データドック(宇佐美浩一社長CEO)は、新潟県長岡市に高規格データセンター(DC)を開設する。最大の特徴は、一般的なDCに比べてラックあたりおよそ3倍の集積が可能なところ。ラックあたりの集積度合いを高めることで、DCにかかるコストを抑制しつつ、より多くのマシンパワーが得られるようになる。また、DCの冷却に「雪氷(せっぴょう)」を採り入れることを目的に豪雪地帯の長岡市を選んだ。雪を資源に変える取り組みとしても要注目のDCである。(取材・文/安藤 章司)
最大電力30kVA、耐荷重3トン
データドックの長岡DCの仕様は、ラックあたりの最大電力30kVA、平方メートルあたりの床耐荷重3トンで設計している。従来型のDCのラックあたり4~6kVA、床耐荷重1~1.5トンであることを考えると、集積度を大幅に高められるのが最大の特徴だ。全2000ラック相当の計画分のうち、500ラック相当を2017年10月をめどに竣工、18年1月からの本稼働を目指す。

では、なぜ高規格DCをつくろうと考えたのか――。データドックの親会社は、インターネット広告などを手がけるメディックス(水野昌広代表取締役)。本業の広告やマーケティングビジネスを伸ばすには、「高い処理能力をもつIT基盤が不可欠だが、割安な高規格DCが見当たらなかったから」(水野代表取締役)だと話す。

データドック宇佐美浩一社長CEO(左)と
メディックスの水野昌広代表取締役
インターネット広告で勝ち残るにはコンピュータの演算能力を駆使した「アドテクノロジー(広告配信技術)」の活用が欠かせず、マーケティングでもIoT/ビッグデータ分析が必須。今後、AIの活用なども考えると、マシンパワーへの需要はますます拡大すると、強く感じ取っていたことが背景にあげられる。
ビッグデータ分析のIT基盤に
メディックスは、顧客にネット広告やマーケティングの提案をしても、それを支えるIT基盤が存在しなければ「商談がそこで止まってしまう」と危機感を覚え、データドックによる高規格DCの開設を決断した。
課題は、どのようにして大電力を消費するDCのコストを抑制するかである。まずは、冒頭のラックあたりの集積度を従来比でおよそ3倍程度に高めるとともに、「雪氷」をDCの冷却に使うことでコストを抑える。冬のあいだに備蓄しておいた1万2000立方メートルの雪氷を、夏季にDCの冷却に使う。冬季は外部の冷たい空気を直接採り入れて冷却することで、都市型DCに比べて「電気代を含むDCの総コストを4割近く削減できる見込み」(データドックの宇佐美社長CEO)と自信をみせる。
寒冷地DCは、すでに北海道にあるさくらインターネットの石狩DCなどが先行しており、電力削減効果を上げている。データドックでは、首都圏から比較的近く、新幹線で通える長岡を立地場所に選び、「雪氷」を全面的に採り入れることで豪雪地帯における“雪資源”の有効活用に取り組む。交通の利便性と高規格・省エネのハウジング条件を揃えることで、首都圏のビッグデータ分析やアドテクノロジーをはじめとするハウジングニーズに応える。
現地での保守サポートやシステム構築サービス充実のため、データドック設立にあたっては、新潟の地場有力SIerのフジミック新潟とBSNアイネットにも出資、協力を仰いでいる。
説明会は満席DC建設“端境期”もプラス
データドックは、この7月に長岡DCの説明会を都内で開催したところ定員450人が満席となる関心の高さだった。ビッグデータ分析を念頭に置いた高規格で、寒冷地を活用した省エネDCであることや、国内DC建設の“端境期”であることがプラスに働いた。
直近では2010年前後にDCの建設ラッシュが起こり、その後も最新鋭のDCに対する需要は根強く継続するものの、東京五輪開催に伴う建設業の人手や資材の逼迫も相まってDCの新規開業は伸び悩む傾向にある。こうしたことから今回の長岡DCに対するユーザーやSIerなどビジネスパートナーの関心は高い。
説明会では、DC誘致に成功した新潟県知事が応援に駆けつけるとともに、首都圏直下型地震に備え、重要設備の分散を推奨している経済産業省商務情報政策局長も来場し、首都圏と同時被災の可能性が低い長岡DCを評価するコメントをしている。

パネルディスカッションの様子
また、IoT/ビッグデータ、BI(ビジネスインテリジェンス)をテーマにパネルディスカッションを開催。パネラーに東京大学の森川博之教授、ウフルの八子知礼・上級執行役員、ウイングアーク1stの森脇匡紀・クラウド営業統括本部統括部長、データドック・宇佐美浩一社長CEOが参加。本紙週刊BCN編集委員の谷畑良胤がコーディネーターを担当した。競争に勝ち残っていくためにIoT/ビッグデータ、BIの活用が一段と重要な役割を果たすことになるとともに、これらアプリケーションを支える強力なITインフラが求められていることについて議論を深めた。