SAPジャパンは5月26日、組織の人材マネジメントを強化する新しいソリューション「HXM」(Human eXperience Management)の提供を開始したと発表した。新型コロナ禍により、多くの人の仕事観が変化しつつあるとともに、企業の成長も従業員の多様な働き方を許容しつつ多様な人材の活躍の場を用意することと強い相関関係を持つようになっている。同社は「SAP SuccessFactors」と「Qualtrics EmployeeXM」をコアソリューションとし、パートナー9社のソリューションを組み合わせることで、従業員の多様な働き方に対応し、企業の継続的な成長を支援する体制を打ち出した。(齋藤秀平)
SAPジャパン 稲垣利明 本部長
SAPジャパンのバイスプレジデントで、人事・人財ソリューション事業本部の稲垣利明・本部長は、生産年齢人口の減少のほか、女性や60歳以上の雇用者数の増加、新型コロナウイルスの感染拡大によるリモートワークの導入などの社会的背景を挙げ、「働く人が減少し、働き方はどんどん多様になっている。働くことに対するモチベーションは、以前のように画一的ではなくなっている」と指摘した。
その上で「全ての働く人が活躍できる環境をつくることが、日本経済の発展のカギを握る」と多様な働き方への対応を進めるべきとの考えを示し、「HXMは、働く人を中心に考えて、全ての働く人が活躍することをサポートできるシステム基盤だ」と説明。さらに「企業の最重要資源である人について、取り組むべき課題はかつてないほど複雑になっており、今までの考えでは限界を迎えている」と変革の必要性も訴えた。
HXMでは、ドキュサイン・ジャパンとオープンテキスト、Kronos Incorporated、ServiceNow Japan、WalkMe、イノービア、ZENKIGEN、Slack Japan、ヴァル研究所の人材関連ソリューションが連携する。従業員のスキル管理やチームマネジメントだけでなく、求人から入社までの人事プロセスにも適用し、業務の改善につなげられる点が特徴だ。稲垣本部長は、パートナーとの連携によって「エンドユーザーの利便性の向上につながる」と強調。パートナーエコシステムを重要視し、市場のニーズに応じて随時拡大していく方針だ。
クアルトリクス 熊代 悟 カントリーマネージャー
人材マネジメントの領域はこれまで、1980年代からのHRM、2000年代からのHCMと変化してきた。同社が新たにHXMを打ち出した理由には、社会や働き方が変わってきていることに加え、雇用者と被雇用者のパワーバランスに変化が出ていることもある。2019年にSAP傘下に入り、HXMのコアソリューションであるQualtrics EmployeeXMを提供するクアルトリクスの熊代悟・カントリーマネージャーは「今までは雇う側にパワーがあったが、ここ5年くらいは従業員側の方がパワーがある」と分析。「企業の永続性を担保するためには、従業員をしっかりケアしないといけない」と述べ、従業員の声をしっかりと把握し、改善しつづけることが重要との考えを示した。