富士通とNECは10月29日、2020年3月期第2四半期決算を発表した。国内の法人向けIT市場をけん引してきた総合ITベンダーである両社は近年、構造改革を継続して行い、適正な利益を出しながら成長していくことができる体質への転換を図ってきた。業績の停滞が底を打ったようにも見えた先期(19年3月期)の通期決算から半年。成長軌道への回帰の道筋は見えたのか。(日高彰、本多和幸)

富士通
減収減益も本業は改善
通期見通しを上方修正

 富士通の上期決算は売上高が前年同期比0.3%減の1兆8287億円、営業利益が同25.4%減の710億円の減収減益だったが、一時的な要因を除く本業ベースでは大きな改善となり、通期の売り上げおよび利益の見通しを上方修正した。

 減収の主因は、半導体販売会社の富士通エレクトロニクス、電子部品製造会社の富士通コンポーネントが連結対象外になったことと、為替が円高で推移したことによる海外収益の下振れだった。利益の減少は、企業年金制度の変更に伴い、前年第1四半期に919億円の営業益を計上していたことの反動だ。これらの特殊事項や為替の影響を除いた本業の収支をみると、売上高は前年同期比6.9%増、営業損益は66億円の赤字から740億円の黒字への改善に相当するという。

 本業の業績改善に寄与したのは、企業や自治体による活発なIT投資だ。前年同期と比べ全ての業種で受注が増加しており、特に金融は18%増、流通は16%増と力強く推移した。磯部武司常務CFOは「変革に向けた投資意欲が強い。ハードウェアだけを更新する商談はほとんどなく、ITモダナイズと業務の変革を合わせてやっている」と述べ、デジタルトランスフォーメーション(DX)を見据えた基幹系システムの再構築や、働き方改革で大口の案件が動いたと説明した。また、Windows 7のサポート終了に伴うPCの買い替え需要が想定よりも早く立ち上がったことに加え、メモリなどの主要部材の価格が低下したことでハードウェア製品の採算性が改善。800億円あまりの本業増益額のうち、約200億円がPCの伸長によるものだという。

 通期の業績予想は、売上高を3兆8000億円(期初予想からの増額は500億円)、営業利益を1600億円(同300億円)に修正した。システム構築・運用を中心としたテクノロジーソリューション事業の営業利益率は8.1%を見込み、1年前に経営方針として掲げた22年度までに同事業で営業利益率10%という目標がいよいよ射程圏内となる。ただ、足元の好業績は、IT市場全体の好況と、従来抱えていた不採算案件の解消によってもたらされた部分が大きい。来年度以降の成長を盤石なものにするためには、1月に設立するDX新会社をはじめとした新たな領域でも結果を出していく必要がある。
 

NEC
150億円の構造改革効果
ハードビジネスが好調

 NECの20年3月期第2四半期決算は増収増益となった。売上高は前年同期比8.4%増の1兆4490億円、営業利益は約240%増の469億円で、新野隆社長は「全事業セグメントで増収を達成したほか、調整後の営業利益(M&Aにより認識した無形固定資産の償却費と会社取得のための支出を営業利益から差し引いた額)は全セグメントで増益になった」と手応えを語ったほか、近年の構造改革の成果も出ていると強調。上期決算では「合計で150億円の構造改革効果が出た」(新野社長)とした。営業利益率も、前年同期の1.0%から3.2%まで伸びた。
 
新野 隆
社長

 特に業績をけん引したのが、公共団体や社会基盤向けビジネス市場に情報システムと関連サービスを提供するパブリック事業と、各種ハードウェア、ソフトウェアの提供を行うシステムプラットフォーム事業だという。パブリックは、公共、医療、航空宇宙・防衛向けが好調で、売上高こそ前年同期比4.4%増の4005億円にとどまったが、調整後営業利益はほぼ倍増の263億円となった。一方、システムプラットフォームは、20年1月に控えるWindows 7の更新需要により、企業向けのPC販売を中心にハードウェアビジネスが伸長したことで、売上高が前年同期比16.7%増の2637億円、調整後営業利益はほぼ4倍となる208億円という結果になった。両セグメントとも、同社が直近で重視する利益改善に貢献した形だ。

 このほか、ネットワークサービス事業では「5Gを見据えた固定ネットワークの案件が伸び、関連のITサービスも増加した。楽天モバイル向けのビジネスも上期の増収に寄与している」(新野社長)として売上高が11.0%増となった。また、パブリックセーフティやデジタルガバメント、サービスプロバイダー向けソフトウェア・サービス、ネットワークインフラなどをカバーするグローバル事業は、特に売上高が前年同期比23.3%増と大きく伸長し、赤字だった調整後営業損益も黒字に転換した。

 19年をターンアラウンドの年と位置付ける同社。21年3月期を最終年度とする中期経営計画で掲げた売上高3兆円、営業利益率5%などの目標達成に向け、新野社長は必要なステップをしっかり踏んでいる手応えを感じているという。一方で、足元の好調さを支えるPC販売の需要などは特需によるものであり、来期は反動減が予想される。新野社長は「今上期のPC販売の増益効果は30億~40億円程度で、反動減の影響はそれほど大きくないと考えている」と話すが、他のセグメントにしても、NECが自ら市場を創出して成長していけるような事業ではなく、脆さをはらむ。強みを持つ生体認証を活用した社会課題解決への貢献や5Gを活用した各産業のDX推進案件など、新たな成長の種をしっかり経営の柱と言える規模に育てられるかが大きな課題となる。