マイクロソフトとソフトバンクグループが戦略的協業関係を強化している。6月13日にソフトバンクグループ傘下のファンドが出資する米オートメーション・エニウェア(ミヒール・シュクラCEO)が、自社製品のRPAプラットフォームをマイクロソフトのクラウドサービスと連携すると発表。17日には、マイクロソフトのクラウド型コミュニケーションツールとソフトバンクの電話網をつなぎ、情報端末から固定電話番号で通話できる音声通話サービスの提供を始めると明らかにした。(銭君毅、前田幸慧)

「Azure」上でボットを利用可能に

 大手RPAベンダーの米オートメーション・エニウェアは6月13日から14日の2日間、都内でプライベートイベント「IMAGINE TOKYO 2019」を開催した。初日の基調講演に登壇したシュクラCEOは、日本市場での事業戦略を説明する中で、マイクロソフトとの戦略的提携を発表。また、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長をゲストに迎え、RPAの今後の可能性について語った。

マイクロソフトとの提携により、「Microsoft Azure」上でオートメーション・エニウェアのボットを実行できるようになる。オートメーション・エニウェアのRPAプラットフォームと、「Microsoft Dynamics」「Microsoft 365」「Microsoft PowerBI」といったマイクロソフトの各種製品が連携し、それぞれのプラットフォームで行っていた作業を自動化できるという。両社は販売・開発面でも連携する予定で、顧客へのマーケティングやAI開発を共同で進めていく。

 オートメーション・エニウェアのRPAプラットフォームの強みは「IQ Bot」というAIソリューションを実際にサービス化していることにある。ソフトバンクグループは2018年11月、傘下の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」を通じて同社に3億ドルを出資。孫社長はその理由について、「AIが最も進化するRPAはどこか考えてオートメーション・エニウェアを選んだ」と述べ、その上で「ちょうど昨日(12日)、さらに追加投資すると合意した」と明かした。シュクラCEOは「マサさん(孫社長)はAIとRPAの組み合わせが持つ可能性をすぐに理解してくれた。全ての人にRPAとAIを組み合わせたデジタルワークフォースを届けていきたい」とアピールした。
 
米オートメーション・エニウェア
ミヒール・シュクラ
CEO
 
ソフトバンクグループ
孫 正義
会長兼社長

 日本では近年、あらゆる産業で人材不足が課題となっていることを背景に、定型業務を自動化するRPAに注目が集まっている。これを商機と見た多くの外資系RPAベンダーが日本市場への投資を強めている。その中でオートメーション・エニウェアの国内市場参入は後発だが、18年3月に日本法人を設立して以来、事業規模は急拡大し、日本市場は世界全体で2位の売り上げを記録しているという。「これほどの成長率は過去に類を見ない」とシュクラCEOは評価し、今後のロードマップとしても日本へ重点的に投資する意向を示している。

 具体的には年内に日本法人の社員数を200人まで増やし、今後3年間で1000人規模へと拡充する。さらに新たな開発拠点を東京に設置し、エンジニアを追加。日本特有のアプリインテグレーションに対応するとともに日本語対応のAIを開発する狙いだ。

 イベントでは、国内ユーザーから強いニーズがあった手書き文字認識に対応するため、手書きOCRソリューションを持つCogent Labsと技術提携したと発表。オートメーション・エニウェアのIQ Botに組み込んだサービスを6月13日から提供している。

「Teams」から固定電話番号の
音声通話が利用できる新サービス

 6月17日には日本マイクロソフトとソフトバンクが共同で会見を開き、情報端末から固定電話番号で発着信ができる音声通話サービスを始めると発表した。8月1日から提供し、100万契約の早期実現を目指す。

 サービス名は「UniTalk(ユニトーク)」。マイクロソフトのクラウドサービス「Office 365」を構成するサービスの一つであるコラボレーションツール「Microsoft Teams」向けのサービスで、PCやタブレット端末、スマートフォンなどから「0ABJ番号」と呼ばれる、「03」「06」などの市外局番から始まる固定電話番号で音声通話ができる。

 クラウドサービスのため、オフィスへの固定電話機やPBX(構内交換機)の設置や回線の引き込みなど導入時の工事が不要で、導入後の保守運用コストも軽減できる。既設のPBXを活用したいという需要にも対応するため、PBXとの連携についても検証を進めているという。

 国内向けの音声通話を、1番号当たり月額800円(税抜)の定額料金で利用できる。別途ユニバーサル料金と初期費用1000円(税抜)がかかるほか、Office 365のライセンス契約が必要になる。
 
日本マイクロソフトの平野拓也社長(左)とソフトバンクの今井康之副社長

 Teams向けの音声通話サービスの提供は国内で初めて。提供に向けて2社は戦略的パートナーシップを結び、Teamsのクラウド基盤とソフトバンクの電話網を直接接続している。日本マイクロソフトの平野拓也社長は、「このレベルのインテグレーションは、本社同士の強いコミットメントと技術的な投資を含めて行うものであり、他のパートナーシップでできるものではない」と述べた。

 サービス展開に当たっては、日本マイクロソフトとソフトバンクが共同で営業活動を行う。ソフトバンクの今井康之副社長は販売目標として「100万契約」を掲げ、「早期に実現したい」と力を込める。「Teamsを使っている日本のユーザーは非常に多く、ソフトバンクの販売網だけでなく、マイクロソフトのリセールパートナーも含めて一緒にUniTalkを展開していきたい。かなりの販売網となるため、(目標達成は)早くできると確信している」と話す。

 今後、国際電話やナンバーポータビリティー(MNP)のサービスも追加予定。「普通のオフィス用の電話としてお使いいただける体制は年内には整う」(ソフトバンクの佐藤貞弘常務)見込みだ。さらに、マイクロソフトのAIアシスタント「Cortana(コルタナ)」を活用した音声通話のテキスト変換などにも取り組む意向だとしている。