ソフトバンク コマース&サービス(ソフトバンク C&S、溝口泰雄社長兼CEO)は、「Marketing Bank」という名称でクラウド型マーケティング関連ツールのプラットフォームを開設した。マーケティング関連ツールの市場が拡大するとの判断から、ツールの検索や選択がしやすいプラットフォームを提供することにした。大手メーカーやベンチャー企業などが開発したツールを、現段階で100種類以上を用意。今後3年間で、ツールとして1000種類を揃え、販売面のビジネスパートナーとして1万社の獲得を目指している。(佐相彰彦)
広告代理店やSIerをパートナーに

黒野源太
グループリーダー Marketing Bankは、ソフトバンク C&Sが1年半ほど前から提供している「ソフトバンク C&Sがおススメするクラウドマーケティング」というウェブページで展開していたサービスを強化したもの。マーケティング関連ツールを提供するベンダーは、ソフトバンク C&Sと契約しないで自社製品の情報を自由に掲載でき、同サイトが提供するCMS(コンテンツマネジメントシステム)を使って情報を変更することも可能だ。
一方、広告代理店などツールを使ってクライアント向けにビジネスを手がける側や、SIerなどツール自体をユーザー企業に販売する側は、ソフトバンク C&Sと販売代理店契約を結ぶことになる。Marketing Bankは、そのプラットフォームというわけだ。
ユーザー企業も対象としている。黒野源太・MD本部クラウドマーケティング推進グループグループリーダーは、「マーケティング担当者の多くは、どのようなツールがあるのか、何を使えばいいのかがわからないというのが実情。マーケティング関連ツールを開発するベンダーの多くが営業力の弱いベンチャー企業だからだ。最適なツールを選ぶための情報が集まるプラットフォームが必要とされている」とニーズを感じている。また、「マーケティング関連ツールを集めたサイトを立ち上げたところ、ユーザー企業から予想以上の反響があった。ある程度の数が集まったので、プラットフォームとして本格的な提供に踏み切った」との経緯を説明する。
ソフトバンク C&Sがビジネスパートナーとして開拓する対象は、「まずは広告代理店。クライアント向けにコンサルティングができることを提案してパートナーシップを組んでいく」としている。また、SIerなどリセラーには「マーケティング担当者がマーケティング力を向上させるための有効なツールを探す手立てがないという事情を踏まえて、一般企業のマーケティング担当者を対象としたソリューションが提供できることを訴える」という。SIerにとっては、自社製品とMarketing Bank内のツールを組み合わせて、新しい領域の製品・サービスが提供できる可能性がある。
なお、今年夏には、オンラインでの購入やライセンス管理を可能にすることに加えて、ビジネスパートナーの情報を掲載する予定である。
市場規模は1300億円に
国内市場では、マーケティング関連ツールが伸びると予測されている。調査会社のIDC Japanは、「データ活用型マーケティング」に必要なテクノロジーとして「顧客インタラクション管理」「コンテンツ管理」「コラボレーション/リソース管理」「データ管理/分析」の四つのIT技術領域に分類、「国内データ活用型マーケティング関連ソフトウェア市場」と称して関連するソフトウェアの市場規模を調査した。調査結果によれば、2014年の国内データ活用型マーケティング関連ソフトウェア市場規模は806億3800万円と分析。2015年以降は、電子商取引(EC)の刷新、デジタルマーケティング需要の増加などが見込まれていて、2014~19年の年平均成長率(CAGR)は10.0%で推移し、2019年に1300億9100万円の市場規模にまで成長すると予測している。
IDC Japanの眞鍋敬・ソフトウェア&セキュリティグループマネージャーは、「ベンダーは、マーケティング活動の変化に合わせたデータ活用型マーケティング製品/サービスの提供、企業規模/産業分野の特性を意識した製品/サービスの訴求、マーケティング関連ツールの購買者へのアプローチ強化が必要」と分析している。
また、IDC Japanでは企業のマーケティング担当者を対象に「マーケティングITに関する企業ユーザー調査」を実施。同調査によると、ユーザー企業のマーケティングIT活用は、「効率化」「分析業務」「売上拡大」が目的であり、従業員規模/産業分野によって要求の強さは異なるという。また、マーケティング業務と既存ITの連携にギャップがあること、2020年に向けたマーケティングIT強化は、「予測分析の強化」「現状分析の強化」が、ほかの項目と比較して高い回答率となり、今後のユーザー企業のマーケティングが分析志向になっていることが確かめられた。IDC Japanでは、このような調査結果を踏まえて国内データ活用型マーケティング関連ソフトウェア市場を定義している。
提供後3年でトップシェアを目指す
こうした調査会社の分析もあって、ソフトバンク C&Sはマーケティング関連ツールの市場拡大を期待している。ソフトバンク C&Sの黒野グループリーダーも、「現在、国内外を含めてマーケティング関連ツールは500種類程度といわれているが、3年後にはその10倍程度に膨れ上がるだろう」と捉えている。そのため、Marketing Bankで用意するツール数を、「3年後には現状の10倍程度にあたる1000種類を見込んでいる」としている。
また、ビジネスパートナーについては現段階で広告代理店を中心に約1200社を獲得している。大手やSOHOなどさまざまだ。今は広告代理店が中心だが、SIerを中心にソフトバンク C&Sから製品・サービスを仕入れている既存の販社は約1万社。「ビジネスパートナーになってもらうため、マーケティング関連ツールを販売するメリットを積極的に訴えていく」としている。これによって、提供開始後3年間で「国内マーケティング関連ツール市場でトップシェアを狙う」と意気込んでいる。
ディストリビュータとしてクラウドサービスの新しい提供形態を創造し続けるソフトバンク C&Sが着手したMarketing Bank。マーケティング関連ツール市場の拡大がこれからという点でも、新しい領域のプラットフォームとして業界で注目を集めそうだ。