【上海発】中国IT大手の神州数碼(デジタルチャイナ)の事業再編が完了した。香港株式市場上場の神州数碼控股(デジタルチャイナホールディングス)は、ディストリビューション事業子会社を深・市深信泰豊(集団)に売却し、クラウド・ビッグデータなどのITサービスを手がけるインターネットサービス企業に転換した。一方、売却されたディストリビューション事業子会社は深信泰豊と一体化し、同社が4月25日に「神州数碼集団(デジタルチャイナグループ)」へと社名変更したことで、深センA株の上場企業として再出発を果たした。二つの“神州数碼”は、独立事業体として今後の道を歩む。(上海支局 真鍋 武)
“純粋”なインターネット企業へ
2015年8月7日、神州数碼控股は、ディストリビューション事業を手がける神州数碼(中国)などの子会社(神州数碼集団)の株式100%を、条件つきで深セン市深信泰豊(集団)に売却する契約を交わした。売却金額は総額40億1000万元。その後、中国証券監督管理委員会(CSRC)の承認を経て、売却は16年3月9日に完了した。

再出発を果たした神州数碼集団
神州数碼控股の狙いは、クラウドやビッグデータを活用したITサービスを手がけるインターネットサービス企業へと転換を図ることにあった。同社は近年、主に子会社の神州数碼信息服務(DC-ITS)を通じて、スマートシティやインターネット製造、インターネット物流、インターネット金融などのITサービス事業に力を注いでいる。一方、売却した神州数碼集団は、15年度売上高が597億1200万香港ドルと、全体売上高の8割方を捻出している屋台骨ではあったものの、伝統的な非ストック型の収益モデルで市況の影響を受けやすく、今後の大きな成長も期待しにくかった。そこで、注力分野に今後のリソースを集中させ、“純粋な”インターネット企業へと転換を遂げるために、今回の事業再編に至った。

ワケありの売却

神州数碼集団は現在も
郭為氏の支配下にある ただし、ディストリビューション事業は、単純に売却されたわけではない。今後の事業拡大につなげるための戦略的措置として、神州数碼控股から分離したものと考えられる。なぜなら、売却後の現在も社名変更を経て“神州数碼”の称号を維持しており、同社の法定代表人も、神州数碼控股の首席兼董事長である郭為氏が務めている。つまり、神州数碼控股との間に資本関係はないにしても、神州数碼集団は現在も郭氏の支配下にある。今回の買収にあたって旧深信泰豊は新株を発行し、その大部分を購入した郭為・首席兼董事長が同社の株式23.66%を保有する筆頭株主となった。このことは、両社が15年8月に交わした契約の条件に含まれていた。
神州数碼控股からの分離にあたって、あえて深信泰豊への売却という選択肢を選んだのにも狙いがある。一つは、神州数碼集団を100%中資のローカル企業に転換させることだ。中国のIT市場では、近年、政府の“安全自主制御”政策によって、外資が入っているIT企業のローカルビジネスは、ハードルが高くなっている。そこで、株主変更を通じて純粋な中資企業となり、新規事業をやりやすくしようというわけだ。
さらに、深センA株市場への上場という狙いもあった。中国の株式市場への上場は制限があるうえに基準も厳しく、神州数碼集団が独自で成し遂げるには時間とリソースがかかる。そこで、すでに上場していた深信泰豊を利用して、独自に資金調達する手段を獲得した。
再出発を果たした神州数碼集団は、今後インターネット・クラウド・ビッグデータなどの先端技術を活用したエンド・ツー・エンドの製品・ソリューションに力を注いでいく。同社はすでに3万超のチャネルパートナー、100万社超の法人ユーザーを抱えているが、パートナー支援・営業支援・製品強化などを通じて、今後3~5年でさらに5万社のパートナー、100万社の法人ユーザーを開拓する構想を掲げている。
なお、今回の一連の動きを受けて、神州数碼控股は香港証券取引所での銘柄名を「神州数碼」から「神州控股」に、神州数碼集団は深セン証券取引所での取引銘柄名を「深信泰豊」から「神州数碼」に変更している。