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NEC 市場の裾野を広げるAI搭載のIAサーバー

2017/08/31 09:00

週刊BCN 2017年08月28日vol.1691掲載

GPUを搭載してスピードを10倍に

 少子高齢化が進み、労働力人口の減少による人手不足が深刻化している日本。そんななか、人工知能(AI)を活用して、熟練技術者のノウハウやベテラン社員の知見などを生かすことで、業務効率化や自動化をはかる取り組みが進んでいる。「NEC the WISE」を展開するNECも、労働力減少の対策として、ますます活用の幅が拡大するAIとサーバーのセット提案を強化するなど、継続的に製品を展開していく。(山下彰子)

50年後には労働力人口は3割減少
ITを活用して人材不足を補う

 働き方改革が国政として推進されている。少子高齢化により労働力人口が減少しているからだ。総務省は、今後50年ほどで労働力人口が現在の3分の2になると予想している。その結果、製造業、サービス業、情報システム部門、バックオフィスなどのさまざまな現場で人手不足による影響が深刻化することが懸念されている。とくに製造業で熟練技術者の技術やノウハウを受け継ぐ人材が不足すると、国内の技術力の衰退にもつながる。こうした課題をITを用いて解消しようとしたとき、NECが採用したのがAIだ。NECは2015年からAI技術の提案、販売を行っており、技術を高め、また販売実績やノウハウを着実に積み上げてきた。
 

西村知泰
執行役員

 西村知泰・執行役員はAI技術について「近年、コンピュータの処理性能が急速に向上し、データ量の膨大化が進むなかで、いよいよAI技術が実用化の段階に入ってきた。AIを活用し、人のノウハウをデジタル化することで、今までIT化・自動化が難しかった業務や、人間でなければ処理できなかった業務についても効率化・省力化を図ることが可能となる。また、労働力人口の減少による企業活動への影響が懸念されているが、AIの活用は労働力不足を補うことにもつながる」と話し、AI技術が実用化レベルまで成熟したことを強調した。

 さらに市場の裾野を拡大するため、AIを搭載したIAサーバーを強化した。17年モデルは、最新のインテル Xeon スケーラブル・プロセッサー ファミリーを搭載するとともに、GPUボードを搭載できるようにした。

GPUやアクセラレーターを追加
学習・予測処理を10倍に

 従来モデルは、サーバーのCPU上で機械学習を実行してきたが、ディープラーニングのアルゴリズムをGPU上に移植し、最適化することで高速処理を実現。ディープラーニング技術を搭載した「NEC Advanced Analytics-RAPID機械学習」(RAPID機械学習)と組み合わせることで学習時間を約10分の1に短縮するほか、予測処理数を約10倍に高速化させた。これにより、大量データによる学習・予測処理の高速化が求められる工場ラインでの製品検査業務において、従来人手で行っていた検査業務工数の削減や作業品質の均一化が可能になるという。

 労働力人口の減少による人手不足という課題を抱えるのは情報システム部門も同様だ。社内のシステム管理者を確保することがますます難しくなっていく。画期的な技術やシステムがあっても、それを運用できなくては宝の持ち腐れとなってしまう。そうした課題を解決するのが9月から提供を予定している保守サービス「サーバー診断カルテ」だ。

 定期的にサーバーのログを収集することで、人間の健康診断のようにサーバーを診断し、作成したカルテを提供する。これにより、最新のシステムの構成状況や稼働状況を見える化し、故障予兆などを顧客自身で容易に把握できる。なお、同サービスは今回の新製品だけではなく、今後の新製品にも対応していく。また、来年度以降はNECのエンジニアがリモートでトラブル解決やアップデートを行うリモート診断/運用や、AI分析による故障の予兆保守を順次提供していく予定だ。

 馬渕淳・ITプラットフォーム事業部長代理は、「労働力人口の減少に対して、AI技術により業務効率化や自動化を推進することで、現場の課題解決を支援してきた。今回の新製品は、この取り組みをさらに加速させるものとなる」と語る。
 

「Express5800/D120h」の
GPGPU対応モデル

 1994年にx86サーバーのExpress5800を投入し、企業システムを支えるICTプラットフォームを提供してきたNEC。今後は労働力減少の対策として、AIの領域について継続的に製品を強化していく。
 

アマゾン ウェブ サービス ジャパン
学習済みAIはクラウド向き サービス化が進む画像分析や音声認識

 コンピューティングリソースを必要なときに必要なだけ使いたい、というニーズに応えることで市場を広げてきたクラウドサービス。人工知能(AI)においても、現時点の能力で実現可能な分野でサービス化が進んでいる。
 

AWSのAIを活用した事例を発表する千の熊谷大地・ものづくり部マネージャー(写真中)。
同社の写真サービス「はいチーズ!」では、同一人物の検索にAIを活用している

 アマゾン ウェブ サービス ジャパン(長崎忠雄社長)は、テキストを音声に変換する「Amazon Polly」、画像分析機能の「Amazon Rekognition」、自動音声認識と自然言語解析によるボットを構築するためのサービス「Amazon Lex」という三つのAIサービスを提供している。いずれも学習済みのAIであることから、すぐに導入できる。

 Rekognitionをいち早く取り入れたのが、写真サービス「はいチーズ!」を提供している千。はいチーズ!は、運動会などの写真をウェブ上で販売することで、写真を壁に掲示したり、代金を回収したりといった作業を不要にする写真販売サービスで、幼稚園や保育園を中心に約5000団体が利用している。園児が多いと写真が何万枚にもなるため、Rekognitionを活用し、「顔検索機能」を実現。自分の子どもの写真を保護者がピックアップできるようにした。システム構築は、約1か月で完了したという。

 画像や音声に関連するAIは完成度が高く、活用シーンが増えている。今後もAI技術が成熟した分野から、クラウドサービス化が進むと考えられる。
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外部リンク

NEC=http://www.nec.co.jp/