BCN（佐藤敏明社長）は、サイボウズ（青野慶久社長）との共催でクラウド時代のSIビジネスをテーマとする「SIer必見！ BCN×サイボウズ コラボレーションセミナー」を4月17日に東京・千代田区、23日に大阪・北区で開催した。IT業界の動向やクラウドにおけるビジネスチャンス、業務システムの開発環境を提供するサイボウズのクラウドサービス「kintone」の最新情報や事例などを紹介。会場はいずれも補助席まで埋まるほどの盛況ぶりで、kintoneへの関心の高さがうかがえるセミナーとなった。（取材・文／畔上文昭　　写真／横関一浩）

ファストシステムとファストソリューション

　サイボウズがkintoneのサービスを開始したのは2011年11月。有料契約数はすでに1300社を超えており、今年の3月だけで164社が契約するなど、加速度的な伸びをみせている。昨年後半からは、大規模案件も増えてきているという。その人気を支えているのは、PaaSの利点を追求した「ファストシステム」と「ファストソリューション」という二つのコンセプトだ。

　「kintoneビジネスの現況と未来」と題して講演したサイボウズの栗山圭太SMB市場統括責任者は、「ファストシステムとしてのkintoneは、ユーザーが自ら簡単に作成できる便利ツールであるということ。もう一つのファストソリューションは、開発プラットフォームとしてのkintoneを意味する。kintoneでは他システムとの連携や既存システムのフロントエンドツールとしての活用を短期間で実現する。今はこの開発プラットフォームに力を入れている」と説明した。

　開発プラットフォームとしてのkintoneを普及させるには、パートナーとの連携強化が不可欠になる。サイボウズは開発者向けの「developer network」を提供しており、コミュニティの力による情報共有や課題解決も推進している。栗山氏は「パートナー企業とのSI案件を増やしたい。そして、kintoneとパートナー各社の製品との連携を軸にしたビジネスに力を注いでいきたい」と参加者に訴えた。

　また栗山氏は、三つのkintone活用事例を紹介した。一つは最も多いケースとなるMicrosoft Excelからの移行事例。通信販売大手のベルーナは、外部のウェブ制作会社とのやり取りにExcelファイルを使用していたが、バージョン管理の煩雑さが課題になっていた。そこで、Excelと同等の機能をkintone上に用意。バージョン管理の煩わしさを解消した。

　二つ目は、ERPパッケージとの連携事例。ERPの情報を社外にいながら確認したいとのニーズがあって、kintoneがフロントエンドツールとして使われるケースが多いという。「ERPを社外からアクセスできるようにするには、営業担当者の数だけアカウントが必要になるので、コスト負担が大きくなってしまう。それを避けるためにkintoneにデータを渡して、そこにアクセスするようなフロントツールとしての使い方がなされている」（栗山氏）。

　三つ目は、基幹システムの拡張機能としての活用事例。雑貨やインテリア用品を扱うバルスは、プライベートブランドを展開するにあたって、既存の基幹システムで対応していない部分をExcelで補っていた。その部分をkintoneに切り替えたところ、基幹システムとのやりとりでリアルタイムの処理が可能になるといった効果が出ているという。

kintoneは顧客の満足度が高い

　パネルディスカッションでは、サイボウズ執行役員システムコンサルティング本部長の札辻秀樹氏、kintoneを中心としたシステム開発を手がけるジョイゾーの四宮靖隆代表取締役、同じくkintoneを活用したシステム開発を手がけるアリーナシステムのシステム開発部マネージャー宇野里氏の3人がパネリストとして登壇、BCNの谷畑良胤編集委員がモデレータを務めた。

　四宮氏はkintoneについて「顧客の満足度が高い。そのため、手離れがいい」と絶賛した。以前は、顧客の要望を聞いてkintoneを提案していたが、最近は顧客がkintoneを指定してくる案件が増えているという。

　宇野氏は「サイボウズは、チームワークを重視している企業。パートナーもチームの一員とみなして、やりやすい環境を提供してくれる」と語った。それを受けた札辻氏は「何かを成し遂げるときには、チームを機能させることが効果的。そこに重点を置いて充実させることで、パートナーの皆さんの満足度を上げていきたい」とした。また札辻氏は「パートナーとの関係は力を入れて構築中で、今後も注力していきたい」と会場に呼びかけた。