【今回の事例内容】
<導入企業>白鶴酒造1743年(寛保3年)の創業以来、酒造りひとすじに歩む白鶴酒造。「時をこえ 親しみの心をおくる」をスローガンとして、食文化・生活文化の発展に努めている
<決断した人>松永將義 生産本部部長(写真右)、
勝部一郎 情報システム室主任
松永部長は業務改革を推進し、勝部主任はグループウェアの選定から導入までを担当した
<課題>営業日誌を紙で運用していたため、情報の流通スピードが遅い、簡単に作成できないなどの課題を抱えていた
<対策>グループウェアのリプレースによって、営業日誌をデジタル化。モバイル対応によって、いつでもどこからでも営業日誌の作成を可能にした
<効果>ワークフロー機能を使うことで運用スピードが向上し、情報共有も容易に。若手営業担当者からは、スマートフォンでも営業日誌が作成でき、即時展開できると好評
<今回の事例から学ぶポイント>デジタル化の推進が、業務フローの見直しと情報共有を最適化する手がかりとなる
非効率な業務を社内公募
1743年(寛保3年)創業の白鶴酒造。明治33年のパリ万国博覧会では、瓶詰酒を出品するなど、早くから海外に向けて情報を発信し、日本酒のグローバル化に取り組んできている。国内においても、「白鶴」や「まる」といった日本酒ブランドの知名度を生かし、札幌から福岡まで、支社や支店、営業所を展開している。
企業にとって伝統の力は強みとなるが、逆に現場での甘えにつながりかねない。継続的な業務改善は不可欠である。
約2年前、経営企画室で社内の業務改善に取り組むことになった松永部長は、経営側からテレビ会議システムの導入を打診されていた。全国の拠点から担当者が会議のために集まるため、膨大なコストがかかっていたからだ。拠点によっては、会議のために1日以上を費やすことになる。その分、業務が停滞してしまう。
そこで、テレビ会議システムの導入を進めたが、松永部長の業務改善に向けた気持ちは満たされなかった。さらなる改善を求め、経営企画室で社内に呼びかけたところ、非効率と思われる業務がいくつか上がってきた。その一つが、営業日誌だった。

ホームページ上ではお酒と料理の相性なども紹介している紙で運用していた営業日誌
白鶴酒造では、営業担当者が作成する営業日誌を紙で運用していた。紙を使うことから、営業担当者は営業日誌のために、外出先から事務所に戻らなければならない。また、決裁者が多く、上司、支店長などを経て、ようやく本社に届くというフローになるため、最終決裁者が判を押すまでに時間がかかっていた。決裁のフローが終了するまで、日誌の内容を他部門では閲覧できないという問題もあった。
「営業日誌は、営業担当者の活動を遮っていると思えるほどの負担だった。また、紙だったため、検索ができないという不便さもあって、あまり活用されていなかった」と、松永部長は当時の問題点を挙げる。
ただ、営業日誌の情報は必要とされていた。というのも、全国にチェーン展開する取引相手が、例えば九州の商談情報を北海道の店舗でも把握しているといったように、情報のすばやい横展開ができていたからだ。白鶴酒造としても遅れをとるわけにはいかない。それには、営業日誌のデジタル化が不可欠だった。
グループウェアで解決
営業日誌のデジタル化に有効なツールとして、松永部長はグループウェアを候補とした。いくつかのグループウェアを検討していくなかで、ポイントとしたのは、現場が使いやすいと思うツールを選ぶことだった。
「システム展開を考慮して、現場で使ってもらえないと宝のもち腐れになってしまうので、使いやすさを最優先にした」と松永部長。経営企画室から情報システム室に要望した。そのなかで有力候補となったのがサイボウズのグループウェア「サイボウズ ガルーン4」とウェブデータベースシステム「サイボウズ デヂエ」だった。
「若手の営業担当者を中心に試用してもらったところ、使いやすさでガルーンの評価が最も高かった」と、グループウェアの選択と導入の推進を担当した勝部一郎・情報システム室主任は語る。スマートフォンなどのモバイル対応がしっかりしている点も、大きなポイントとなった。
「自分にはなかなか理解できないが、若い営業担当者はスマートフォンだけで営業日誌を書いている。PCよりも早いらしい」と、松永部長は驚いている。スマートフォンは場所を選ばないため、営業担当者が事務所に戻って日誌を書く必要がなくなった。
運用フローも変えた。「営業日誌の情報共有をスムーズにするために、上司などの決裁を待たずに内容を公開するようにした」(松永部長)。当初は役職者の決裁を待たずに公開することに反対の声もあったが、メリットを説明して説得した。営業日誌の情報活用においては、組織がフラットになったのである。
2014年の導入から約1年、現在では「情報の鮮度がまったく違う」と現場の評価は高いという。運用が軌道に乗ったため、今後は他の書類に関してもガルーン上で運用していくことを予定している。(畔上文昭)