企業のソーシャルメディアの活用支援や、オウンドメディアの構築・運営、ウェブサイトの制作・運用などを手がけているメンバーズ(剣持忠社長)。製造業や金融業などを中心に幅広い業界の企業を対象として、顧客のマーケティング活動を支援してきた。メンバーズでは、顧客から信頼される企業であるために、厳格なセキュリティ対策をとってきていたが、厳格すぎるために業務を行ううえで支障が生じていた。
【今回の事例内容】
<導入企業>メンバーズ1995年設立。ウェブサイトやオウンドメディアの構築・運用、ソーシャルメディアの活用支援など、インターネット上における企業のマーケティング支援事業を手がける
<決断した人>樋口康祐
コーポレートサービスディビジョン情報システムグループ
スペシャリスト社内インフラの整備や、社員の働き方に対する提案を行う
<課題>社内PCの厳格な持ち出しルールによって、セキュリティを担保する一方、社員の業務に支障が生じていた
<対策>双日システムズのシンクライアントソリューション「ThinBoot PLUS」を導入
<効果>業務効率がよくなるとともに、セキュリティに対する社員の心理的負担を軽減
<今回の事例から学ぶポイント>ふだん使用する業務端末にデータを置かないことで、社外で安全に業務を行うことができ、さらにそれが働き方を見直すことにもつながる
ルールの厳重さが課題に
メンバーズは、「日本一セキュリティ意識の高いウェブ制作会社」となることを社長方針として掲げている。顧客からの信頼を勝ち取るために、さまざまなセキュリティソフトを導入して徹底した情報セキュリティ対策をとることにくわえ、厳格な社内ルールを設けていた。例えば、「PCを使うときはワイヤーで固定しなければならない。ノートPCを社外に持ち出す際には、都度、ワークフローで事前に上長と内部監査室に申請し、承認を得る必要があるうえ、持ち出したPCを携えて食事などに行くことや、電車の網棚にPCの入った荷物を置くことなども禁止し、肌身離さず持っていなければならない。」(樋口康祐・コーポレートサービスディビジョン 情報システムグループ スペシャリスト)など。顧客情報を含む重要なデータを守るために、万全を期していた。
確かにセキュリティの安全は担保できるものの、これではふだんの業務に差支えてしまう。営業担当者の外出も多かったため、従来のセキュリティ対策を見直し、データを端末に残さないシンクライアントを検討。はじめはVDI(仮想デスクトップ)で検討したが、初期投資が大きく、検証段階で試したものは業務に必要なソフトウェアが動かないなどの問題があり、採用には至らず。代わりになるものを探していたとき、ウェブ上でみつけたのが、双日システムズが提供する、USBデバイスを挿すことで既存のPCを簡易VDIとして利用できるという「SASTIK III Thin-Client Apps」だった。当初はこれを検討したが、「同時に提案を受けた『ThinBoot PLUS』の動作が軽く、必須のソフトウェアも利用できた」(樋口スペシャリスト)と、ThinBoot PLUSの導入を決断した。
PCの持ち出しが自由に
ThinBoot PLUSは、アプリケーションやデータをファイルサーバーに集約し、仮想化したアプリケーションを端末にストリーミングで配信するシンクライアントソリューション。既存のファイルサーバーを活用できるため、導入にかかるコストを抑えられることが特徴。メンバーズでは、「サーバー側で画面を端末に転送するVDIと比べ、ThinBoot PLUSは普通にPCを使う感覚の早さで、しっかりと動く」(樋口スペシャリスト)ことを評価。まずはスモールスタートで30台を先行導入し、経営層や外出の多い営業担当者に配布した。
ThinBoot PLUSの導入後は、これまでの厳格なPC持ち出しルールは解消。PCの持ち出しが自由になり、PCを持ったまま食事に行くことも可能で業務の自由度が上がった。また、「これまでは持ち出しルールが厳格すぎたため、PCを社外に持ち出す社員にとって、PCを紛失することに対する不安が大きかったと思う。シンクライアントでは端末にデータを残さないため情報漏えいのリスクが低く、社員の心理的負担がかなり軽くなった」と、単にデータを守る以外のところでも社員に与える効果は大きい。とはいえ、ThinBoot PLUSの導入数には、現状、限りがあり、自由にPCを持ち出せることによる恩恵を得られるのはまだ一部の社員のみ。「ThinBoot PLUSの端末を待っている人が大勢いる」と、従来のノートPCを使っている社員は待望のようすで、「2016年度(17年3月期)中には300台導入し、ノートPCを使う社員全員にいきわたるようにしたい」(樋口スペシャリスト)と、全社での利用に向け導入を拡大していく方針を示している。
在宅勤務制度を促進
ほかにも、ThinBoot PLUSの導入により、セキュリティ対策のために投資してきた多額の費用を抑えることにつながるなど、コスト面でもメリットを享受している。
また、社外から安全に社内のネットワークにアクセスし、ふだんの業務ができるようになったため、子育て支援や介護支援の一環として、在宅勤務制度を促進することにもつながった。「当社では女性社員の産後復帰率が高い。これまでも、時短勤務制度などを設けており、とくにフルタイムでの勤務を希望する社員に対しては、自宅用にデスクトップPCを貸し出すなどの措置を採っていた。しかし、貸し出す人数が増えると貸し出す台数も増え、制度が運用しづらくなってくる。それなら日常使用している業務端末を持ち帰ればいいのでは」(樋口スペシャリスト)と、在宅勤務を促進する意味においてもシンクライアント端末が求められているといい、ThinBoot PLUSの全社導入を急いでいる。(前田幸慧)