BCN(佐藤敏明社長)とサイボウズ(青野慶久社長)は、9月19日、東京・秋葉原のUDXカンファレンスで、SIビジネスの新潮流をテーマに「SIer必見! BCN×サイボウズ コラボレーションセミナーll」を開催した。新たなビジネスモデルを展開している企業を招いてパネルディスカッションを実施したほか、PaaSの市場動向解説、サイボウズの「kintone」の最新トピックスや事例などを紹介。SIerの生き残り策を解説したセミナーの様子を紹介する。(取材・文/木村春生(フリージャーナリスト) 写真/津島隆雄)

セミナー最初のプログラムとして特別企画のパネルディスカッションを実施新しいビジネスモデルの先駆者がパネルディスカッションを実施

サイボウズ
伊佐政隆
kintoneプロダクトマネージャー 最初のプログラムは、「SIビジネスの新潮流とこれから取り組むべきビジネスモデルとは」というタイトルのパネルディスカッションで始まった。従来のSIビジネスモデルは限界がきているといわれるなかで、新たなビジネスモデルを切り開いて成功している企業の代表として、ソニックガーデンの倉貫義人社長CEO、ジョイゾーの四宮靖隆代表取締役、M-SOLUTIONSの植草学取締役の3人のパネリストを迎え、これから取り組むべきSIビジネスモデルのヒントを探った。モデレータは、『週刊BCN』の谷畑良胤編集委員が務めた。
パネリストに共通するのは、従来の「人/月」 単価のビジネスモデルではなく、成果報酬をベースにしていることだ。従来モデルは、「『人/月』で見積もってシステムを開発することに矛盾が出てきた」(ジョイゾーの四宮代表取締役)と指摘。その問題については、「開発して納品するというスタイルは、顧客もSIerもハッピーにしない」(ソニックガーデンの倉貫社長CEO)、「従来型は不要なもの(機能)が多くなる。そこで、スモールスタートを提案している」(M-SOLUTIONSの植草取締役)と語った。
また、「スピードが求められるので、サーバーの調達などをしていられない」(ソニックガーデンの倉貫社長CEO)として、新しいモデルでは、クラウドや高速ネットワークなどのインフラをフル活用している。一方、新モデルにできないことは、「『人/月』の見積もりが要求される入札」(ジョイゾーの四宮代表取締役)にとどまるという。M-SOLUTIONSの植草取締役は、「相手の顔が見えない仕事は受けない」とした。ビジネスモデルの転換に関して、ソニックガーデンの倉貫社長CEOは「会社の内側からビジネスモデルを変革することはできなかったので、新会社を立ち上げた」と振り返り、また、ジョイゾーの四宮代表取締役は「顧客満足を考えた結果が今のモデル」と語った。
新モデルが求められる背景として、「通信やデバイスの発達で、場所、時間に縛られないモデルが可能となった」(ジョイゾーの四宮代表取締役)、「一つのモデルをいつまでも続けることはできない。時代・技術の推移・進展とともに変化する必要がある」(M-SOLUTIONSの植草取締役)と説明した。ソニックガーデンの倉貫社長CEOは、「われわれの仕事はモノづくりではなく、医師や弁護士と同じ問題解決型。頭数より優秀な人材がすべてなので、ギルド (技能集団)を形成した。大規模案件もギルドの連携で可能」とした。
続くBCNセッションでは、「PaaS市場の最前線を切る!」と題して、『週刊BCN』の畔上文昭ディレクターが講演。PaaS市場における主要サービスの特色や、PaaSを扱っているSIerの声を紹介した。
進化するkintone 3年間で177件の機能を追加
最後のサイボウズセッションでは、「進化するkintoneビジネスと最新事例報告」と題して、サイボウズの伊佐政隆・kintoneプロダクトマネージャーが講演した。
冒頭、伊佐プロダクトマネージャーは「チームで仕事をするための仕組みを提供するサービスで、当社がグループウェアで培った17年間のノウハウを盛り込んでいる」と、kintoneを紹介。そして、ゼロからアプリケーションを作成するデモを通じてすぐれた操作性をアピールした。
今年6月に発表した今年度業績の赤字見通しについては、「創業以来続けてきた黒字経営に終止符を打ち、赤字決算にしたのは、クラウド事業拡大のために投資したからだ。kintoneは必ず将来的に大きく伸びていく」と強調した。
サイボウズでは、kintoneをさらに多くのユーザーに使ってもらえるよう、信頼性を高め、セキュリティを強化している。この3年間で17回、177件の機能の追加を実施した。こうした取り組みが評価され、大手企業での導入も順調に進んでいる。
また、エコシステム拡大への取り組みとしてアプリストアの充実を挙げ、「約100種のアプリのうち、半数がサイボウズ以外から提供されている」と語り、サイボウズコミュニティ、トレーニングプログラム(kintone university)、勉強会(kintone Cafe)など、普及促進のさまざまな活動をアピールした。
セミナーには、SIerやソフトベンダーなど約200人が参加した。多くの参加者が成功モデルや生き残る策を見出そうとパネルディスカッションや講演を熱心に聞いていた。