建築材料・住宅設備機器メーカーの5社が統合して誕生したLIXILは、IT化を図って統合効果を発揮することに余念がない。グローバルで通用する企業として成長するために掲げた「One LIXIL」というビジョンのもと、基幹システムを中心に刷新して業務の標準化を図る「L-Oneプロジェクト」を進めており、その一環でバックアップソフトを導入。データを収集して、いつでも取り出せる仕組みの構築で、法令遵守(コンプライアンス)やコスト削減などにつながった。
【今回の事例内容】
<導入企業>LIXILLIXILは、国内の主要な建築材料・住宅設備機器メーカー5社が統合して2011年4月に設立。国内だけでなく、欧米やアジア、ASEANでもビジネスを展開している
<決断した人>小和瀬浩之 CIO
花王で20年以上にわたってシステム関連業務に携わり、2014年1月にLIXILに入社、CIOとして手腕を振るう
<課題>システム刷新のなかで、コンプライアンスに向けてバックアップソフトを検討
<対策>ベリタステクノロジーズのバックアップソフト「Veritas EnterpriseVault .cloud」を導入
<効果>コンプライアンスを実現しているかどうかの可視化やコスト削減を実現
<今回の事例から学ぶポイント>迅速にグローバル化を図るうえで、基本的に現場が使いやすいパッケージの導入がカギ
「L-Oneプロジェクト」が稼働
INAX、サンウエーブ工業、新日軽、東洋エクステリア、トステムの5社が統合して、2011年4月に設立したLIXIL。住宅サッシ類やバスルーム、カーテンなど、さまざまな建築材料・住宅設備機器でトップシェアを誇っていて、日本市場で圧倒的な存在感を示している。傘下に販売や生産、メンテナンス、サービスなどを担うさまざまな子会社を数多く有し、世界で約150以上の国や地域でビジネスを手がけており、グローバルカンパニーとしても頭角をあらわそうとしている。LIXILグループ最大の事業会社だ。
LIXILがグローバルで通用する企業として成長するために力を入れているのはIT化だ。住まいに関するさまざまな製品・サービスを一人ひとりの生活者に合わせて提供できるという総合力をグローバルで展開するために、コアやノンコアに限らず業務の標準化を模索。そのために設立当初から基幹システムをはじめとして、大幅な刷新に取り組んできたが、主要メーカー5社が統合したことによる企業文化の違い、さまざまな国や地域に支社や支店、子会社があることなどから、思うようにIT化が進まなかった。そうしたなか14年1月、CIOに小和瀬浩之氏が抜擢された。化粧品や洗剤などで知られる大手メーカーの花王で20年以上のキャリアをもち、IT関連の責任者だった人物だ。その小和瀬CIOに課されたミッションが「グローバルなOne LIXILの実現に向けたIT基盤の構築」。L-Oneプロジェクトの推進に取り組むことになった。
パッケージの導入が最も効率的
設立当初に社長だった藤森義明氏(現会長兼CEO)のヘッドハンティングによってLIXIL入りした小和瀬CIOが入社して感じたことは、「メインフレームを導入している。何としてでもドライブをかけてIT化を進めていきたい」ということだった。まずは、基幹システムの実績管理の部分でSAPを導入。小和瀬CIOは、「標準化を目指すうえで、とくにノンコア業務の部分ではパッケージが最も望ましい」とし、ほかの業務でもパッケージを採用している。例えば、商品開発でPTCジャパンの「Windchill」、サプライチェーンの生産計画でKinaxisの「Rapid Response」、経費精算で「Concur」などだ。
ノンコア業務にはパッケージを導入してシステム刷新を進めるという流れのなかで、コンプライアンスに向けてメールのアーカイブを検討。ベリタステクノロジーズのバックアップソフト「Veritas EnterpriseVault .cloud」を選択した。これにより、1か月平均で1500万通におよぶメールを保管してコンプライアンスを実現しているかどうかを可視化できたほか、メールの検索所要時間が平均1秒以下となって、情報保護法や訴訟の発生などでメールを早く提出しなければならない状況にも対応が可能となった。小和瀬CIOは、「昨年秋に導入し、契約後7か月が経過した今年1月の時点で1億通のメール、約33TBのデータを保管しているが、グループ全体で活用するというグローバルでの仕様統合によってコスト削減を果たしている」と満足げだ。
現場を納得させることがカギ
LIXILでは、11年の時点で400億~500億円だった海外の売り上げが現段階で7000億円規模にまで膨れ上がっている。これもノンコア業務の標準化に向けたIT化が大きく寄与している。小和瀬CIOは、「パッケージは他社が活用しているケースを参考にしながら、自社で最適に活用する方法を迅速に見出せる」と訴える。一方で、パッケージの導入によって現場がシステムを有効活用しづらい環境になる可能性もある。この問題については、「全体最適化という観点で、現場の声を聞いて上手くいくのかということを考えなければならない。現場を抑えることも必要。そのためには、現場を納得させるパッケージを選び、そのパッケージを上手く使える仕組みの構築が重要」という。
もちろん、他社との差異化を図るために「独自のノウハウを入れ込んだ『手づくり』の導入も進めている」。L-Oneプロジェクトが実現すれば、「1年間あたり200億円のコストが削減できる」と小和瀬CIOは断言する。(佐相彰彦)