ハードウェアメーカーからトータルソリューションベンダーへの転換を図ってきたデルグループのなかにあって、社名のとおりソフトウェア関連のビジネスを担うデル・ソフトウェアだが、日本市場での存在感は親会社の知名度に比して高いとはいえない状況が続いてきた。しかしここにきて、エンタープライズITの大きなトレンドとなりつつある「デジタル・トランスフォーメーション」に必要な“前処理”ともいうべきプロセスを支える商材を武器に、マーケットへの訴求を強めている。(本多和幸)
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中村共喜
社長 「デル・ソフトウェアは一体何の会社なのかという疑問をマーケットにもたれてきたことは否定しない」。同社の中村共喜社長は、こう率直な見解を漏らす。それでも、「シンプルにいえば、セキュリティとシステム・情報管理の会社であり、多くのお客様にとって非常に重要な商材を扱っている」と言い切る。2012年9月に米デルがデータ保護ソリューションのクエスト・ソフトウェアを買収したことに伴い、日本クエスト・ソフトウェアが社名変更してデル・ソフトウェアが発足した。その後、デル自身が買収したソニックウォール、KACEがラインアップしていた製品もデル・ソフトウェアに移管し、現在のポートフォリオを形成したという経緯がある。「いろいろな会社を無理矢理一つの会社にマージしたのが、ようやく一つの塊として成立してきた」(中村社長)という。
では、現在のデル・ソフトウェアのポートフォリオの価値とは何だろうか。中村社長は、同社の製品群が、デジタル・トランスフォーメーションのトレンドに代表される攻めのIT投資を増やしていくための、基礎をつくるものだと強調する。「モバイル、ソーシャル、クラウド、ビッグデータと誰もが口にする時代だが、実態として、ユーザー企業はITに関するコスト、リソースの2~3割しかそうした新しい分野に投入できておらず、ほとんどを既存システムの運用・保守に費やしている。当社の製品は、この7~8割の既存システムのための支出を減らして、IT投資をイノベーションの方向に向ける基礎をつくることができる」。
ただし、セキュリティやシステム・情報管理ソリューション市場は、決してデル・ソフトウェアの独擅場というわけではない。中村社長は、同社が市場に差異化要因として訴求していくポイントについて「ピンポイントの課題を解決する比較的安価なソリューションを揃えていること」だと説明する。そして同社の製品が、クラウドの浸透などを追い風に、デジタル・トランスフォーメーションの準備のために採用される例は現実に増えているという。「さまざまなレイヤのクラウドサービスが混在するなかで、ユーザー認証やアクセス制御の仕組みの統合、データベース(DB)の移行などを目的としたレプリケーションといった“インフラのモダナイゼーション”は盛り上がってきているし、実際に案件数も伸びている」と、中村社長は同社のビジネスが新しいフェーズに入ったとの見方を示す。
製品の性質上、ユーザーだけでなく、SIerなどのパートナーからの引き合いが多く発生しているといい、「ITのプロフェッショナルに使っていただくための製品としてすぐれた道具を取り揃えているわけだが、その意味でエンジニアに対する訴求が重要であり、エンジニアコミュニティに対する情報の発信に力を入れていく」(中村社長)方針だ。また、ラージエンタープライズからSMBまで幅広い層向けの製品をラインアップしていることを踏まえ、各レイヤで直接顧客接点をもつ「お客様に対して提案書を書いてくれるSIパートナーの開拓と教育」(同)も重点的に行っていく。