キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)は、営業や組織の体制を「商品別」から「顧客別」に移行していく。顧客ターゲットを大手企業、中堅・中小企業、特定産業分野、個人消費者の四つに分け、顧客起点で商材やサービスを販売していく体制へ切り替える。主力だった複合機/プリンタビジネスの伸びしろの限界を見据え、新しい成長のかたちを模索している。(本多和幸/安藤章司)

 同社は現在、2016年から20年までの5年間の「長期経営構想フェーズIII」を実行中で、具体的な実行計画は、3か年の中期経営計画を毎年更新していくかたちを採っている。

 昨年1月に発表した17年~19年の中期経営計画で、商品別に構成された組織から顧客別に体制を移行する方針は示していたが、この1月に発表した18年~20年までの最新の中期経営計画で、詳細なフレームワークを示したかたちだ。具体的には、顧客ターゲットを「エンタープライズ(大手企業)」「エリア(中堅・中小企業)」「プロフェッショナル(産業分野)」「コンシューマ(消費者)」の四つに分け、顧客起点で商材やサービスを販売していく体制へ切り替える。

 ユーザー企業の総務部門が担っていたような複合機/プリンタの購入窓口が、近年ではオフィスのデジタル化の流れのなかで、同社は「情報担当部門が担うケースが増えている」(キヤノンMJの足立正親・取締役常務執行役員)と分析。ビデオ会議やリモートワークなど、働き方改革の時流に合った情報システムを整備する一環として、複合機/プリンタ、ネットワークカメラなども情報部門が担うケースが増えているという。このタイミングで、システム事業(SI)やセキュリティ、クラウド関連サービスを包括的にユーザー先へ届けられるようにする。

 「顧客別」へと体制変更した背景には、キヤノンMJの主力事業の一つの複合機/プリンタの伸び悩みが挙げられる。重要な収入源であるトナーなどの消耗品が十分伸びていない。もちろん伸びるに越したことはないが、現実的には今後この分野が伸びるとは想定できないのが現状だ。会議のオンライン化や、遠隔地同士での共同作業が増えると、ペーパーレス化が一段と進む可能性もある。伸びしろが大きい企業向けSIとの融合を推進することで、顧客課題をより的確に解決する能力を高めるとともに、営業効率の向上を狙う。

 キヤノンMJの坂田正弘社長は、「顧客からは課題解決を求められいる。商品起点を顧客起点へと改めていく」ことで課題解決力を一段と高める。従来の商品別と類似するのはコンシューマ分野のみで、企業向けは客層に最適化した組織へ組み替える。2020年度(20年12月期)連結売上高の目標は、昨年度実績から880億円近く上乗せした7200億円を目標に据える。

 キヤノンMJのようなメーカー系販社とは事情が異なるが、同様に複合機/プリンタ販売を主力ビジネスの一つに据える大塚商会も、この分野に限っては、17年12月期の通期販売台数は微減だった。しかし大塚商会は、顧客ごとの複合的な最適提案を以前から志向し、全社では8期連続の増収増益を果たした。18年12月期には、キヤノンMJより一足先に連結売上高7200億円を達成する計画だ。かつては9000億円超の売上高を誇ったキヤノンMJだが、今回の構造改革により、市場におけるプレゼンスを維持・向上させられるのか、正念場を迎えている。