ソフトバンク(宮内謙社長)は3月5日、5G(第5世代移動通信システム)の商用サービスの提供を3月27日から開始すると発表した。現行サービスに月額1000円の追加料金を支払うことで、下り最大2Gbps(規格上の理論値)の高速通信が利用できる。8月末までに加入した場合、1000円の追加料金を2年間無料とするキャンペーンも実施する。楽天モバイルを含む国内携帯電話キャリア4社の中で、5Gサービスの開始日と料金を正式に発表したのは同社が初めて。
利用には5G対応の通信端末が必要。シャープ、韓国LG、中国ZTEおよびOPPO製の5G対応スマートフォンが順次発売される。5G向けコンテンツとして、コンサートやスポーツの模様を多視点で再生できる映像や、クラウド側でグラフィック描画を行う米エヌビディアのゲームプラットフォーム「GeForce NOW」などが提供される。
当面サービスエリアは狭く、ソフトバンクが公開している地図によると、都内でも5Gが使えるのは、4月末時点で東京駅を中心に北は秋葉原、南は浜松町周辺までの帯状の地域に限られる。新宿や渋谷といった人が集中するエリアも、5G対応は「今年夏以降」とされている。そのほか、名古屋、大阪、広島、福岡などの一部でこの春から5Gがスタートする。
4月末時点で5Gが利用できるのは紫色のエリアに限られる
5G用の周波数帯としては、国内では3.7GHz帯、4.5GHz帯、28GHz帯が割り当てられている。これらは4Gまでと比べて高い周波数の帯域だが、電波は周波数が高くなるほど物によって遮られやすくなり、届きにくくなる。ソフトバンクは、これらの中では4Gの帯域に近い3.7GHz帯でまずサービスを開始するが、それでも5Gが使えるエリアはごく限られた範囲となっており、サービスエリア構築には相当の時間がかかると予想される。
今後、4G用の既存周波数の一部に5Gの電波を共存させる、「DSS(ダイナミックスペクトラムシェアリング)」と呼ばれる技術が国内でも認可される見通し。DSSが導入されれば、5Gエリアの拡大にも弾みがつくと期待される。ただし、4G用の周波数は5G用に比べて帯域が狭く、5Gによるスピードアップの効果は限定的なものとなる。
5G正式発表の先陣を切ったソフトバンク
(中央が榛葉淳副社長)
近年、多くの通信事業者やITベンダーが、世界を変える技術として5Gを喧伝してきたが、いつでもどこでも超高速通信が利用できる環境が整備されるまでには数年以上の時間が必要とみられる。今回ソフトバンクは、5Gの料金プランを4Gからほぼ据え置いたほか、期待されていた法人向けソリューションには触れずコンシューマー向けの発表を先行させた。正式な商用サービスが開始されるとはいえ、5Gについてはしばらくの間、実質的にはトライアル期間に相当する状態が続くと考えられる。(日高 彰)