Microsoft 365でパートナーもクラウドシフト

 日本マイクロソフトは11月1日、「Microsoft 365」シリーズの中堅・中小企業向け製品「Microsoft 365 Business」をリリースした。これにより、Microsoft 365製品は、あらゆるユーザーをカバーできるラインアップが、ひとまず揃ったことになる。「働き方改革」のトレンドを大きな追い風として国内への浸透を加速させると同時に、2020年1月にサポート終了を控えるWindows 7のマイグレーションビジネスをけん引する商材としても、そのポテンシャルの大きさを市場に強くアピールしていく。(本多和幸)

中堅・中小向け製品リリースで
ラインアップが出揃う

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三上智子
業務執行役員
Windows&デバイス本部長

 日本マイクロソフトは、今年8月1日に大企業向けの「Microsoft 365 Enterprise」をリリースしたのを皮切りに、10月1日には、小売業やサービス業での顧客対応、製造業での現場作業などに従事する人(マイクロソフトは“Firstline Worker”と定義する)向けの製品である「Microsoft 365 F1」、教育機関向けの「Microsoft 365 Education」もリリースした。そして11月1日には、中堅・中小企業向け製品であるMicrosoft 365 Businessも市場投入。同社の三上智子・業務執行役員Windows&デバイス本部長は、「これでMicrosoft 365は全ラインアップが出揃った」と説明する。

 Microsoft 365シリーズは、「Office 365」「Windows 10」「Enterprise Mobility + Security(EMS)」を組み合わせた製品であり、非常に幅広い機能をもつ。新製品であり、従業員300人以下の組織を対象としているMicrosoft 365 Businessは、Microsoft 365 Enterpriseと比べると機能を絞り込んでいるが、それでも、常に最新のOfficeをマルチデバイスで使うことができるほか、メール、グループウェア、1TBのファイルストレージ、グループチャットやビデオ会議、さらには包括的なセキュリティ機能も備えている。

 Microsoft 365 Educationは教育機関向けに特化したプラン、Microsoft 365 F1はあくまでもオプション的な色彩の強い製品であることから、Microsoft 365シリーズの核となるのは、Microsoft 365 EnterpriseとMicrosoft 365 Businessだといえる。ただし、Microsoft 365 Businessの価格は1ユーザーあたり月額2180円で、最上位プランにあたるMicrosoft 365 Enterprise E5の参考価格は1ユーザーあたり月額6220円。三上本部長はMicrosoft 365 Businessについて、「中小企業のニーズを汲んでかなりお得な価格にしている」としており、Microsoft 365 Businessを、Microsoft 365ビジネスの飛躍的な拡大の可否を左右する戦略的な製品であると位置づけていることがうかがえる。

働き方改革とWindows 7 EOSが
拡販のトリガーになる

 最初の製品のリリースから3か月が経ち、Microsoft 365のコンセプトは市場にどのように受け入れられているのだろうか。中原徹三・業務執行役員Officeビジネス本部長は、「大企業層は、Microsoft 365をまさに待ち望んでいた製品だと評価してくれている。働き方改革のトレンドも追い風になっている」と説明する。三上本部長も、「大企業では反響が大きく、とくにセキュリティの部分に最もバリューを感じてもらっている」と話す。リモートワークなどの柔軟な働き方を実現するツールとセキュリティ機能を一つの製品として提供できるようになったことで、働き方改革のキモともいえる、生産性の向上とリスクコントロールを両立できる環境づくりに大きく貢献しているという手ごたえがあるようだ。
 
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中原徹三
業務執行役員
Officeビジネス本部長

 一方で、とくに中小企業に対しては、Microsoft 365 Businessをリリースしたばかりということもあって、製品コンセプトを周知させていくのはこれからという段階だ。そして、そのハードルも決して低くはない。中原本部長は、「大企業と中小企業では、クラウドのメリットに対する理解や生産性向上のためのIT投資への意識などで大きな差がある。まずはMicrosoft 365のメリットをできるだけわかりやすく伝えていく必要がある」としている。さらに、中小企業でも、経営者の世代や従業員規模などで細かくセグメントを分けると、ITリテラシーが高くIT投資に積極的な層も存在するとみており、まずはそうしたユーザーから切り崩し、市場全体への波及効果を狙う。三上本部長は、「380万社ともいわれる日本の中小企業はグループウェアを活用できている企業が12%にとどまるという調査結果もある」と指摘し、Microsoft 365の潜在的な市場は、中小企業向けの領域でこそ大きいことを示唆する。

 さらに、働き方改革のほかにMicrosoft 365拡販のトリガーとして日本マイクロソフトが重要視しているのが、Windows 7のサポート終了(EOS)というビッグイベントだ。Windows 7のサポート終了は20年1月だが、同年10月には、Office 2010のサポートも終わる。「ユーザーごとに異なるバージョンのOfficeを使っていたり、Windows 7のパソコンが残っているお客様はまだまだ多く、これらを一気に最新環境に移行できるMicrosoft 365のメリットは大きい。Windows XPのマイグレーション時の経験から、デバイスを買い替えてもらうタイミングで、中堅・中小企業層も含めて一気にMicrosoft 365のコンセプトを市場に浸透させられるかもしれないという期待はある」(三上本部長)という。

 Microsoft 365 Businessには、CSPパートナーによる販売とウェブの直販という2種類の販路があるが、ビジネス規模としてはCSP経由の間接販売の割合が圧倒的に大きくなる見込みだ。働き方改革、Windows 7マイグレーションのいずれを前面に押し出すにしても、Microsoft 365 Businessの成長はパートナーにかかっている。三上本部長は、「パートナーに対しては、働き方改革の事例集など、リアルなストーリーを共有したり、自ら働き方改革を実践していただき、説得力のある提案を自分たちのストーリーとして語っていただけるようにサポートするなど、積極的な支援策を展開している。また、何よりもWindows 7のマイグレーションは最後のビッグマイグレーションになる。パートナーにとっては、短期間である程度のビジネスボリュームが確保できる可能性が高いこのタイミングこそが、クラウドシフトを一気に進める好機になるのではないか」と力を込める。

 日本マイクロソフトは11月13日、Microsoft 365 Businessを核とする同社クラウドサービスの導入、構築、活用促進、管理、運用支援などでリコージャパンと協業することも明らかにしている(23面に詳細)。Microsoft 365 Business拡販のためのパートナーとの協業強化の動きは、さらに拡大していく見込みだ。