野村総合研究所(NRI)は、コロナ・ショックによってユーザーのIT投資動向に変化が起き、「非対面」「遠隔」「自動化」などの分野を中心に投資の優先度が上がったと分析している。営業パーソンがオンラインで商談ができるツールや、医師がオンラインで患者を診察する仕組み、チャットボットによるコンタクトセンター業務の一部自動化、自動配送車といった分野のITビジネスの活発化が期待されると見ている。

城田真琴 上席研究員

 NRIは最新の技術動向をまとめた「ITロードマップ」を毎年発表しており、3月の2020年版では今注目すべき技術として、ブロックチェーンや第5世代移動通信などと並んで脳とコンピュータを接続する新しいインターフェース技術を挙げていた。しかし、コロナ・ショックを経て「注目される技術が大きく変わった」(城田真琴・上席研究員/IT基盤技術戦略室長)として、6月に最新の技術トレンドを改めて発表した。

 年商1000億円以上の国内大手ユーザー企業のCIO(最高情報責任者)へのNRI独自のアンケートなどを基に分析した結果、コロナ・ショックに直面して在宅勤務に伴うリモートワークやペーパーレスの技術分野に注目が集まり、その次に非対面営業の強化、販売チャネルのデジタル化、コールセンターの自動化・高度化の優先度が高まった。当初は緊急避難的にリモートワークへの移行を最優先に考え、次の段階として、営業活動を立て直すためには非対面による営業チャネルの強化が欠かせないと判断した企業が多いことがうかがえる。

 ビデオ会議「Zoom」の昨年末時点のユーザー数は約1000万人だったが、今年4月にはおよそ3億人に急増したことが象徴するように、リモートワークや非対面営業に不可欠なツール需要が拡大。ただ、現時点では「営業活動の商慣習上で欠かせない名刺交換すらままならない」(同)と、技術的な発展の余地が大きいと同社は指摘する。リモートでのコミュニケーションの中で契約書や申込書も記入し、その場で受注確定に持って行ける仕組みも求められている。受注した商品を自動配送車やドローンで客先に届けるニーズも高まるとしている。

 「遠隔」の分野では、感染拡大防止の観点からオンライン診療が脚光を浴びている。これもただ遠隔で診察するだけでなく、診察料のオンライン決済、処方箋を薬局に送り医薬品を患者のもとに届ける一連の業務フローをカバーする技術や仕組みが欠かせない。「自動化」の文脈では、例えば、いわゆる「三密」が問題になりやすいコンタクトセンターでは、顧客を文字チャットに誘導することで場所を問わず対応しやすくなる。また、チャットボットを活用して品質の高い自動応答を実現することも可能であり、人手不足や人件費の削減にもつながる。

 リモートワークを阻むアナログ業務のデジタル化、オンライン診療であれば規制の見直し、業務の自動化では、ロボット活用と雇用のバランスの問題など、技術と制度の両面からコロナ後の技術トレンドを考える必要がありそうだ。(安藤章司)