レノボ(楊元慶CEO)による米IBMのx86サーバー事業の買収は、IT業界に大きな衝撃を与えた。買収金額は約23億ドル(約2345億円)。米ラーレイや上海、深セン、台北など、IBMの主要拠点に在籍する約7500人の従業員は、レノボに移籍する。同日、レノボは中国の「マスターカードセンター」で、2014年の新春イベントを開催し、楊CEOは、買収の背景や狙いを語った。中国メディアの記者との質疑応答の内容を抜粋して紹介する。(取材・文/中国IT専門メディア「SP/計算機産品与流通」編集部 翻訳・再編集/『週刊BCN』編集部)

楊CEOはx86サーバー事業買収の経緯を笑顔で語った(写真提供:「SP/計算機産品与流通」編集部)
発端は1年前の
IBMトップとの面会
──買収の経緯を教えてください。 楊 きっかけとなったのは、2013年の初め、米IBMのCEOであるバージニア・M・ロメッティ氏と面会する機会があったことです。ロメッティCEOから「(x86サーバー事業の)買収に興味があるか」と真面目に聞かれ、私は「とても興味がある」と答えました。それから1年をかけて話を進め、このタイミングで契約書に署名することができました。
改めて内容をお伝えすると、レノボが約23億ドルでIBMのx86サーバー事業を買収するというものです。約90%は現金で、残りの10%ほどはレノボの株式で支払います。買収には各監督や審査機構の承認が必要ですので、数か月の時間を要しますが、正式に取引が完了した後に、レノボの営業収益は50億ドルに拡大することになります。
また、IBMの約7500人の正社員と、およそ1500人の契約社員がレノボの一員となる見込みです。レノボにとって、サーバー分野で研究・開発力にすぐれた彼らは、貴重な財産。レノボは、x86サーバー事業を成長分野に位置づけていますので、彼ら(IBMのx86サーバー事業部門のスタッフ)は、喜んで新しいチームに加わってくれると思っています。
──サーバー市場での立場が変わりますね。 楊 (今回の買収によって)レノボのx86サーバーのグローバルシェアは、およそ14%で第3位になり、中国だけでみると約22%でトップに立ちます。また、IBMのブランドを使用することができるほか、IBMはサーバーの社内使用と、外部向け販売にはレノボ製品を採用することで承諾を得ています。
x86サーバーの収益力は
PCより上
──レノボは、2005年にIBMからPC事業を買収し、13年に世界のPC市場でNo.1になりました。サーバーでは、何年後にトップに立つつもりですか。 楊 PC事業は、まず赤字から黒字にするために、3~4年かけて利益の出る体質に変えました。2009年時点で、PC市場でのシェアは7%ほどでした。ですが、その後の5年間は年平均1~2%でシェアを拡大し、13年度(14年3月期)上半期には18.6%のシェアで、ようやく世界一になりました。
x86サーバー事業をどのような曲線を描いて成長させていくのか。実は、まだ詳細な計画は立てていません。これから調査・分析を重ねて計画をつくっていきます。ただ、成長速度がPCより速いことは間違いありません。PCを買収した当初は、グローバル市場を熟知していないこともあって、成長軌道に乗せるまでにそれなりの時間を要しました。しかし、今はこれまでに蓄積したノウハウを生かすことができるので、急速に成長するでしょう。
──x86サーバー事業では、どの程度の利益率を見込んでいるのですか。 楊 粗利益率は20%以上で、PCよりも高くなるでしょう。IBMは投資額が多く、過去数年間では利益をあまり出すことができていませんが、レノボは(高収益体質をつくる)自信があります。その理由の一つとして、x86サーバーはPCよりも競争が激しくないからです。主なライバルは、ヒューレット・パッカード(HP)、デル、シスコシステムズくらい。IBMの技術優位性やハイエンド層の顧客基盤とレノボの高効率性を融合することで、高収益な事業モデルをつくることができると思います。
過去20年間、レノボはPCに集中して事業を進めてきましたが、x86サーバー事業の買収によって、新たな事業の柱を誕生させることができると確信しています。
──買収価格を決めたプロセスを教えてください。 楊 買収価格は、収益力や今までの業績査定などをもとに、専門投資銀行やコンサルティング会社の専門部隊などに査定してもらいました。今回の買収には満足していて、すぐれた資産を手に入れたと思っています。ブランド力と技術、顧客基盤などを自らのものにしたことで、当社はサーバー事業の領域で新たなスタートを切ることができると確信しています。