弥生(岡本浩一郎社長)を金融サービス大手のオリックスが買収した。オリックスグループ入りしたことで、弥生の経営や事業展開にどのような影響が出るのか。岡本社長に、自身の身の振り方を含めてお話をうかがった。
──オリックスグループ入りで何が変わるのか。 
岡本浩一郎社長 岡本 弥生の製品やサービス、そしてそれを支える体制は、基本的にまったく変わらない。一方で、今後当社がお客様に提供できる価値の幅が大きく広がり、深さも増していく。買収の発表前にオリックスと議論を重ねて、協業するからには、既存の商材を多少手直しするレベルではなく、弥生の顧客である小規模事業者に最適化した新しい商材をつくりあげていこうという方針を固めている。
──協業の成果が出るのはいつ頃か。 岡本 2015年中には何らかのかたちを示したいが、その段階では今申し上げた「既存の商材を多少手直しするレベル」にとどまるだろう。具体的にはまだ言えないが、オリックスの既存商材にもおもしろいものが多いので、弥生のお客様に価値を提供できるものを見繕って提供することになると思う。本格的な協業の成果を世に出すのは、2016年以降になる。
──オリックスは岡本社長の長期政権を望んでいる。 岡本 私も含めて弥生を高く評価して投資してもらっている。それを裏切ることなく期待に応えることが重要だ。私自身、弥生でできることはまだまだたくさんあると思っているので、それがきちんとかたちになるまでは、経営を放り出すべきではないと考えている。
──弥生でなすべきこととは。 岡本 クラウド商材で商業的な結果を出す、そして、ITだけでなく、お客様の業務、事業を幅広くお手伝いする業務サービスを事業として確立する。この二点を実現できなければ、弥生の社長として仕事をしたとはいえないと思っている。
弥生は「成長戦略4段ロケット」というビジョンを掲げている。1段目で消費税改正による需要増をしっかり取り込み、2段目は、この特需を保守サポートの契約増につなげるという計画だったが、ここまではそれなりの成果を収めている。
3段目がクラウド商材の「弥生オンライン」シリーズの成長。2014年は「やよいの白色申告 オンライン」、外部アプリケーションと弥生製品の連携、業務データの自動取込、自動仕訳できる戦略的なサービス「YAYOI SMART CONNECT」、そして「やよいの青色申告 オンライン」を立ち上げた。開発部隊も苦労しながら何とか想定したスケジュール通りに事業を進めてきている。今年は法人対応のクラウド製品も世に出し、これを加速させる。ただし、フルセットの弥生会計をクラウド化するということは考えていない。
そして4段目が業務サービスだが、この部分こそオリックスグループ入りしたことで大きく実現性が増したところ。例えば見積書を出して、受注につながり、決済するという取引の一連の流れをすべて電子的にお手伝いすることも可能だろう。これまでもやりたかったが、決済の部分はどうしても金融の力が必要になる。そのめどが立ち、4段目のロケットが現実味のある計画になったことが大きい。(本多和幸)