが、Surfaceの価値を認め、率先して自社ビジネスに組み込むようなエコシステムをどれだけ強固に構築できるかが、カギを握りそうだ。(余文、『SP/計算機産品与流通』2014年6月 第7期第17巻より)
ファーウェイ
クラウドOS「FusionSphere」を本格展開 オープン&革新的エコシステム形成へ
●世界40か国で使われる基盤 華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)は、自社のクラウドOS「Huawei FusionSphere」によって、「オープンで革新的な」エコシステムを構築しようとしている。
2014年5月、ファーウェイが桂林市で開催した「FusionSphereユーザーフォーラム」で、同社の鄭葉来・IT製品部門総裁は「オープンなアーキテクチャと標準的なプロトコル、そしてオープンソースソフトウェアをベースに、オープンで革新的なクラウドOSを創造する」と意気込みをみせた。
中国のユーザーは、クラウドを構成する製品単体や技術支援を求めるのではなく、業務に合わせた総合的なクラウドソリューションを求め始めている。既存の閉鎖的なITアーキテクチャやソフトでは、多種多様な業務に適した柔軟なIT環境を構築できないと考えているのだ。
こうしたニーズを踏まえて、ファーウェイは2008年からオープンプラットフォーム上でのクラウドアプリケーションソフトを開発。通信分野で培った経験とIT技術を融合したクラウドの開発に力を注いでいて、多くのパートナーにビジネスチャンスをもたらす仕組みの構築にも努めている。
クラウド戦略の中核となるFusionSphereは、すでに世界40か国以上の国と地域で利用されている。クラウド上でハードウェアとアプリケーションをつなぐ意味で、クラウドOSのパフォーマンスは重要。FusionSphereは現行バージョン「3.0」まで、着実に機能強化を重ねていて、ネットワークやストレージリソースの仮想化を実現しているほか、高速な演算能力も兼ね備える。同一のハードウェアプラットフォームで競合他社製品と比較テストを行った結果、FusionSphere 3.0は業界最高のパフォーマンスを実現したという。

ファーウェイの鄭葉来
IT製品部門総裁 ●戦略提携するパートナー 鄭総裁は、「ユーザーやパートナーのビジネスに貢献して、成長する機会を創り出すためには、クラウドOSを提供するだけでは足りない。ファーウェイは、サーバーやストレージ、ネットワーク、さらにクラウド管理製品などを総合的に提供することに力を注ぐ。そして、パートナーとともに、競争力のあるソリューションサービスをつくる。FusionSphereの付加価値を、エコシステムによって創出する」と強調する。
ファーウェイのパートナーである北京富通東方科技の陳健会長は、「私たちがファーウェイをパートナーに選んだ理由は、ファーウェイがもつクラウド関連の製品・サービスが幅広いこと、そして当社の戦略とファーウェイの戦略が合致していることで、ユーザーに最後まで責任を果たすことができるからだ。将来、私たちはクラウドをベースにしたソリューションを中心に、ファーウェイの全製品ラインアップで戦略的に協業する」と強調している。(趙珏、『SP/計算機産品与流通』2014年6月 第7期第17巻より)
レノボ
IBMのx86サーバー事業買収を中国、米国の専門機関が承認
中国商務部反壟断部門(CIIAI)は、7月4日、レノボによるIBMのx86サーバー事業の買収申請を承認した。その翌月の8月15日には、米国の政府機関である米外国投資委員会(CFIUS)が承認。これによって、両社の取引が、事実上、成立した。
レノボは今年1月、IBMの「System x」「Blade Center」「Flex System」、ネットワーク関連製品などのx86サーバー関連事業部門を23億ドルで買収すると発表していた。取引が完了するには、CIIAIとCFIUSの承認が必要で、とくに米国のCFIUSが承認するかどうかがポイントになっていた。
今回、両国の専門機関が承認したことで、1月の発表から動きがみられなかった両社の協業計画が、一気に動き出しそうだ。日本では、レノボ・ジャパンが、買収したx86サーバー関連事業部門の引き継ぎ会社になる「レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ」を6月23日に設立。日本IBMのx86サーバー事業部門のスタッフが移籍する予定だ。取引が完了し、今秋から冬にかけて、こうした動きが世界各国でみられそうだ。(SP、『週刊BCN』編集部)
『週刊BCN』は、季刊発行(3月、6月、9月、12月)する中国特集号で、中国ITベンダーの動向や欧米系ITベンダーの中国でのパートナービジネス戦略情報を発信しています。そのなかで、BCNの中国子会社・比世聞(上海)信息諮詢は、中国IT業界のパートナービジネスの領域でメディア・コンサルティングサービスを展開するSPと協業し、情報収集・発信体制を強化。その一環として、SPのコンテンツの一部を活用しています。この記事は、SPが発行する中国IT専門メディア『計算機産品与流通』(「コンピュータ製品と流通」の意味)で掲載した記事を、BCNが翻訳・再編集したものです。