5月に米国でEMCの年次イベントが開催されたのを受け、EMCジャパンは今年から来年前半にかけて国内市場に投入する製品に関する戦略説明を行った。オールフラッシュやコンバージドインフラの製品群をさらに強化し、コスト削減と同時に、ITインフラの「クラウドネイティブ化」を実現し、拡張性や運用自動化といったクラウドの利点を取り込む。また、今年後半以降に登場する一部の製品は「Dell EMC」ブランドでの提供が見込まれる。(日高 彰)

大塚俊彦
社長 「日本でも“攻めのIT”の動きは非常に活発。従来のミッションクリティカル領域と、新たなクラウドネイティブ領域をいかに両立し、成長への投資にシフトしていくかが課題だ」。EMCジャパンが開催した製品説明会で大塚俊彦社長はこう話し、既存の業務システムの効率化と、ビジネスの変革を推進するための新たな基盤構築を並行して進める必要性を強調した。
ここ数年、大手ITベンダーの多くは「デジタル・トランスフォーメーション」といったキーワードを掲げ、業務効率化を目的とした従来のIT投資に代わり、新規ビジネスの創出をもたらす新しい領域に投資の軸足を移すべきと主張、クラウドや分析ソリューションなどの拡販に注力している。しかし、多くの企業でIT投資の総額が決まっている以上、すでに動いている基幹系システムなどの運用・更新コストを削減しない限り、ビジネス変革のための投資余力は生まれない。このため、EMCではストレージ製品を「トラディショナル」と「クラウドネイティブ」の2領域に分け、前者にはTCO削減、後者には拡張性・柔軟性にそれぞれフォーカスした製品を投入し、全体の投資を最適化できるラインアップを提供する戦略をとっている。
5月の大型発表となったのが、ミッドレンジのユニファイド(SAN/NAS統合型)ストレージ「Unity」だ。前世代の「VNX」の後継となる製品で、性能を大幅に向上させたほか、GUIで操作可能な管理機能、監視機能を充実させ、設置・運用の手間を削減した。オールフラッシュモデルでは2Uサイズに80TBのSSDを搭載可能で、従来製品よりも集約率を大きく向上できる。性能、スペース、消費電力、運用コストがいずれも改善することで、TCOの削減に貢献するとしている。
また、出来上がった状態の仮想化基盤を電源オンですぐに使えるコンバージドインフラも、今年の後半以降さらに大きく伸びる市場とみており、大塚社長は2016年を「コンバージド元年」と位置づけている。傘下のVCEブランドで展開するラックサイズのハイパーコンバージドインフラ「VxRack」では、オンプレミス版のIaaS環境として使える製品として、従来のVMware vSphereベースの製品に加えて、OpenStack版の「Neutrino Nodes」を追加する。また、インフラに加えて、PivotalのPaaS環境「Cloud Foundry」などを含む事前定義型のアーキテクチャを提供し、ビジネス要求に応じて迅速にアプリケーションを開発、投入できる環境を強化する。
5月に米ラスベガスで開催された年次イベント「EMC World 2016」では、基調講演にデルのマイケル・デルCEOも登場した。デル/EMC統合後のビジネスの具体像は、遅くとも今年10月とされる買収手続き完了以降に発表されるが、エンタープライズ向け製品には「Dell EMC」のブランドを冠する方針が示されており、今後の新製品もEMCの3文字が含まれる形で提供される見込みだ。