東洋ビジネスエンジニアリング(B-EN-G)がASEAN地域のビジネスを成長させることができた要因としては、ユーザー企業をきめ細かくサポートできる現地パートナー企業とのアライアンスを地道に拡大してきたことも大きい。同地域のビジネス環境が転換期を迎えるなか、B-EN-Gのパートナー戦略や、パートナー自身のビジネスのあり方はどう変わっていくのだろうか。
ASEANに14社のパートナー
現在、B-EN-GのASEANビジネスでは、Toyo Business Engineering(Thailand)(B-EN-Gタイ)をはじめとする現地法人3社と14社のパートナー企業によって、導入コンサル、構築から運用、サポートまで、網羅的な製品・サービス提供の体制を整えている。
タイでITビジネスに携わる関係者からは、「日系企業のIT投資では、新しいシステムがそもそもカットオーバーに至らず頓挫してしまうプロジェクトも少なくない」という声が聞かれる。当然、こうした情報が公表されることはほとんどないわけだが、B-EN-Gはその種のトラブルとは無縁で、際だって高い信頼をマーケットから得ているという。B-EN-Gタイの渡邉祐一・ゼネラルマネージャー/ディレクターは、「生産・販売・原価管理パッケージ『MCFrame』にしろ、海外現地法人向けのERPパッケージ『A.S.I.A.』にしろ、お客様の要件に合わせたかたちできちんと稼働させるのはあたりまえの話。信頼できるパートナーとのネットワークを構築し、システムをしっかり使って成果を出していただくまでサポートできる体制を整備していることが、当社のASEANビジネスで何よりの強みになっている」と話す。

左から、MATの平川貴士・ディレクター、児玉秀郷社長CEO、吉田誠・上級副社長
長い協業の歴史をもつMAT
パートナーのなかでも、B-EN-Gととりわけ長い協業関係にあり、現在でも密接に連携しているのが、Material Automation(Thailand)(MAT)だ。
MATの創業は、なんと1991年に遡る。特徴的なのは、バンコクに本社を置く完全なタイ企業のSIerでありながら、創業者は日本人で、日系企業の大きな信頼を獲得している点だ。B-EN-Gタイの前身といえるAsian Partners Asia Pacific(Bangkok)の設立(連載第1回参照)に合弁で参加しており、2008年にMCFrameの、2010年にA.S.I.A.の正規販売店となった。B-EN-Gタイは、現在でもB-EN-Gと同社の合弁企業だ。2014年1月には、キヤノンITソリューションズがタイ法人と共同でMATを買収したため、現在、MATはキヤノンITソリューションズのグループ会社になっている。
社員数は200人弱で、日本人スタッフは30人に満たず、その日本人スタッフも、キヤノンITソリューションズから出向している幹部以外は、現地採用の人材だ。キヤノンITソリューションズのタイ法人社長も兼務する児玉秀郷社長CEOは、「現地採用でタイ語に精通した人材が一番の戦力になる。彼らに、(親会社である)キヤノンMJグループのマネジメント研修を受けてもらうなど、当社グループの人材育成ノウハウも活用し、さらに強い会社にしていきたい」と話す。
ただし、目下の経営状況をみると、2015年は前年比で売上高はほぼ横ばい。児玉社長CEOも、「苦しい年だった」と漏らす。「IT、ネットワークの基盤をワンストップで提供できるのが当社の強みだが、まさにその部分の投資が様子見の状態」だと感じている。
だからこそ、MCFrameやA.S.I.A.の販売には、注力していくという。平川貴士・ディレクターは、「基盤のうえで展開する業務アプリケーションは、SIerにとって、お客様にリーチするきっかけにもなるし、既存のお客様との関係を進化させてもくれる重要な商材。結果的に、ハードウェア購入のリピートにつながるケースも多い」と話す。
一方で、最近では、MCFrame、A.S.I.A.のようなバックエンド系パッケージだけでなく、フロント系商材の取り扱いも強化している。すでに、サイボウズの大企業向けグループウェア「Garoon」の納入では30件以上の実績があるが、昨年10月、サイボウズと「Cybozu Asia Partnership Program」契約を結び、CRMやSFAのスピーディな構築に定評のあるPaaS「kintone」の拡販にも本格的に注力していく方針を明らかにした。「工場だけでなく、一般オフィス向けの提案を強化できるのは大きく、基幹系パッケージとの相乗効果も期待できる」(吉田誠・上級副社長)として、現地企業のITニーズに、より網羅的に応えていくことで、継続的な成長を実現していく考えだ。中長期的な目標としては、売上高を「現在の20億円規模から5年後には50億円まで引き上げたい」(児玉社長CEO)と、意欲的な数字を掲げている。