富士通(田中達也社長)は11月1日、同社のAI事業を統括する新会社・FUJITSU Intelligence Technology(吉澤尚子CEO)をカナダのバンクーバーに設立した。AI技術の開発は日本をはじめとする世界各地域の研究開発拠点で継続するが、今後AIに関する事業戦略は新会社で策定し、グローバルに展開する。

 田中社長は10月の経営方針説明会で、SIを中心とした「テクノロジーソリューション事業」の営業利益率を、2022年度までに10%以上へ引き上げると“公約”し、具体的な施策の一つとして「世界に通用する商品」の開発を挙げていた。AI、IoT、セキュリティーなどの重点分野では、グローバル戦略に基づく商品開発を行い、各国の現地法人がそれを各市場に合うかたちで展開することで、スピーディーな商品投入や、グローバルでのニーズやノウハウの共有を行っていくとしている。今回の新会社設立は、この戦略をAIの分野で具体化するもので、18年度から22年度までの累計で、AI事業の売上高目標を4000億円に設定した。

 11月6日に開催した記者会見で、新会社のCEOに就いた富士通の吉澤常務は「北米企業1社当たりのAIに対する投資額は、日本の17倍。日本企業がAIに対してまだ懐疑的なのは間違いない」「世界のAI市場のうち、日本が占める割合は約3%。日本の中にとどまってはいられない」と述べ、日本市場におけるAIの普及スピードは、欧米に比べ明らかに遅いと指摘。AIの研究開発でも導入でも遅れをとっている日本では、世界で戦っていくための戦略策定はできないとの判断から、統括機能の海外移転を決定した。

 拠点としてバンクーバーを選んだ理由には、AI関連での起業・投資が盛んなことに加えて、カナダおよびブリティッシュコロンビア州が先端IT産業に対する支援プログラムを用意していたこと、シリコンバレーに近いと同時に、サンフランシスコなどに比べ人件費や事業所費用が安くコスト効率が高いことなどが挙げられている。
 
新会社のCEOに就任した富士通の吉澤尚子常務

 富士通は新会社設立に合わせて、量子コンピューティング技術を応用した、組み合わせ最適化問題専用コンピューター「デジタルアニーラ」の第2世代チップを発表した。第1世代の規模が1024bitだったのに対し、第2世代では最大8192bitに対応可能で、技術検証レベルではなく実際の課題解決に適用できるとしている。すでにカナダの製薬会社・ProteinQureが分子構造の解析に使用しており、従来半年を要する計算が数日まで短縮できることを確認したという。

 デジタルアニーラや、富士通のAIプラットフォーム「Zinrai」は富士通自身のクラウドサービスとして提供されているが、グローバルで同社のAI技術の採用を拡大するため、19年度中に大手パブリッククラウドを通じて提供することを目指す。実現に向けてマイクロソフトなど主要クラウドベンダーと協議を開始しているという。(日高 彰)