3月25日から27日にかけて、国内携帯電話大手3社が相次いで5G（第5世代移動通信システム）の商用サービスを開始した。各社とも当面の利用可能エリアは限られた地点にとどまるが、法人向けソリューションの展開を加速する施策は具体化しつつある。

　5Gのスタート時点で、法人向けの展開に最も積極的なのがNTTドコモだ。5Gの大きな特徴である「低遅延」を生かすため、「ドコモオープンイノベーションクラウド」と呼ぶクラウド基盤を同社のネットワーク内に構築。通信端末とクラウド基盤が最短距離で接続されるので、遅延が許されない機械制御やVR／ARコンテンツ配信用の基盤として活用できる。また、5Gエリア外でも催し物や建設工事で一時的に5Gを使いたいというケースを想定し、台車に搭載した可搬型基地局を届ける「キャリー5G」サービスを開始。企業や自治体向けにローカル5Gの構築支援サービスも行う。いずれもトライアルではなく、25日から正式な受付を開始している。

　KDDIも、法人を対象としたエリア展開を本格化する。17日には、JFEスチールが千葉で運営する製鉄所を5Gエリア化し、映像伝送やセンサーの接続に活用することを発表。KDDIの高橋誠社長は、「お客様ごとのユースケースに応じて、法人営業の一環として対応していく」と述べ、従来のように人口密度や生活動線に合わせたエリア展開だけでなく、5Gに適したソリューションを展開できる顧客の周辺には、個別に5Gのサービスエリアを構築していく考えを示した。（日高 彰）