ベンダーの競争は激化

 ヴイエムウェア(ジョン・ロバートソン社長)が、クラウドやデバイスの種類を問わない共通環境の提供を目標に、クラウド戦略の推進に力を入れている。グローバルでクラウドベンダーとの協業を拡大、枠組みは整いつつある。一方、各クラウドベンダーは、オンプレミスでヴイエムウェアの仮想化環境を運用するユーザーの囲い込みに向けた動きを活発化しており、競争は激化の一途をたどっている。クラウド市場に新たな旋風が巻き起こる可能性がある。(廣瀬秀平)

トップベンダー同士の蜜月

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米ヴイエムウェア
パット・ゲルシンガーCEO

 「プライベートクラウドのリーダーが、パブリッククラウドのリーダーと一緒に、シームレスで統合されたユーザー体験をハイブリッドクラウドで提供する」。10月31日、ヴイエムウェアが東京で開催した年次カンファレンス「vFORUM」。基調講演に立った米ヴイエムウェアのパット・ゲルシンガーCEOは、昨年発表したアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)との協業について、こう表現した。

 AWSは、パブリッククラウドの市場で世界シェア約3割を誇る最大手。ヴイエムウェアは、仮想化環境の市場で大きなシェアを獲得している。競合関係にある両市場のトップベンダー同士が手を結んだことで、業界内には驚きが広がっていた。

 今回のvFORUMでは、両社の協業による「VMware Cloud on AWS」の国内での提供が目玉になった。ロバートソン社長は、提供開始時期を「18年第4四半期」と披露。先行して導入しているリコーと野村総合研究所は、機能面で一定の注文をつけたものの、おおむねVMware Cloud on AWSを評価する姿勢を示した。

 AWSジャパンの長崎忠雄社長は、ロバートソン社長とツーショットで並び、「今までは、AWSかヴイエムウェアだった」と最適な環境ではなかったことを認めつつ、「これからは、お客様が使っているエンタープライズアプリケーションをAWS上でシームレスに利用できる」と説明した。AWSはまた、VMware環境を快適に利用するためのベアメタルサーバーの提供を開始している。

 ヴイエムウェアとの協業については「私どものお客様から、かなり好意的な声をいただいている」と紹介。エンタープライズ市場を開拓するトリガーとしてAWSは期待している。

ワークロードを自由に

 ヴイエムウェアは昨年、クラウド戦略の強化を発表した。オンプレミスが多い顧客の動向を踏まえ、国内では、オンプレミスとクラウドを適材適所で組み合わせるハイブリッドクラウドを重要視する考えだ。
 
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ヴイエムウェア
秋山将人
執行役員ストラテジック
アカウントビジネス本部本部長

 ヴイエムウェアの秋山将人・執行役員ストラテジックアカウントビジネス本部本部長は、「お客様が、いろいろなクラウドを個別に管理するのはナンセンス」とし、「オンプレミスも、プライベートクラウドも、パブリッククラウドも、一元的に管理できるようにして、ハイブリッドであることすら意識しない環境を整えることが理想だ」と説明する。

 さらに、秋山本部長は、「新しいテクノロジーを使ったアプリ開発のほか、既存データの活用や既存アプリとの連携など、お客様のワークロードはどんどん増えている」と指摘し、「今後は、お客様のワークロードをいろいろなクラウドで動かす時代になってくる。この動きを妨げる壁をなくさないと、クラウドの真のメリットは得られない」とみる。

 ただ、クラウド戦略の強化により、「顧客数が劇的に増えることは目指していない」と強調。あくまで「クラウドのサイロをなくすこと」が目的で、「お客様のクラウド移行を支援し、既存顧客のなかで、ヴイエムウェア製品の利用範囲が広がることを期待している」と話す。

 ヴイエムウェアと協業するクラウドベンダーは、自社のクラウドサービスとして、オンプレミスからの移行を促す。ヴイエムウェアのユーザーを取り込めるかは、既存サービスとの連携が差異化ポイントの一つになる。

 VMware Cloud on AWSは、AWSの占有環境を使い、販売はヴイエムウェアが自ら担う。秋山本部長は、「つながるべきリソースとのつながりを拡大してきた」と語るものの、ほかのクラウドベンダーとは異なる対応で、AWSの"特別感”は否めない。

ヴイエムウェアを軸に火花

 ヴイエムウェアとAWSの協業は、クラウドベンダーに危機感をもたらしたといえる。AWSより先に協業を結んでいるIBMは、今年のvFORUM直前に説明会を開き、すでに提供している「VMware on IBM Cloud」の優位性を訴えた。

 日本IBMの田口光一・理事クラウド・サービス事業部長は、世界中の1400社がVMware on IBM Cloudを採用していると説明。国内では昨年後半から、大型案件が増えており、なかには3000VMを超える大規模な移行もあると紹介した。

 IBMとAWSのサービスで、最も大きく違う点はデータセンターの数だ。説明会時点で米国の1データセンターだけのAWSに対し、IBMは日本を含む21拠点のデータセンターの利用が可能。データセンター間の通信が、トラフィック量に関係なく無料なことも強みだという。

 田口事業部長は、説明会を開催した理由について、「これまでやってきた実績と最新のサービスを整理して伝えたかったのが一番の動機」としたものの、「(AWSが)ヴイエムウェアのクラウドサービスを開始すると非常に話題になっている。私どもの発表が若干、かすんだという印象がある」とAWSへの対抗意識を鮮明にした。

 また、マイクロソフトは11月21日、公式のブログに「VMware環境をMicrosoft Azureでトランスフォーメーション」と題する記事を投稿し、「VMware環境をAzureにスムーズに移行する方法」を紹介した。

 これに対し、米ヴイエムウェアは翌日のブログで、「VMwareとは独立して開発されたもので、VMwareの認定もサポートもされていない」と関与を否定する見解を公表した。

 大企業を中心とするヴイエムウェアユーザーの獲得は、各クラウドベンダーにとって、売上拡大に向けた金の卵になる。企業システムの多くは、いまだオンプレミス環境にある。それゆえ、ヴイエムウェアを軸にした争いが、エンタープライズ市場のシェアを大きく左右することになる。