週刊BCNは5月27日、「中堅・中小企業にとっての『ビッグデータ』対策~“ちょうどよいNAS”の提案方法を知る~」をテーマに東京・神田のBCNアカデミールームでセミナーを開催した。協賛は、日本シーゲイト、フォースメディア、QNAPの三社。NASは、低価格ながら高性能なストレージとして、ユーザーの支持を得てきた。ただ、その人気ゆえに多様な製品が登場し、どのNASを選ぶべきかの判断が非常に難しい状況にある。セミナーでは、中堅・中小企業が求める“ちょうどよいNAS”に迫った。(取材・文/畔上文昭)
スケールアウトNASが増加

テクノ・システム・
リサーチ
幕田範之
シニアアナリスト 本セミナーの基調講演には、調査会社テクノ・システム・リサーチの幕田範之・シニアアナリストが登壇。テーマは、「NASの今と未来 ~エントリーNASから見えてくる『変化』の先どり~」。幕田シニアアナリストは、国内ストレージ市場全体について、ここ数年横ばいの状況にあると説明。ただ、横ばいなのは3年くらい前から伸びている仮想デスクトップ(VDI)が下支えしたためで、「それがなければストレージ市場は危険な状況になっていた」とのことである。
本セミナーのテーマであるNAS市場については、「2013年頃からしばらく増加したが、06年頃に急増したNASのリプレース需要があったため」と紹介。基本的には、横ばいの状況にあるという。そうしたなかで、今後の成長が期待できるのは、ディスク容量を追加できる「スケールアウト型NAS」だとし、「スケールアップ型NASは容量が小さなエントリーモデルが残るものの、大容量には向かわない」と紹介した。
また、ストレージは購入から4年目になると一般的に保守料金が上がることから、「3年が経過したら買い替えたほうが安い」とし、そこにビジネスチャンスがあると紹介した。
高過ぎず安過ぎないNAS

フォースメディア
日置敬介
ビジネス開発部副部長 セッション1では、QNAPの正規代理店としてQNAP製品を取り扱うフォースメディアの日置敬介・ビジネス開発部副部長が「なぜQNAPが選ばれるのか? ~比較から見る“ちょうどよいNAS”提案のススメ~」と題し、講演した。日置副部長は“ちょうどよい”について、「手頃で、必要な機能を備え、使って快適」と定義。コンシューマとハイエンドの中間で製品を展開するQNAPのNASが、まさに“ちょうどよい”ポジションにあると紹介した。
QNAP製品の特徴は、扱いやすさにある。設定画面は、スマートフォンのようなアイコンが使われていて、直感的に操作できる。ストレージの容量を増やしたい場合は、より大容量のHDDに差し替えるだけで移行が完了する。また、QNAPのNASは複数台の集中管理や集中バックアップ、双方向の同期などにも対応していて、運用しやすい、つまり“ちょうどよいNAS”だとして、QNAP製品をアピールした。
HDDは選ぶことができる

日本シーゲイト
佐藤之彦
技術本部技術部
主席技師 セッション2では、HDDメーカーである日本シーゲイトの佐藤之彦・技術本部技術部主席技師が「“ちょうどよいNAS”には“ちょうどよいHDD”! ~中身でも差別化、HDDの選定方法を知る~」と題し、講演した。佐藤主席技師は、「パソコン向けのストレージはHDDを選べないが、QNAPなどのエンタープライズ向けストレージは選ぶことができる。まずは、それを知ってほしい」とし、HDDのカバーを両手に持って違いを説明した。一方はパソコン向け、もう一方はエンタープライズ向け。手を放して落下させると、床との衝突音の違いが明確にわかる。パソコン向けは軽く、エンタープライズ向けは重い音がした。
「容量などのスペックが同じでも、使っている部品が違う。それによって、耐久性などが変わってくる」と、佐藤主席技師は説明した。また、信頼性を示す指標として「作業負荷率制限(TB/年)」を紹介。これにより、年間でどれだけの作業負荷に耐えられるかがわかる。「24時間稼働が求められるのか、使用時間が限られるのかで、最適なHDDを選ぶことができる」という。このほかにも、高い面密度で大容量化を実現した「SMR(Shingled Magnetic Recording)」は大容量データの書き込みに効果的だが、ランダムアクセスには向かないなど、HDDの選定方法を紹介した。
最後に主催者セッションとして、週刊BCN編集委員の谷畑良胤が登壇。クラウド時代におけるNASの将来像などを紹介した。