【深セン発】華為技術(ファーウェイ、徐直軍・輪番CEO兼取締役副会長)は、2014年度(14年12月期)の通期連結売上高が、過去最高となる前年度比20.6%増の2882億元を記録した。このうち、法人向けビジネスの売上高は、同27.3%増の194億元。徐・輪番CEO兼取締役副会長は、「通信事業者向けビジネスは現在であり、法人向けビジネスは未来」として、2019年度に法人ビジネスの売上高100億米ドルの目標を掲げている。法人ビジネスの販売・マーケティング戦略を統括している孫佳

・IT産品線市場総監に、現在の法人市場でのファーウェイの立ち位置や今後の展開について聞いた。(取材・文/上海支局 真鍋武)
法人ビジネスはパートナー重視
──2014年度は、法人ビジネスの売上高が前年度比で27.3%成長しました。とくに好調だった地域はどこでしょうか。 
孫
IT産品線市場総監 孫 最も成長した地域は中国です。売上高、パートナー数、ユーザー数ともに、著しい成長を遂げています。サーバーやストレージだけでなく、市場がホットなプライベートクラウド向けのソリューションなどを提供していることに加えて、中国のデジタル情報化社会に向けた政策が成長を後押ししています。今年3月には、李克強首相が、インターネットの活用をあらゆる産業に広げる「互聯網+(インターネット+)」構想を打ち出しました。
──昨年から中国では、政府や金融機関を中心に、国産IT製品の導入を推進しているとの報道が相次いでいます。これもファーウェイの成長を加速している一因でしょうか。 孫 まず、中国政府は一切、正式に国産化が望ましいと公表してはいないことをお伝えしておきます。国産化を推進しているという情報は、メーカーないしプロバイダのプロモーション戦略から出てきたものだと考えています。確かに、こうしたプロモーションの結果、国産化は一つのトレンドとなっていて、その影響は否定できません。
ただ、ファーウェイは、売上高の70%を海外から稼ぎ出している企業です。世界のどの地域でも、自らを中国企業ではなく、グローバル企業だと位置づけています。そして、すべての市場がオープンで公平であることを望んでいます。もし、すべての国が、自らの市場を閉鎖的なものとするのであれば、グローバル化は存在し得ません。ユーザーの選択肢が減って、イノベーションを起こせなくなるだけです。
──法人ビジネスでは、パートナー企業との協業を重視した「Being Integrated戦略」を推進しています。パートナー網の整備はうまく進んでいるのでしょうか。 孫 2014年度は、法人ビジネスの売上の74%がパートナー経由によるものでした。グローバルでのパートナー数は6300社を超えました。2013年度は約5400社でしたので、大幅に増えたことになります。
法人ビジネスの基本戦略は、企業の事情を熟知しているパートナー企業と一緒に推進するというもの。ですからファーウェイは今後も、インフラ基盤の上に構築するアプリケーションを自ら提供することはしません。
日本市場は発展段階
──一方で、日本市場では、パートナー企業が約10社と少ない印象を受けます。苦戦しているのでしょうか。 孫 パートナー数が少ないのは、日本市場での法人ビジネスが発展段階にあるからです。特定の地域で業務を推進するためには、たくさんのパートナーを探すよりも、慎重にいくつかのパートナーに絞って、お互いのことを理解し合ったうえで関係を深めていくことが望ましいと考えます。
まずはパートナーを絞って、お互いが利益を捻出できる関係の発展に努める。パートナー数の拡大は、次の段階ですね。例えば、韓国のあるパートナー企業は、昨年、ファーウェイ関連のビジネスだけで、数千万ドルの売上高を得ました。この成功例をみて、他の韓国企業は、ファーウェイとのパートナーシップ構築に興味を示しています。
また、内部評価の観点からすれば、ファーウェイは、パートナーの受注率を重視しています。少ないパートナー数でも、受注率が高いほうがいいという考え方なのです。
とはいえ、APAC地域の法人ビジネスは非常に好調で、とくに韓国と日本は成長しています。パートナー企業との関係は良好で、受注率も高い。日本でも、さらにファーウェイへの理解が進み、パートナーの数が増えると信じています。
7月にパブリッククラウドを発表
──2015年度の法人ビジネスは、どのプロダクトに力を注ぎますか。 孫 現在は、ストレージとクラウドOSに大量の投資を行っています。ストレージは、安定性が重要ですので、技術投資が欠かせません。クラウドOSでは、独自の「Fusion Sphere」を提供していますが、新しい分野の製品なので、従業員は必死に勉強しながら研究・開発を進めています。
また、2015年には、パートナーと共同研究したり、人材育成したりする「Huawei Authorized Information & Network Academy(HAINA)」の設立を予定しています。HAINAを通して、各地域で、ファーウェイ製品をよりパートナー企業に認めてもらえるようになると考えています。具体的な建設地や規模は、今後固めていきますが、日本での設立も視野に入れています。
──さらに今年は、満を持して法人向けパブリッククラウドを発表する予定だとうかがっています。クラウドの基盤には、クラウドOS「Fusion sphere」を採用するのでしょうか。 孫 その通りです。「Fusion Shpere」は、プライベートクラウド基盤や、通信事業者のパブリッククラウド基盤に実績が豊富です。これを自社で使わない手はありません。
詳細については、7月に北京で発表会を開く予定です。一つだけ確かなことは、必ず実行するということ。ファーウェイは、お客様へのコミットメントをとても大事にしています。過去20年にわたって通信事情者向けネットワーク事業で成長してこられたのは、コミットメントがあったからだと考えています。