ソニーマーケティング(河野弘社長)が、液晶テレビ「ブラビア」の法人向け提案を本格化する。家電市場では高画質のテレビとして知られるブラビアだが、デジタルサイネージなどの用途に適用すると、画質に加えてコストや運用面でも優位性が発揮できるという。高級感のあるブラビアで低コストを実現できる秘密は、「STBレス」「HTML5対応」という特徴にあった。(日高 彰)
ソニーマーケティングでは、昨年6月からデジタルサイネージ市場に向けたブラビアの提案を開始。今年度は法人営業本部のなかに「ブラビアB2Bビジネス部」を設置し、法人向けの拡販・需要開拓に取り組んでいる。デジタルサイネージのほか、ホテルの客室、企業の会議室、防犯・セキュリティ用途などを主なターゲットとしているが、製品自体はコンシューマ向けと同じ機種を採用している。従来サイネージ用途で用いられていた業務用ディスプレイに比べ圧倒的に生産台数の多い民生品を活用することで、1台あたりの価格を抑えるとともに、32型から75型まで幅広い機種から選択可能としている。また、通常1年のメーカー保証の延長など、法人が民生機を安心して導入するためのオプションサービスを提供している。
サイネージ用途での大きな差異化ポイントとなるのが、ブラビアが直接ネットワークに接続し、HTML5コンテンツを表示する機能の搭載だ。従来のサイネージシステムでは、ディスプレイのかたわらにPCやSTB(セットトップボックス)が必要だったが、ブラビアを用いたシステムでは、コンテンツの配信や機器の管理に必要なのはウェブサーバーのみで、ブラビアにはLANケーブルを接続するだけでよい。
最近のテレビの多くはネットワーク接続機能を搭載しているが、ブラビアではウェブのプロトコルを利用して電源やチャンネルの制御も可能なのが特徴で、専用のコントロールシステムなしで遠隔運用を行うことができる。結果として構成がシンプルになり、導入・運用のトータルコストは安くなる。同社法人営業本部 BRAVIA B2Bビジネス部の樺山拓・統括部長は、「従来の多機能なサイネージ機器は高価だった。民生用テレビを利用した低コストなサイネージ製品もあったが、ネットワーク機能や拡張性に乏しかった」と話し、ウェブ技術と民生品の組み合わせによって高画質・高機能と低コストを両立した点を強調する。

法人営業本部 BRAVIA B2Bビジネス部の樺山 拓・統括部長(右)と
山下昌利・マーケティングマネジャー
導入シーンとしては、小売・飲食店での販促用途のほか、病院や公共施設などで待合所用のテレビとして設置し、画面の隅に呼び出し番号などを表示する、ホテル客室のテレビにメッセージや観光情報を表示するといったものを想定している。BRAVIA B2Bビジネス部の山下昌利・マーケティングマネジャーは、「ウェブベースのコンテンツやアプリケーションを開発している事業者と組んで展開を図っていく」と販売方針を説明。第一弾として、ウェブアプリケーション開発のニューフォリアがブラビア向けに開発したシステムが、NTTアイティのネットワーク型サイネージサービス「ひかりサイネージ」に採用されたという。
また、画像や動画、文書などを保存したUSBメモリをブラビアに差し込むと、それらのデータを即座にスライドショーにする機能も搭載している。簡易的なコンテンツであれば店舗従業員がPC上で作成し、USBメモリを利用したスタンドアロン運用が可能だ。法人顧客をもつ地場のソニー特約店も販路とし、中小規模の店舗や施設にも幅広く提案を図る。