SMB(中堅・中小企業)向け基幹業務ソフト大手のピー・シー・エー(PCA、佐藤文昭社長)が、新製品のERPパッケージを擁して中堅企業層への本格的なアプローチを開始する。さらに、近い将来、オンプレミスのパッケージソフトの提供形態をサブスクリプション型のモデルに転換していく方針であることも明らかにした。クラウド基幹業務ソフトのパイオニアである同社が、SMB向け基幹業務ソフト市場のビジネスモデル変革も先導することになるのか。(本多和幸)

新ERP「PCA hyper」で中堅企業向け製品に再挑戦

 PCAはERPの新製品「PCA hyper」を来年2月にリリースする。年商10億円から100億円、従業員数1000人、グループ子会社10社程度までの規模の中堅企業をターゲットにしたERP製品だ。約9万社の潜在的な顧客が存在すると見込む。

 同社の既存主力製品である基幹業務ソフトのパッケージ製品である「PCA DX シリーズ」は、年商1億円から10億円、従業員数は100人程度までの企業が主な顧客層だ。一方で同社は、2001年に中堅企業向けのERP製品として「PCA Dream21」をリリースしたが、今年3月に生産を完了していた。PCA hyperはDream21に代わる中堅企業向け製品という位置付けだ。

 PCAにとって、Dream21によるアッパー層攻略へのチャレンジは期待通りの成功を収めたわけではない。Dream21は、DXシリーズに連なる中小企業向け製品の系譜とは異なるアーキテクチャーを採用していたため、Dream21向けの開発リソースの確保は同社にとって負担となり、機能向上のスピードにも課題を抱えるようになっていたという。もはや基幹業務システム分野でも、ベンダー側がクラウドの選択肢を準備するのは必須の状況になりつつあるが、Dream21はクラウド対応も進んでいなかった。

 こうした状況であれば、中堅企業向けERPからの撤退という判断もあり得ただろうが、PCAは新ブランドを引っ提げて、「中堅企業向けビジネスで再チャレンジし、新しい価値を提供していく」(佐藤社長)と宣言した。成功の手ごたえも十分にあるという。その背景にあるのが、DXシリーズのクラウド版「PCAクラウド」における顧客基盤拡大の経験だ。
 
佐藤文昭
社長

 PCAは中堅・中小企業向けの基幹業務ソフトベンダーとしては、いち早くクラウド化に取り組み、08年5月にPCAソフトのSaaS版(現在の「PCAクラウド」)の提供を開始した。競合ベンダーは今年に入るまでSaaSの本格的な提供に踏み切らなかったため、PCAクラウドは10年近く、中堅・中小企業向け基幹業務ソフトのSaaSとしてはほぼ唯一の選択肢だった。そうした事情もあってか、クラウド業務ソフトの市場そのものがなかなか立ち上がらずユーザー拡大には時間を要したものの、今年1月にはユーザー数が1万社を突破した。クラウド製品の売上比率も約20%という水準まで拡大している。佐藤社長は、「PCAクラウドのユーザーは、従来の当社のコアユーザー層よりも大規模な法人が多く、複数拠点で事業展開する企業の採用も目立つ。中堅企業のお客様から、さらなるパフォーマンス向上やガバナンス強化のための機能を充実させてほしいと要望されることも少なくなかった」と話す。こうしたユーザーの反応が、中堅企業向けERPの市場で勝負できると判断した根拠になっている。

 PCA hyperは、DXシリーズ、PCAクラウドをベースに開発し、グループ企業間でのデータ管理の効率化を進めた。APIによる他システムのスムーズな連携も実現し、DXシリーズ、PCAクラウド譲りの特徴としてさらにブラッシュアップする方針だ。また、「ユーザー企業の成長に合わせてオンプレミス、クラウドを柔軟に選択できるようにする」(佐藤社長)という。ただしクラウド対応は当面、AWSやFUJITSU Cloud Service、IBM Cloudなどパートナーシップを組む有力クラウドベンダーのIaaS上での動作保証にとどまる。佐藤社長は、「パフォーマンス重視のお客様には有力クラウドベンダーのIaaSとhyperの組み合わせ、中堅規模でもコスト重視のお客様にはPCAクラウドを提案する」として、中堅企業向けにはPCAクラウドとhyperという二つの選択肢を用意する意向。

 ロードマップとしては、19年2月に会計/固定資産モジュールをリリースし、同7月には給与/人事管理、20年2月には会計モジュールの債権・債務管理オプションもリリースする予定だ。
 

クラウドのパイオニアがビジネスモデル変革も主導?

 さらにPCAは、DXシリーズをはじめとするパッケージ版の製品を、従来の売り切り型ではなく、“サービス”として提供する「サブスクリプション型ビジネス」に転換していく方針も固めた。

 PCAの既存ユーザーは77%がスタンドアロン環境のユーザーであり、PCAクラウドの拡販にあたっても、クラウドへの移行が必ずしも最適解とはいえないユーザーもかなりの割合で存在しているというのが同社の認識だ。また、従来のパッケージ版のビジネスでは、保守サービスの加入率も頭打ちの状況で、ソフトウェアの機能の成熟によりバージョンアップのニーズも減少しているという。現在のパッケージ版のビジネスモデルでは、PCAもパートナーも大きな成長が見込めないという危機感がある。佐藤社長は「機能+付帯サービスを売り切り型で提供するモノ売りのビジネスから脱却し、課題解決のためのサービスに継続課金してくれるお客様との長期にわたる関係を重視したビジネスモデルに変えていく。これがストックビジネスの比率を増やし、安定的な成長につながる。当社のビジネスだけでなく、パートナーのビジネスにも同様の影響があるし、お客様にとってもビジネス環境の変化に対応した新機能がタイムリーに提供されるようになるという大きなメリットがある」と話す。

 パッケージ版のサブスクリプション型ビジネスをいつ始めるかは未定だが、「ポスト2020」のリセッション対策を考えるパートナーなどにコンセプトを丁寧に説明し、ストックビジネス強化の必要性を訴えながら、適切な時期を探る方針だ。