ヒューレット・パッカードと、無線LANアクセスポイントを手がけるアルバネットワークスの事業統合が完了した。これまでイーサネットスイッチが中心だったヒューレット・パッカードのネットワーク事業に、ワイヤレス製品が加わる格好だが、ねらいは単なるポートフォリオ拡充ではなく、事業そのものを「モバイルファースト」化していくことにある。(日高彰)

日本ヒューレット・パッカード
田中泰光
本部長 米ヒューレット・パッカードは昨年3月、30億ドルを投じて米アルバネットワークス(アルバ)を買収することを発表していたが、その手続きを昨年秋までに完了し、現在、米アルバは米ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)の事業子会社になっている。
これに伴い、両社は日本国内でも事業を統合し、アルバ日本法人の社員が今年1月1日付けで日本ヒューレット・パッカードの社員になるとともに、アルバ日本法人のカントリージェネラルマネージャーとして国内事業の総責任者を務めていた田中泰光氏が、日本ヒューレット・パッカードのネットワーク事業統括本部長に就任した。
HPEのネットワーク事業は、エッジ向けスイッチと、2010年の3Com買収で手に入れたデータセンター向けスイッチが中心で、競合のシスコシステムズなどが手がける無線LAN製品は扱ってこなかった。業務におけるモバイル端末の普及でオフィスのネットワークは無線化が進むが、HPEはアルバの買収でデータセンターから各拠点の末端までエンド・ツー・エンドでネットワーク製品を提供できるようになる。
ただし、HPEはアルバを買収した目的について、単に製品ポートフォリオの穴を埋めるためのものではなく、これからのITインフラの姿を見越した戦略的な投資であるという姿勢を強調している。今後の新製品では、スイッチなど有線ネットワークの機器にも「Aruba」ブランドを冠していく方針で、企業ネットワークのアーキテクチャを「モバイルファースト」に変えていく考えだ。
具体的には、アルバの統合認証基盤「Clear Pass」など、有線と無線両方のネットワークを統合的に管理し、セキュリティを確保できる技術が武器になる。従来、企業のネットワークには管理されたサーバーやPCだけがつながっていたが、現在では端末の種類、利用される場所、接続元の回線などが多様化しており、状況に応じて適切にアクセス権をコントロールする必要がある。そのため、従来のITインフラに積み上げるかたちでモバイル対応を図っていくのではなく、モバイル利用を前提とした管理や認証の基盤が必要というのがHPEとアルバの主張だ。
米アルバのシニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャー、ドミニク・オー氏は「セキュリティ、スケーラビリティ、マルチベンダー対応という3要素を同時に実現できる製品はアルバにしかない」と話し、アクセスポイント1台だけの環境から、複数ベンダーの機器が有線/無線で混在する大規模ネットワークまで、単一のアーキテクチャで高いセキュリティを実現できるのがアルバ製品の強みだと説明する。
田中本部長は、「(アルバ時代は)営業で無線アクセスポイントしか提案できなくてもったいなかった。今後はHPEのネットワーク製品と一緒に販売し、有線と無線を統合したアーキテクチャを提供できる会社になれる」と話しており、新体制で事業規模を大きく拡大できると見通す。また、アルバ製品は企業の研究開発部門や大学など、先進的な技術に関心の高い組織からの評価がとくに高いという。国内でも、従来のアルバのオフィスは今後も検証拠点として活用するなど、大企業にありながら技術ベンチャーの気風を残すことにも努めていく。