「世界の工場」から「世界の市場」へと変貌を遂げつつある中国。日系ITベンダーは、どのようにビジネスを拡大しようとしているのか。現地のキーパーソンに、これまでの進捗状況や現在の市況感、今後の戦略を聞いた。(構成:真鍋 武)
維傑思科技(杭州)
ヴィンクス
瀧澤 隆 董事長総裁
生年 1955年
出身 東京都
●中国の成長市場とつき合う 日本向けオフショア開発は縮小しているが、中国国内ビジネスは2ケタ成長しており、全体の売上高は着実に伸びている。直近では、元で稼ぐ売上比率が6割方にまで拡大している。
中国国内では、流通・小売業をターゲットとしているが、主要顧客のイオンが中国でモールの開業ラッシュを進めており、当社の事業拡大に貢献していただいている。最近では、ローカル企業の開拓にもチャレンジしており、中国に数百店舗を構えるドラッグストアチェーンからの案件も受注した。
ローカルビジネスでは、基幹系などのシステム構築だけでなく、チェーン店舗の展開の仕方や、社内の運用・ルールづくりなどを含めたコンサルティングの段階から支援している。中国では、ECが急速に発展したために、リアル店舗の発展が遅れている。単にシステムを導入しただけでは、上手くいかないケースがあるのだ。こうしたコンサルティングを手がけるには、小売業の現場を熟知する必要があるが、日本で豊富な経験・ノウハウをもつ当社にはそれができる。日系企業であることが一つの強みになっているのだ。
小売業向けビジネスは、製造業や金融業と比べてIT投資額が大きくないために、やりたがらないIT企業が多い。しかし、中国の小売業は発展途上にあり開拓余地が大きい。中国のGDP成長率は7%を割れたが、小売業は2ケタ成長を維持している。当社の15年度売上高は約13億円だったが、5年後には売上高50億円を目指す。成長市場とつき合っていくのが当社の戦略だ。
北京ヘルステック医療情報技術
(テクマトリックス40%出資の合弁会社)
高橋正行 副総経理
生年 1966年
出身 神奈川県
●遠隔医療システムを本格展開 2015年8月に、テクマトリックスと医療サービス事業を手がける中国企業との合弁会社として当社が誕生した。テクマトリックスにとっては、初の中国グループ会社となる。進出の目的は、遠隔医療システムの販売だ。中国では、日本と同様に放射線科や病理科の専門医が不足している。また、都市部と地方との間で医療格差が大きいなど、遠隔医療の需要が高まっている。
これまでは、中国で遠隔医療画像診断システム「iCOMBOX」を提供するための中国語対応などのローカライズを進めてきた。テクマトリックス子会社の医知悟が開発したシステムで、Linuxサーバー上にPACS(医療画像管理システム)を搭載したアプライアンス製品だ。依頼拠点と読影拠点に同製品を設置し、中継サーバーを通して医療画像を送受信することで、遠隔地にいる専門医による読影・診断を実現する。
設置場所を選ばない小型のアプライアンス製品なので、病院や事務所だけでなく、専門医の自宅に設置でき、忙しい医師にとって扱いやすい。また、医療画像はデータ容量が大きいうえに、大量の枚数を読影することが多いが、iCOMBOXは手元にデータが残るので、クラウドサービスと違って、医療画像を都度読み込む必要がない。
16年は、本格的にiCOMBOXを販売していく年となる。直販と間接販売の双方を検討しており、中国国内の医療機関と提携関係を結んでいる合弁相手のコネクションも活用していく。17年度に合弁会社の単年度黒字を目指す。
備実必(上海)軟件科技
ユニリタ
巴音都仁 総経理
生年 1964年
出身 内モンゴル自治区オルドス市
●現地企業と協業でローカル開拓 中国国内でのパッケージソフト販売を主要事業としている。日系企業だけをターゲットとしているのでは成長余地が限られるため、2015年には本格的なローカル市場の開拓を開始した。
ローカルビジネスで重要視しているのは、現地のIT企業との協業だ。当初は、代理店契約を結んだ現地SIerを通しての販売を試みたが、代理店からは案件があるときだけ注文がくるケースが多く、積極的に営業してくれるわけでない。そこで現在は、相手先ブランド名で自社ソフトウェアを提供するOEM供給や、パートナーの製品と組み合わせて提供するバンドル提供型での協業に舵を切った。
例えば、BIツールベンダーの協業先には、当社のETLソフト「Waha! Transformer」をOEM供給している。パートナーは自社ブランドとしてWaha! Transformerを営業してくれて、当社はパートナーの技術者を育成するだけでよい。手間がかからないうえにリスクも抑えられる。この協業を通して数件の受注が確定しており、現在も数十件の見込み案件を抱えている。
今後は自社製品をもつ企業との協業を加速させ、5社程度の現地パートナーを獲得したい。また、Waha! Transformerのクラウド版を提供するなどして、より広域で製品を提供できる体制を整える。16年度の売上高は前年度比で同等の計画だが、内訳は大きく変わり、ソフトウェアのライセンス販売で85%を賄う予定だ。一方、15年に大きなウエイトを占めていたシステム開発は、パートナーへの委託を進める。
上海鴎新軟件
ムロオシステムズ
潘忠信 董事長
生年 1975年
出身 浙江省温州市
●生まれ変わる 日本向けのオフショア開発事業を停止し、中国国内でのソリューション提供を専業とする企業に生まれ変わった。売り上げが伸びないからといって、日本から案件をもってくる姿勢ではいけない。背水の陣で中国市場を開拓する。
当社は、日本で流通・物流パッケージを有しており、同業種への経験・ノウハウがある。これと中国拠点の技術力を組み合わせて、Wi-Fiを活用したショッピングモール向けの客流解析ソリューションを開発した。昨年に提案を始めて、少しずつ案件が入ってきている。ただし、中国のショッピングモール市場に客流解析を投入するには、少し時期が早かったようで、当初予想していたよりも進捗は遅い。このビジネスは長い目で育てていく。
そこで、その間はIoT(Internet of Things)ビジネスで成長を図る。現地の製造業と技術提携を結び、パートナーが提供するIoT機器のモジュール開発やアプリ開発を支援する。すでに、中国資本の床暖房メーカーと手を結んだ。中国の伝統的な製造業は、ITの技術・ノウハウをもっていないケースが多く、IT企業の力を借りたいというニーズがある。当社とWin-Winの関係を構築しやすい。今後は、1商品ジャンルにつき1社の製造業と協業を進めていく。現在も床暖房メーカー以外の製造業との契約を進めている。
2016年度の売上高は、前年比倍増を計画している。ローカル企業を開拓するため、現地の資本と手を組むことも進める。また、今後2年で新三板(中国の中小企業向け店頭市場)に上場したい。