シスコシステムズ(シスコ)が、中小企業向けネットワ-ク機器市場の本格攻略に乗り出した。日本の中小企業をタ-ゲットとする専用ブランド「Cisco Start」を立ち上げ、開発段階からダイワボウ情報システム(DIS)の協力を得たというVPNル-タの新製品を発売した。パ-トナ-連携を強化するとともにECサイトでの販売も導入するなど、販路拡大にも力を入れる。(日高彰)

ダイワボウ情報システム
松本裕之
取締役 新たに発表されたCisco Startは、従業員数100人以下の組織を対象にした製品に冠される日本市場専用ブランド。第一弾製品の小型ルータ「Cisco 841M J」シリーズは、グローバル製品のCisco 800Mシリーズをベースとして、GUIをフルに日本語化したほか、3G/LTEモデムを追加できるUSBポートを装備するなど、日本市場向けのカスタマイズが加えられている。DISでは最小構成モデルの市場想定価格を4万円としているが、これは2年間の保守込みの価格であり、シスコ製品としては戦略的な低価格モデルとなっている。DISの全国約1万9000社のパートナー網および、NTTレゾナントのECサイト「NTT-X Store」を通じて販売し、初年度出荷台数は1万5000台を目標としている。
シスコはこれまでも中小企業向けの機種を用意していたが、海外製品をそのままもち込んでいたため、国内では目立った販売実績を挙げられていなかった。今回は、シスコ日本法人から本社へ要求を出して開発した機種であり、ユーザーインターフェースの日本語化とサポートの充実が最大のポイントとなっている。製品および提供形態の設計にあたっては、DISが全面協力した。DISの松本裕之・取締役販売推進本部長は、シスコ側に最も強く求めたのが「サービスの受けやすさを確立してほしい」という点だったと説明し、従来のシスコ製品では保守が別契約になっており、契約手続きも煩雑だったのに対し、Cisco Startはサポート込みのパッケージ製品である点を大きな違いとしている。

シスコシステムズ
鎌田道子
執行役員 両社がこのタイミングで、中小企業向けのルータに注力するのは、スマートフォンやタブレット端末などの業務利用が中小企業にも広がっているからだ。これまではスマートフォンで会社のメールをみるといった用途にとどまっていたのに対し、モバイル機器の存在があたりまえになったことで、タブレット端末から社内の業務システムにもアクセスしたいといった要求が高まっている。シスコの鎌田道子・執行役員ジャパンマーケティング本部本部長は「マイナンバー制度導入や相次ぐセキュリティ事故の発生などで、中小企業の要求が大企業に似てきている」とし、高度なセキュリティ機能をもつシスコ製品が中小企業からも求められる時代になったと説明する。
ルータ以外のスイッチや無線アクセスポイントについては、当面は既存のエントリーモデルをCisco Startブランド製品として提供するが、シスコでは新機種の開発も行っており、年末までにCisco Start向けに開発した無線アクセスポイントを発表する予定。またDISでは、ルータ単体に加え、スイッチや無線LANも含めたパッケージ製品を「Cisco Startパック」の名称で提供するとしている。

日本市場専用に開発した「Cisco 841M J」