ポイントカードやプリペイドカード用ソフトウェアの開発・販売を手がけるレピカ(岩井陽介代表取締役)は、日商エレクトロニクスグループのエヌシーアイが提供するクラウド基盤を採用している。拡張性にすぐれるクラウド基盤を生かして、地方でスーパーマーケットを運営する会社にカード活用を提案し、ビジネス拡大を図る。今回、システムをクラウドに移行することをきっかけとして、顧客データの分析ができる機能をサービスに追加して、データ活用の需要に対応する。
【今回の事例内容】
<導入企業>レピカポイントカードやプリペイドカードに組み込むソフトウェアの開発・販売を手がける。設立は2006年。連結従業員数は87人(2014年12月現在)。東京・港区に本社を置く
<決断した人>鳥居茂樹 執行役員
レピカ事業部技術部の部長を務め、システムの導入を担当した
<課題>オンプレミス型の旧システムは、サーバー費用が高いだけでなく、リソースを拡張しにくいというネックがあった
<対策>システムをクラウド基盤に移行。コストを下げるとともに、拡張しやすい環境を整えた
<効果>サーバー費用を約50%削減。新規顧客の開拓に取り組みやすくなった
<今回の事例から学ぶポイント>カード事業には「サーバー」が欠かせない。クラウドをうまく活用し、ビジネスの改善を図ることが重要だ
サーバーを基盤に事業展開
東京・港区の青山通り。ここに、カード事業のレピカが本社を構える。ガラス張りのエントランスを入ると、カウンターやテーブルが設置され、まるでカフェのようなおしゃれな空間が広がる。ときどき、喫茶店と勘違いして、テーブルに座ると「コーヒーをお願いします」と頼む人がいるそうだ。こんな空間をつくっているのは、レピカのユーザー企業に飲食店が多く、カードの活用シーンをリアルな環境で考えて顧客ニーズにていねいに対応することを目的としているからだろう。レピカが提供するサービスの基盤を成すのはサーバーだ。2014年、オンプレミス型システムの更新時期を迎え、リプレースをきっかけに、クラウドの活用に踏み切った。
レピカは、06年に設立。節約に敏感な消費者が増えていることが後押しして、ポイントカードなどに対する需要が高まり、レピカのカードは現在、飲食店や販売店を中心とする3000店舗以上で使われている。同社は事業が伸びるにつれて必要なサーバーリソースが増大し、旧システムでは柔軟に拡張できないことがネックになっていた。さらに、コスト構造に関して、サーバーの導入や運用にかける費用が大きいことも問題だ。新しいシステムを入れるに際して、何とかコストを下げ、利益の向上につなげることができないだろうか──システム担当の鳥居茂樹・執行役員(=レピカ事業部技術部部長)はそう考え、14年5月、ITベンダーにクラウド活用の提案を依頼した。
ベンダー数社のサービスを検討して、採用を決めたのは、データセンター(DC)運営に強いエヌシーアイが提供するクラウド基盤である。クラウドは、コストや機能の面で各社のサービスが似通っている。そのため、ベンダー側にとって自社サービスの独自性を明確にすることが難しいだけではなく、ユーザー側にとっても、どこのサービスを選べばいいかを判断しにくい。だからこそ、細かな点が採用の決め手になることが多い。
レピカの鳥居執行役員は、エヌシーアイのサービスを選んだ理由をこう語る。
「障害を起こすことなく、システムが円滑に動くという信頼性は当然として、OS(基本ソフト)マイグレーションの最適化ツールが標準で提供されることを評価した。さらに、オプションとしてはDR(ディザスタリカバリ)機能もついているので、将来、DR対策を強化したいと考えている当社にとって、最適だと判断した」。こうして、導入を決め、14年10月にクラウド基盤の本格稼働を開始した。ちなみに、システムをオンプレミスからクラウドに移行することによって、サーバーの導入や運用に必要な費用をおよそ50%下げることができたという。
データ分析機能を追加
レピカがこれから取り組もうとしているのは、地方の開拓だ。地方は、少子化・高齢化が進むにつれて人口が減り、スーパーマーケットの利用者が減少する傾向にある。レピカは、だからこそ地方でスーパーマーケットを運営する企業は顧客を囲い込むために、事前に入金しておけばレジ処理を簡単に済ませることができるプリペイドカードの需要が旺盛と捉え、地方での提案活動に力を入れている。
「古いシステムでは、スケーラビリティに限界があったので、思い切って、新規市場の開拓に取り組むことが難しかった。今はクラウドのおかげで、お客様が増えれば、すぐにリソースの拡張ができるので、ビジネスを伸ばしやすい環境が整っている」(鳥居執行役員)と導入のメリットを語る。
さらに、システムのクラウドへの移行をきっかけに、営業部隊の意見を採り入れて、カードに簡単なデータ分析機能を追加することにした。スーパーマーケットの運営会社に対して、「顧客の購買パターンを分析して品ぞろえに反映することができる」といったことを提案し、カードサービスの販売拡大に結びつけていく。(ゼンフ ミシャ)