スマートファクトリー化の最初の難関は、古い装置・機器からデータを吸い上げることだと言われている。シュナイダーエレクトリックは既存の装置・機器を使いながらデータを吸い上げるソリューションを開発。フィリピンにある自社工場に導入した。3月15日にフィリピンで行われた記者会見、工場見学の内容を紹介する。(取材・文/山下彰子)

98年に設立のCAV2工場

古い設備・機器はそのまま

 フィリピン政府は、外資系企業の受け入れを積極的に行っている。その取り組みの一つが、「Philippine Economic Zone Authority(PEZA・フィリピンの経済区庁)」が主導する経済特区。特区エリアに入所した海外企業は、法人所得税の免税や、原材料、資本設備、機械、機械のスペアパーツの非課税などの待遇を受けられる。フィリピンの首都・マニラから車で2時間弱のところにあるカビテ州には、PEZAが経済特区として管轄する工場地帯があり、シュナイダーはここに工場や流通センターなどを設けている。

 その施設のうち、1998年に設立した製造工場「CAV2」、99年に設立した「CAV3」に、同社のスマートファクトリーソリューションを導入。古い設備・機器はそのままに、現場の見える化、エネルギーの最適化、生産効率の向上を実現。シュナイダーのフィリピン工場では初となるスマートファクトリーとして生まれ変わった。
 
マイケル・クロザット
バイスプレジデント

 工場に導入したのは、製造業向けのソリューション「EcoStruxure Machine」。装置や機器とつながる第1層の「コネクテッド・デバイス」、データを集約する第2層の「エッジコントロール」、集約したデータを分析する第3層の「アプリケーション、アナリティクス、サービス」で構成する。3層を相互に連携させ、ベンダーに依存しないオープンなIPプロトコルの採用により、多様なハードウェアやシステム、制御環境での稼働が可能になった。

 第1層のコネクテッド・デバイスでは、UPSをはじめ、表示灯・回転灯、警報機、インバーター、電力計などさまざまな製品を揃えている。その一つが通信機器「Pro-face IoT Gateway」だ。既存の生産ラインで稼働中のHMIとPLCの間に組み込み、データを取得する。これにより、生産ラインの機器を買い替えが不要となり、Pro-face IoT Gatewayの追加でコネクテッド・デバイスへと変身する。

ARでダウンタイムを短縮

 シュナイダーの工場でもう一つ特徴的なのが、第3層「アプリケーション、アナリティクス、サービス」で提供するAR(拡張現実)ソリューションだ。同社は、17年8月に装置・機器の操作やメンテナンスを支援するソリューションとして「EcoStruxure Augmented Operator Advisor(シュナイダーARアドバイザー)」を発表。これをCAV2とCAV3に導入した。

 同社の調べによると、メンテナンス作業にかかる時間の50%は装置・機器のマニュアルなどの情報検索が占めていたという。メンテナンス経験を積んだ熟練者であれば作業時間は短いが、経験の浅いエンジニアが担当したり、新しい装置・機器を導入したばかりの時期は、ダウンタイムが長時間になってしまう。こうした課題を解決するのが、ARアドバイザーだ。
 
ARアドバイザーのデモンストレーション

 生産ラインに不具合が発生した際、アプリケーションをインストール済みのタブレット端末のカメラで装置・機器を撮影する。アプリがARサーバー経由で装置・機器の稼働状態やエラーコードを取り込み、機器・装置の画像に重ねて表示する。表示されたエラーコードをタップするとファイルサーバーに格納した操作マニュアルの中からエラーの内容を調べ、画面に表示。操作手順テキストや図面、操作手順を示す動画マニュアルなどを表示することができる。これにより、分厚い取扱説明書を持ち出したり、現場でページをめくる手間を削減したりでき、「これまで15~30分かかっていたダウンタイムを5分に短縮できた」とマイケル・クロザット・フィリピン事業担当バイスプレジデントは話す。
 
ARを使ったトレーニング

 また、CAV2やCAV3で働く従業員1400人以上を対象にスキルアップのため、トレーニングを実施している。これにより、製品組立時のエラーや機器の誤作動などに対して製造現場で迅速な決定を下すことができるようになった。こうした取り組みにより、ダウンタイム時間を短縮し、生産性を高めることに成功している。
 
99年に設立のCAV3工場